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「Less is more(少ない方が豊か)」な時代へ。リユース業界から挑む大量生産消費からの脱却

近年、世界的に注目されている考え方に「Less is More(少ない方が豊かである)」というものがあります。20世紀のドイツの建築家、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉です。ミース・ファン・デル・ローエは、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトと共に、近代建築の三大巨匠と呼ばれている人物。ミッドセンチュリー家具として有名なバルセロナチェアのデザインをしたことでも有名です。

モダニズム建築の巨匠が残した金言

シンプルで機能的、モダンなデザインは、後世のプロダクトデザインにも大きな影響を与えたといわれているのですが、このミース・ファン・デル・ローエの名言が21世紀に新たな解釈で再注目されています。

大量に生産し、大量に消費する。より利便性の高い、しかも安価なものを生産し、それを消費していく世界。たとえば昨日まで使っていた製品が壊れたとしましょう。これまでの社会では、それを修理するより買い換えた方がむしろ安価になる値付けがされていました。私たちも、使い捨てにしなくていいものを無意識のうちに使い捨て、必要なものより多くのものを消費してきたのです。

近年では、気候変動や環境悪化の観点から、サステイナブルという考え方が定着し、そのなかで、「Less is More」という考え方が改めて見直されています。

最近特に感じることですが、世界は今、ゆっくりですが確実に「私利私欲を埋める物質的な豊かさから、体験やつながりを感じられる心の豊かさ」を求める時代に移り変わろうとしています。

ある意味では大量消費社会のブースターになっていたリユース業界

前回、社員総会のお話をした際に、
「不要なものをお金と交換するというリユース業界の仕組みは、表面的に見れば経済的価値偏重を加速させ、大量消費社会の片棒を担いでいると言われてもおかしくないビジネスモデルだ」

と言いました。

従来のリユース業界のあり方は、大量生産大量消費が前提で、新しいブランド品を買うために、今持っているブランド品を手放すという使われ方をされることも珍しくはありませんでした。

リユース業界からなぜサステイナブル、サーキュラーエコノミーのメッセージを強く打ち出すのか?

その答えが、「Less is More」に集約されているのではないかと考えています。

クローゼットに並べるために服を買う必要はないし、ガレージに飾るためだけに車を買う必要もない。身に付けるものも、身の回りにあるものも、必要最低限でいいという考え方は、以前なら見向きもされなかったものです。

しかし、現在ではこうしたシンプルな生活、ミニマルなライフスタイルを受け入れる人が相当数いて、この傾向はZ世代を中心に徐々に主流になっていくという時代の流れがあります。

顧客のコレクションを増やすのではなく、必要なものを見極めるお手伝いを

こうした視点から見ると、ブランド買取専門店『なんぼや』は、本当に必要なものを見極め、必要なものだけを手元に残すお手伝いができます。

従来の考え方では、私たちは顧客から品物を買い取り、顧客は経済的リターンを得るというだけの関係性ですが、これからは、経済的リターンだけでなく、生き方や生活、身の回りのことに影響を与えるような関係性が構築されていく可能性があります。

ヴィンテージブランドショップ『ALLU』では、すでにご紹介しているように、取扱製品の環境フットプリントの削減貢献量の測定や、リサイクル素材を用いた梱包材の使用などの取り組みを始めています。

12月24日には、すでに行っていた時計の修理に加え、バックやジュエリーの修理も受け付ける新サービス「ALLU REPAIR」を立ち上げ、循環型社会の実現を加速させていきます。

世間のリユース業界のイメージからいえば、自己矛盾のようなことを言うかもしれませんが、お客さまのコレクションを増やすのではなく、お客さまに本当に必要なものを見極めていただく機会を創出する。消費がさらに新たな消費を生む不幸せなスパイラルを助長するのではなく、消費を循環の環の中に置く

こうした試みが、これからの時代に私たちが提供できる価値であり、生き残り、成長していくための唯一の道ではないかと思っています。

これからのリユース事業の本質をつかむために

そのための具体的な事業展開は、まだこのnoteではお話ししていないもの、すでに動き出しているけど発表できないもの、構想段階のものも含めてたくさんありますが、まずはバリュエンスホールディングスとそこで働くメンバ一人ひとりが、自分たちの事業の本質をしっかり理解し、それを自分たちの展開しているブランド、ビジネス、サービスに落とし込んでいくことが重要です。

今年、パーパスを一新したり、サステイナブル、サーキュラーエコノミーについてのメッセージをしつこく? 打ち出しているのは、こうした思いからです。

ミース・ファン・デル・ローエは、自らの建築、デザインに対する哲学としてもう一つ有名な言葉を残しています。

「神は細部に宿る」

こちらも建築、デザインをあらわす言葉としてだけでなく、さまざまな場面での警句として使われていますが、こちらにも今この時代だからこそ改めてかみしめたい意味があるような気がしています。


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