【NEXT-GEN】高円寺古着屋最年少。本物の風格。DIRT Vintage Clothing
30代以下の「モノ好き」たちのルーツやビジョンに迫る。
古着好きな人間であれば、誰もが通う高円寺。
「DIRT Vintage Clothing」はそんな高円寺の北口に店を構える。
コンパクトな店内に濃縮されたアメリカの空気が漂っている。
オーナーは22歳の齋藤綾馬氏。
飛ぶ鳥を落とす勢いの綾馬氏。今回はそんな綾馬氏の生い立ちから今後のビジョン、DIRT Vintage Clothingの今に迫る。
-まず、初めに綾馬(りょうま)さんの幼少期から今までの経歴や古着との出会いを教えていただけますか。
もともと僕は栃木県足利市で生まれて、小さい頃にサッカーを始めたんです。それからプロ選手を目指して、高校では長野県で入寮して暮らし始めました。
古着は中学校くらいから興味があったんですが、本格的にヴィンテージに出会ったのは高校生くらいですかね。
高校三年間でプロに上がれなくて、もともとアメリカの古着が好きでアメリカのカルチャーにも興味があったのと、海外でプロを目指すために、アメリカの大学に留学しました。
西部のカルチャーが好きでジョージア州に留学したんですが、僕は80〜90年代の映画で見たような生活はなく、アメリカには面白い人も多いと思っていましたが、向こうの大学生は日本とほぼ変わらない感じだったんです。僕の理想と違ったアメリカが待っていました。
- ギャップがあったということですね。
はい。もともと一人の時間が好きで、一人で映画を見たり、本を読んだりすることが多いのですが、それを共有できる人がいると思ったけど、いなかった。
それでもともと古着屋をやるつもりはなかったんですが、理想のアメリカが現地にないんだったら、自分で僕が理想とするアメリカを日本で作っちゃおう。そう思ったんです。
日本に帰ってきてからは下北沢のSPIKE VINTAGEで少し働かせてもらって、7-8ヶ月ほどで独立が決まっちゃって辞めました。
- 「決まっちゃって」というのはどういうことですか。
もともとは五年くらい時間をかけて地道にやっていこうと思っていましたが、案外とんとん拍子に話が進んで動き始めたらすぐ出来ちゃった感じです。Leelooさん(現在は渋谷に移転、高円寺に新店舗がOPEN )が以前に店を構えられていた場所が、僕が古着屋を開くタイミングで使わせてもらえることになったんです。そちらの場所を使っている間に現在の店舗(庚申通り商店街)に場所が見つかって、こちらをOPENさせました。
- 留学されたきっかけはなんだったんでしょうか。
もともと通っていた古着屋の方にアメリカのカルチャーが好きだと話したら、「なんでアメリカのカルチャー好きなのに英語喋れないの?」と言われたんです。英語が日本語に訳されているのは全体の1−2%ほど。その程度の情報では、信念に辿り着けないってことです。そこから英語を勉強し始めました。
何か目標が必要だったんで、アメリカの四年制大学への入学を決意しました。
母国語でも大学に入れない人がいる中、アメリカ大学へ入学できれば一定のレベルに達すると思ったんです。
- サッカーもしながらですよね。
はい。当時は週六で練習してました。プロになった仲間もたくさんいます。
当時から僕は自分の世界があるタイプで、仲間のみんなもそういった見方をしてくれていたので、僕がアメリカの大学を目指して勉強し始めた時も驚く仲間はいなかったですね。「齋藤ならそうだよな」と言った感じで(笑)
- プロになった当時の友人に思うことはありますか。
当時から薄々感じていましたが、ある程度の高いレベルになるとリフティングなど基本的な技術レベルでは大差がないんです。ただ体の構造や考え方の差が大きいと思います。最終的に身体能力の差が出る。それで、アメリカでもう一度チャレンジをしました。
アメリカでも技術面は高い方でしたが、やはり身体能力の差がありました。それでどんどんサッカーに対する情熱が失われていったんです。その上、理想のアメリカはないこともわかった。それで自分で作るという考えに至ったんです。
- 理想のアメリカを作る上で参考にしたカルチャーなどはありますか。
中三くらいの頃に見たタランティーノ氏が脚本を手がけた「True Romance」(1993)ですね。こんな映画を作っても良いんだって感じました。あまりストーリーに合理性などはないけど、何か惹きつけられる。面白いなって。
両親が映画好きで、週末に家族でレンタルショップに行って借りてきた映画をみんなで見る習慣があったんです。僕の両親は少し変わっていて、家族みんなでも悪趣味系の映画を見ちゃうような感じでした(笑)
- すごいご家族ですね(笑)
変わってますよね(笑)
それもあって、映画見るんだったら洋画っていうのが根付いて、映画を好きになりましたね。当時って一番古着が流行ってたじゃないですか。みんな着てましたし。それで古着着ようってなって松本の古着屋に通い始めました。
- DIRT Vintage Clothingって理想のアメリカがイメージだと思うんですが、具体的にコンセプトってあるんですか。
あくまでも古着屋なので、古着に興味を持ち始めた人から、ガッツリのめり込んでいる人まで全員が通いやすい店を心掛けています。
そのために買いやすいレギュラーから100万円くらいのヴィンテージまで幅広く並べています。みんなに楽しんでもらえるような空間にしたいと思っています。それがコンセプトですかね。
-DIRTという店名の由来ってあるんですか。
DIRTはAlice In Chainsのアルバムが由来です。
もともとAlice In Chainsが好きだったのでそこから何かとろう思っていたんです。特に深い意味はないですね。
後付けですが、DIRTには補装されていない道という意味もあるので、全く舗装されていない道を僕が今から歩む的な意味もあります。
- お店の今後のビジョンはありますか。
お店としては、やはり何も古着を知らずにきてくれた人が数年後に501XXのようなヴィンテージを買っていくような店が目標ですね。
みんなに古着の良さを知ってもらって気持ちよく買い物していただけるような店を目指しています。それが僕の目標ですね。
お客様も僕を可愛がってくれるような年上の方から、若い高校生から20代の方、同業種の古着屋の方まで幅広い方が来てくれています。
やっぱり若い子にかっこいいと思われる人間じゃないといけないと思います。自分もそういう方に影響を受けてきた結果、古着屋になったので、誰かの人生に良い影響を与える人物になりたいと思っていますね。
-綾馬さんの今後の目標を教えてください。
僕は、人生とは知見を広げる旅だと思ってるんです。
自分が知らないことを知ったり、興味があることをやり尽くす。それが僕がこの世に生まれた意味だと思っています。
その中でアメリカが好きなんで、何度もアメリカに行ってそこで得たものを持ち帰って、他の人へ還元するっていうのが僕の目標だと思っています。
最終的にはやりたいことをやり尽くす。これが目標です。
-この先、具体的にやりたいことはあるんですか。
僕の理想のアメリカを実現する。その一段階目が古着屋だったんですよ。まずは古着屋、今後はバーバーやバーなどの構想もあります。
あと、僕も留学でアメリカをさらに知って好きになれたので、留学に興味を持った人のサポートがしたいと思っています。例えば英語の学習塾とか。今の古着屋が一歩目で、DIRTを日本一の古着屋にして、それからですね。
自他ともに認めるような、影響力や知名度もある古着屋を目指したいです。
人生の目標として、僕はゴッドファーザーみたいになりたいんですよね。
-そういう話を聞くと冒頭あったサッカーの話は挫折?みたいな感じなんでしょうか。
というより、単純に途中で情熱を失ってしまった感じですかね。勉強の方が楽しくなっちゃったんです。もともと一人で何かに取り組みことが好きで、勉強は一人でできて、やった分結果が出る作業だったので突き詰めることができた感じですね。
それが楽しくて、狂ったように勉強していました。
今はタイ語勉強中です。やっぱり現地語を話せると知見が広がります。現地の方とのコミュニケーションも変わりますし、考えや思ってることを生で吸収できるので。
あと、やはり母国語を話す方が相手も素になるので、結果的に良い仕事につながることが多いです。どこまで行っても人と人なので。
英語に関しては両親との映画の影響も大きいですが、両親が共働きの中、祖母がアメリカの小説が好きだったのもありますね。
-今盛り上がっている古着業界全体についてどう思いますか。
良い面としては、古着が認知されて社会から認められている。
影響力がある人から認められることで良い部分もあるとも感じています。
悪い面としては、面白く無くなっている。
見たことないものが少ない、みんなが良いという物を高く買うのが面白い行為なのかなと。段々飽きてくると思いますね。
本当に価値があるものはなんなのか?それは自分の足と知識がないと買えない物なんじゃないかと思うんです。ヴィンテージがブランド化しすぎることでみんなが飽きちゃうじゃないかなと。もう一度面白くするためには、単純にファッションに立ち返ることだと思っています。
例えばグランジカルチャーなどはファッションなので。それがもう一回古着を楽しめるポイントなんじゃないかなと。
それもあってDIRTではヴィンテージから近年物の珍しいファッション性の高い物まで扱っています。物として面白いし、見かけないし、ちゃんと着たらかっこいいので。そういったところに立ち返るのが大事だと思いますね。
-今はインターネットで情報が簡単に手に入る社会だと思いますが、今の若い方たちにとってその点はどう思いますか?
どうしても若い世代に関わりが少ないと、若い方にとってカルチャーの影響が薄く見える人もいるかもしれませんが、そうではないと思いますね。
逆に今の時代だからこそ生まれたカルチャーによるビジネスなどもありますし、若い方でも色々な面白いことをやっている人がいると思います。
いろんなことに触れられることは自分の知見を広げることにも繋がりますし、
自分でアクセスできる情報は多いに越したことはないので、僕は今の状況についてはポジティブに捉えていますね。
-今後は綾馬さんのような世代がきっと引っ張っていくんでしょうね。ちなみに同世代の古着屋さんなどでライバルはいますか。
dynamite used clothing(静岡)の中西さんですね。
彼はなんとも思っていないかもですが、僕はライバルだと思っています。彼は本物なんですよね。
僕は自分のことを芯から本物だとは思えていなくて、自分の生活だったり、業界での影響力など色々なことを考えて古着屋をやっているんですが、彼は全くそういったことを考えていないと思うんですよ。好きなことを突き詰めて古着屋をやっています。それが真の古着屋の姿だと思うんですよね。彼はそれを体現しているので、カッコいいし、すごいなと思ってますね。僕が彼ほど情熱を持てるカルチャーに出逢えていないし、僕が好きなのはあくまでも古着なんですよね。
彼は最初から好きな音楽、好きなアーティストがいて、その好きを突き詰めた結果、古着屋になる選択をしたって感じですね。それで、同世代で地方で若い子達からの支持も得てやっているのはすごいと思いますね。
- ここからは綾馬さんを象徴するもの・お店を象徴するものを紹介してください。
僕自身を象徴するものはこれですね。
「True Romance」のVHS・Tシャツのセット(BOXパッケージ付き)です。
僕が影響を受けた映画なので。
お店を象徴するものはいろいろ考えたんですが、このレジ前のお酒とタバコですかね。みんなよくしてくれて、いつも差し入れをくださるんです。お客様の人柄の良さが出ていて。なんか、みんないい人なんですよね。
- お店の今の商材で「これがDIRTだ」といったものはありますか。
「これがDIRTだ」は、レジにかかっているB-15ですかね。
これは僕しか仕入れられない方法で仕入れたんです。
- どういうことですか。
アメリカの友人からの頂き物なんです(まだ値段がついていない商品)。
「お前にはビジネスうまく行ってほしいからあげるわ」みたいな感じで。そういう仕入れ方法です(笑)
いつの日か出そうと思ってます。
- これからのシーズン(春夏)に向けて推していきたいアイテムはありますか。
ピチTですね。
この辺のコットンポリのTシャツをタイトに着るのがかっこいいんじゃないかなと思って、推してます。
-ちなみに体に入っているタトゥーについても教えてもらっていいですか。
これは買付のたびに毎回入れてるんですよね。
事前には全く決めずに、タトゥーショップ見つけて今日ここで彫ろうみたいな感じで。食事みたいにその場で決める感じです。
意味があるものもないものもあって、その日の天気とかから雲や雷を入れたり、水族館で見た鮫に感動してサメ入れたり(笑)
写真とかと同じ感覚で入れてますね。初めての買い付けではナバホに来たのでそれっぽいの入れたりとか。
あと、祖母の干支から寅を入れたり、バランス見ながら、反対側にも他のものを入れたりしてます。
そもそもアメリカントラディショナルタトゥーが生まれたきっかけが、19世紀に水夫が寄港した港町で適当に入れるっていうルーツなので、僕も同じノリで買い付け時に暇つぶし感覚で入れてます(笑)
-最後にDIRTをまだ知らない方へメッセージもらえますか。
ほんとふらっと遊びに来てください。
僕、今日真面目な話してますけど、そんな真面目なタイプじゃないので(笑)
全然恋愛の悩みとかでもいいですし、人生の話でも、洋服の話でもいいです。
あとは、俺の話も聞いてもらいたいな。
-綾馬さんらしいですね!
お互いに面白い話がしたいですね。ご飯も音楽もお酒も、なんでもいけるので。
ラフに遊びに来てもらいたいです。服買うとかなくてもいいので、友達の家に行く感覚で来てください。
DIRT Vintage Clothing
東京都杉並区高円寺北2-41-14 1階
営業時間:14:00〜20:00 不定休
Instagram:https://www.instagram.com/dirt_vintage/
Online store:https://soldclothes.base.shop/
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