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別ブランド展開と相乗効果。『なんぼや』に続く第二のブランドを打ち出した狙い〜戦力外Jリーガー社長の道のり32

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業界初の予約制を取り入れた新ブランド店舗

バリュエンスにおけるユニークな取り組みの端緒となったのは2013年に始動した自前のBtoBオークション「東京スターオークション(現 STAR BUYERS AUCTION)」でした。

沿革を振り返ると、その翌年の12月には、業界で初めて予約制を導入した買取専門店 『BRAND CONCIER(ブランド コンシェル)』の1号店が銀座に開店しています。

2024年現在、なんぼやグループの買取店舗は、ブランド買取専門店である『なんぼや』『ALLU』、骨董品・美術品の買取専門店『古美術八光堂』、そして『ブランド コンシェル』があります。

『ブランド コンシェル』は、最初にできた別ブランドと言っていい店舗です。

『なんぼや』とは目線をズラした別ブランドを

出店当初の『ブランド コンシェル』のコアバリューは、業界で初めてとなる“完全予約制”。パソコンやスマートフォンから最短2分で簡単に予約が可能な「プライベートサロン」として高級感を打ち出しました。

現在は全国138店舗のどこでも同一の査定基準で買取を行っていますが、それぞれの成り立ちやコンセプトを軸に、『なんぼや』だけでは出会えないお客さまとのタッチポイントとして各ブランドを展開しています。

現在のブランド コンシェルは「予約“も”できるブランド買取店」として、差別化を図っていますが、ブランド コンシェル初出店時のプレスリリースにはこんな要素をキャッチポイントとして挙げていました。

  • 完全予約制!PC・スマホから“最短2分”で来店希望日時が予約可能

  • 一流ホテル並みの接客!厳格な研修をクリアした社員のみがコンシェルジュとして接客

  • 本物を見極める確かな鑑定力で“スピード買取”を徹底

  • 女性お一人でも入りやすい“おもてなし空間”

  • カスタマーサポートシステムも充実

業界になかった「予約してから行く」という概念

「お金がないときに駆け込む」質屋のイメージが色濃く残っているからなのか、リユース業界にはそもそも「予約をして訪れる」という概念がありませんでした。これは今もあまり変わっておらず、店舗側にも顧客側にも「買い取りのための来店時間をあらかじめ決めて予約する」という前提がまずありません。

ちょっと人気のあるレストランに行くにも、美容院に行くにも、エステに行くにも日時を決めて予約してから行くのが当たり前なのに、なぜ予約する習慣がないんだろう?

ふらりと入れる気やすさは大切ですが、買い取りで待たされたりしたらその後の予定が狂うという人はいるはずです。

これまで存在しなかった「予約によって得られるメリット」

そこで、よりラグジュアリーな雰囲気をまとったサロン的な店舗として「予約システム」を導入した『ブランド コンシェル』を展開することにしたのです。

現在では予約なしでの来店にも対応していますが、当時は完全予約制を前面に押し出していました。

予約制であれば、お客さまをお待たせすることなく、一つの商談にかける時間もしっかり確保できます。予定が決まっていることで、お客さまだけでなくお迎えするスタッフもしっかり準備ができた状態で接遇が行える点も私たちが目指す上質なコミュニケーション、サービスに近づくためのプロセスに必要でした。

当時『なんぼや』でも鑑定士を「コンシェルジュ」として、きめ細かい接遇を打ち出していましたが(現在の呼称はバリューデザイナー)、ブランド コンシェルでは、このコンシェルジュ、執事感をさらに強めた接客ができればと考えたのです。

「なんぼや」の看板で失っている顧客もいるかもしれない

もう一つ念頭にあったのが、東京進出時にもほんの少しですが頭をかすめた「『なんぼや』関西丸出し説(笑)」の懸念です。

親しみやすさ、キャッチーさにおいては、われながらいい名前だと思う『なんぼや』ですが、そのコテコテ感、関西色で敬遠されている層が一定数いるかもしれない懸念は常にありました。

名前から連想されるフレンドリーでカジュアルな雰囲気は、顧客とのコミュニケーションにおいては大きなアドバンテージですが、コンシェルジュ付きの高級ホテル、ラグジュアリーなサロンのようなイメージとは少し距離があります。

もちろん現在の『なんぼや』は、その名の通りの親しみやすさと、取り扱う商品に相応しい落ち着いた雰囲気を醸し出していると自負していますが、2014年当時は、「ブランド コンシェル」という新たなブランドを横展開することで新たなお客さまとの接点ができるのでは? という可能性を広げた時期でもありました。

つづく

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