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#13 「耳」はグローバルテック企業の新たな戦場

アテンションエコノミーでは、人々の注意、アテンション、が希少価値として扱われます。今や消費しきれないほど色々な情報やコンテンツが豊富にあるので、人々の注意を惹くことができるコンテンツだけが生き残ります。最近では、YouTube、TikTok、Instagram、Facebook、Twitter、Eメールのニュースレターなどの目の注意を惹くビジュアルコンテンツが溢れていて、ユーザーの注意を惹くことができる強いトリガーを作ることが段々と難しくなっています。一方で、オーディオコンテンツは、アテンションエコノミーの中で急速に台頭している分野です。今回はグローバルテック企業がどのようにしてユーザーの聴覚的な注意を、すなわちAuditory Attentionを獲得しようとしているかについて私の考えを話してみたいと思います。

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オーディオコンテンツには、いくつかの異なる形態があります。まず、音楽は最もわかりやすいものですね。また、ポッドキャストやオーディオブックもあります。ソーシャルオーディオは、クラブハウスが世界的に人気を博した新しい形態ですね。多くのテック企業が、一つの形態、または複数の形態のオーディオコンテンツを提供しています。

最近マイクロソフトが所有するLinkedInは、ソーシャルオーディオのプロダクトをリリースすると発表しました。このプロダクトは、単なるソーシャルプロフィールではなく、ユーザーのプロフェショナルのプロフィールと結びついているので、クラブハウスとは差別化されると主張しています。また、先週、マイクロソフトがDiscordという会社を1兆円以上の値段で買収する可能性があるとのニュースがありました。DiscordはSlackのようなプラットフォームですが、オーディオチャット機能はDiscordが人気を得た理由の一つです。

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Twitterは、今年Clubhouseが人気になる前からSpacesというソーシャルオーディオプロダクトを昨年から開発していて、今はそのベータ版が公開されています。TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏の別会社であるSquareは最近、高品質の音楽、ポッドキャスト、ビデオのストリーミングサービスを提供するノルウェーのTidalという会社を買収しました。

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また、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、Clubhouseに何度か出演し、ソーシャルオーディオへの関心を示したことがあります。驚くこともなく、フェイスブックもソーシャル・オーディオのプロダクトを開発しているようです。

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2019年、Spotifyがオリジナルのポッドキャストコンテンツを提供するGimlet MediaやAnchorを買収した際、CEOのDaniel Ek氏は同社の目標を「世界ナンバーワンのオーディオプラットフォームになること」だと言及しました。先週、同社はスポーツ向けのClubhouseのようなソーシャルオーディオプロダクトであるLocker Roomというスタートアップを買収しました。スポーツに関しては、Locker Roomの方がClubhouseよりも人気があります。ユーザーは自分が応援しているチームを選び、そのチームに関連するオーディオルームに参加することができます。また、ホストは会話を記録し、必要に応じてダウンロードすることができるのもClubhouseとは違います。

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Spotifyは、強力なレコメンデーション・アルゴリズムで知られていて、それがSpotifyの力強い成長の原動力の一つとなっています。要するにユーザーが好きそうな音楽をレコメンドできる能力です。このアルゴリズムをポッドキャストのレコメンドにも応用していて、その技術をさらにソーシャルオーディオにも応用できると思います。そうすると、音楽であろうが、ポッドキャストであろうが、ソーシャルオーディオであろうが、ユーザーが好みそうなオーディオコンテンツをレコメンドすることで、ユーザーの興味を惹く強力なトリガーを作ることができます。また、LinkedInやTwitter、Facebookなどのソーシャルメディアも、既存のユーザーのソーシャルネットワークを活用し、彼らがすでに持っているビジュアルコンテンツも組み合わせることで、違う形の強いトリガーを作ることができるのではないかと思います。

Clubhouseはどうでしょう?Clubhouseは、ビジュアルコンテンツもなければ、LinkedInやTwitter、Facebookのようなソーシャルネットワークもありません。また、Spotifyのような強力なレコメンデーション・アルゴリズムもありません。Clubhouseはポッドキャストのようなサービスを始めるという噂もあります。いずれにしても、Clubhouseがユーザーを自社のプラットフォームに留めておくための独自の仕掛けトリガーをどのように作っていくのかは非常に興味深いところですね。

アップルは、すでにApple Music、ポッドキャスト、オーディオブックを提供しています。最近では、著名ベンチャーキャピタルファンドであるアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)やGoogleのベンチャー投資部隊のGVとともに、アーティストたちが音楽レーベルを介さずに音楽を配信できるプラットフォームであるUnitedMastersに出資しました。アップルがスタートアップに投資するのは珍しいことで、今回の動きはその意図を含めて今後も注目していきたいと思います。アマゾンも、アマゾン・ミュージック、ポッドキャスト、オーディオブックなどを提供していますね。両社ともソーシャルオーディオだけは持っていません。彼らがオーディオという新しいブルーオーシャンでの影響力をさらに高めるために、ソーシャルオディオ領域まで裾野を広げていくのか、とても楽しみですね。

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References

1. LinkedIn confirms it’s working on a Clubhouse rival, too - https://techcrunch.com/2021/03/30/linkedin-confirms-its-working-on-a-clubhouse-rival-too/

2. Twitter to introduce Clubhouse-like voice chat rooms in testing later this year - https://www.theverge.com/2020/11/17/21570150/twitter-spaces-clubhouse-voice-rooms-testing

3. Facebook’s Clubhouse rival looks a lot like Clubhouse right now - https://techcrunch.com/2021/03/23/facebooks-clubhouse-rival-looks-a-lot-like-clubhouse-right-now/

4. THE PATH AHEAD Audio-First - https://newsroom.spotify.com/2019-02-06/audio-first/

5. Spotify is launching its own Clubhouse competitor - https://www.theverge.com/2021/3/30/22356993/spotify-locker-room-clubhouse-launch-acquisition

6. Locker Room wants to reinvent how fans talk sports - https://www.axios.com/locker-room-app-sports-discussion-betty-labs-6e8a50c5-112d-41e5-9970-4b70ecb62aca.html

7. Clubhouse Beta Vs. Twitter Spaces Beta: Audio Chat App & Feature Compared - https://screenrant.com/clubhouse-beta-vs-twitter-spaces-beta-audio-chat-comparison/

8. Spotify Acquires Locker Room, Anchor Versus Clubhouse, Spotify’s Threat - https://stratechery.com/2021/spotify-acquires-locker-room-anchor-versus-clubhouse-spotifys-threat/

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