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[導入事例]美術館・資料館こそ「ラジオ」を始めるべき?土方歳三資料館 館長に聞く音声活用術

※2021年9月取材の記事です

美術館や資料館等の施設では「音声ガイド」がよく活用されています。作品の見どころや、施設で展示している資料をさらに詳しく解説して来場者がさらに楽しめるように、各館でさまざまな工夫をしています。

一方で、音声ガイドを作るために、音声ガイド用の機材の購入やレンタルが必要になったり、音声コンテンツの制作を制作会社に依頼したりなど、コストがかかります。また、費用面以外でも、音声で具体的にどんな内容を発信すれば良いのかと悩まれれる施設関係者の方は多いのではないでしょうか。

今回は、土方歳三さんのご子孫で、土方歳三資料館 館長の土方愛さんは、音声ガイドや音声コンテンツの配信でVoicyを活用しています。資料館の運営にどのように役立てているかをご紹介します。


こんな方におすすめ

  • 博物館や資料館で、音声ガイドの導入を考えている

  • 館長や学芸員がパーソナリティを勤めるラジオを作ってみたい

  • 遠方にいるお客さんに向けて情報発信をしたい

音声で聴きたい方はこちらから

資料館の来館者のうち、約2割の方から「いつもVoicyの放送を聴いています!」と声をかけていただいているそうです。声の発信で来場者の方との距離が縮まったという土方さんの音声の使い方を、Voicy代表緒方との対談をもとに紹介します(本記事は、対談をテキストに起こしたものです)。


[チャンネル紹介]土方館長のゆるっと新選組!

土方歳三資料館 館長 土方 愛 さん

土方:
現在、Voicyで『土方館長のゆるっと新選組!』というチャンネルを運営しています。土方歳三と同じ家で育った6代目子孫の土方歳三資料館 館長の私が、幕末や新選組のことなどをゆるゆると毎日のように話しております。

2021年2月下旬に放送を始め、7ヶ月程が経ちました(※9月の対談時点)。現在1,200人を超える方にフォローいただいていて、本当にありがたいです!放送回数も160回まで頑張って積み上げてきました。

——— どんな内容が放送の中心になっているんですか?

土方:
新選組の話を中心に話しています。新選組隊士さんのご命日の日は、その人にちなんだ話をしたり、池田屋事件や八月十八日の政変など、新選組の活躍した事件のあった日には、その事件のあらましをご紹介しています。
他には、そういう事件にからめて「好きな隊士は誰ですか?」というアンケートをとってみたり、新選組クイズをやってみたり、いろいろチャレンジしています。

Voicy導入のきっかけ

——— Voicyに応募してくださったきっかけは何だったんですか?

土方:
緒方社長がClubhouseでお話しされていたのを聴いて、そこで音声配信をやってみたいなという思いが生まれたのがひとつです。あとは、コロナ禍で「資料館に来館できなくなりました」や「新選組の史跡めぐりが出来ないからつまらないです」など、そういう声が多く届くようになったんです。それで、自宅にいても新選組に触れていただけたらいいなという気持ちでパーソナリティに応募しました。

歴史初心者が聴いても楽しめる!土方歳三資料館の魅力とは

——— 難しい歴史話かと構えてしまいますが、土方さんのチャンネルは歴史に詳しくなくても楽しめる番組になっています。例えば、幕末のおすすめ漫画を紹介したり、子孫の目線で裏話をするとか、歴史を深掘りするだけじゃなくて、いろんな楽しみ方がありますよね。

土方:
私は専門家ではないので、子孫の立場で語ると決めているんです。そういうところも、皆さんに親近感を持っていただけているところかもしれないです。

▼土方さんの実際の放送


Voicyをはじめて良かった5つのこと

1. 音声ガイドを手軽に制作できた
2. 放送をきっかけに声をかけられるように!来場者との距離が近くなった
3. キャプションでは伝えきれないエピソードも声でじっくりと伝えられる
4. 月額有料課金(プレミアムリスナー)で、ファンと交流
5. リアルタイムで資料館のお知らせを発信できる

1. 音声ガイドを手軽に制作できた

——— 率直に、Voicyをはじめてどうですか?

土方:
まとめると5つあります。
まずひとつ目として、いつも私は来場者の前で直接話して館内ガイドをしていました。それがコロナになり、飛沫が飛んではいけないためやりにくくなってしまいました。そこで、音声ガイドを制作できたのはすごい良い点でしたね。

——— 音声ガイドはどんな内容ですか?

土方:
資料館は歳三さんの生家です。歳三さんのヒストリーに従って遺品が展示してあり、例えば「歳三さんがこの家で暮らした多摩時代の遺品が置いてありますよ。少し進むと、新選組時代のものが並んでいて、最後に箱館ハコダテ戦争を戦った頃のものがあって…」と、一緒に館内を見ながら聴けるガイドを作りました。

▼実際の資料館の解説放送

土方:
あとは、いわゆる「音声ガイド」とは別の使われ方もあります。イヤホンをつけて館内で聴かれる方は、実は意外と少ないんです。
Voicyだと、PCやスマートフォンから事前に音声ガイドの放送を聴くことができるので、事前学習みたいな感じで「こういうところなんだ〜」とイメージしていただいたり、入館時に待ち時間が出来たらその間に聴いたり、帰宅後にこんなところだったなと思い出して聴いていただいているみたいです。

——— 家に帰ってからも振り返りができるのはすごくいいですね!

土方:
はい、どこでも聴けるのはすごいことだなと思いました。特別展示があれば放送をその都度更新できますし、館内の展示変えをしたらそれに伴って更新するのも、Voicyならすごく自由にできます。

館内の様子


2. 放送をきっかけに声をかけられるように!来場者との距離が近くなった

——— Voicyをきっかけに来館される方もいるんですね。

そうなんです。大体2割のご来館者さんから「いつもVoicy聴いています!」と声をかけていただけるようになりました。Voicyを聴いて行きたくなったという方もすごく多いです。ご来館のきっかけにしていただいたり、あの時の放送でこう思いましたなどを伝えていただけたり、やっぱり会話も弾みますね。

資料館ではTwitterを頻繁に更新していて、フォロワーさんも28,000人以上いますが、VoicyはTwitterなど、他のSNSの繋がりよりも何倍も濃い繋がりができていると感じます。

——— 他のパーソナリティの方からも、ユーザーが濃くて「放送聴いてます!」という反響も多いと聞きます。

土方:
それは私も実感しています。SNSは匿名で身バレをしたくないという方がほとんどだと思うんですよね。でもそうじゃなくて、わざわざ資料館に来て「私が聴いてるんです」ってちゃんと歩み寄ってくださる方が多いんです。私もこうやって声でお届けして、皆さんに歩み寄ったからこそ、リスナーさんも歩み寄ってきてくれたのかなと思うとすごく嬉しいです!

放送が聴けるQRコードを入れたカードを、資料館の受付に設置


3. キャプションでは伝えきれないエピソードも声でじっくりと伝えられる

土方:
3つ目は、音声ではキャプションに書くことができない、それぞれのエピソードを濃く紹介できるのがとても良かったです。
しかも一方通行ではなく、その放送に対してコメントをいただいて、そのコメント返しをして、というやりとりも生まれます。資料館・美術館は、一方的に見て帰ってもらうかたちが多いので、来館者との双方のやりとりができるのはとても魅力です。


4. 月額有料課金(プレミアムリスナー)で、ファンと交流

——— プレミアムリスナー(月額課金した人だけが限定放送を聴ける仕組み)も活用されていますよね?

土方:
はい。2021年7月から、友の会のような位置づけでプレミアムリスナーを始めています。博物館には友の会やファンクラブがよくあります。そういったコミュニティは年会制がほとんどですが、Voicyのプレミアムリスナーは月額制なので、うちは月額500円(※Web決済の場合)とさせていただいています。

1回の入館料が500円なので、来館いただいた気分で応援していただく、という形をとっています。500円でプレミアムリスナーに入会した方は、月4回くらいプレミアム放送が聴けるようになっていて、たくさんの方に入っていただいてます。

月額制だから、リスナーさんも気軽に参加できますし、私も個人情報を全部管理して、もし退会が出たら月額で割って返金するなどの金銭のやりとりがなく、心を落ち着けて皆さんと繋がれるところがすごく良かったと思っています。

——— 芸能人の方のファンクラブでも活用していただいています。ユーザー管理して、資料送付、グッズ制作など対応していたら非常に大変ですが、Voicyのプレミアムリスナーの場合は、声で返せば良いので低コストでファンサービスができます。

土方:
そうなんですね!確かに、スタッフも少なくてよくて、Voicyの放送は本当に私1人で運営できています。


5. リアルタイムで資料館のお知らせを発信できる

土方:
5つ目は、リアルタイムで資料館のお知らせができるところが良いなと思っています。「こんな講座をやります!」と詳細な内容を説明できたり、特別展示の予約受付中に「今はこれぐらい埋まりましたよ」など、そういったお知らせが日々できる状況もすごく良いと思います。


博物館・美術館関係者へメッセージ

音声配信は、個性的な施設ほど向いている!

——— 博物館・美術館などの施設関係者の方に、音声発信をおすすめするポイントはありますか?

土方:
今、SNSを頑張られている展示施設が増えてきていると思いますが、音声も可能性がすごくあると思うので、本当におすすめしたいです。

博物館などの個性的な館に行くと、“名物学芸員さん”がいて、そういった方の話はすごく面白いじゃないですか。例えば動画だと「ニコニコ美術館」という番組があって、生放送で学芸員さんが展示を案内してくれます。その動画配信を何万人もの人が観ているので、やっぱり学芸員さんの話はみんな聴きたいんですよ。

あとは、その展示を企画して出来上がるまでのプロセスや意図など、そういった裏話も分かるとワクワクしますよね。「だからこういう展示企画が持ち上がったのか」とか「資料を借りに行く交渉も大変だったんだろうな」など。そういう裏側が垣間見れると何倍も盛り上がるんです。

音声で自分の館のアピールもできるし、あとは音声ガイドとして外国語バージョンを作っても良いし、マニア向けのすごい難しい専門的なことを発信したり、子ども向けの優しく噛み砕いた音声ガイドを作っても良いし…バリエーションも無限大に作れると思います。

企画次第でいかようにでもできるし、今までは館の中だけで使っていた音声ガイドが予習用で館に行く前にも使えて、見学中も使えて、帰り道の電車内や帰宅後にも使っていただけます。持ち運びできる図録みたいな感じで使えますよね。

そして1番大きいのは、自分の館のファンに向けて「友の会(プレミアムリスナー)」のようなものを気軽に始められるのが、いろんな展示施設に合っているなと思います!

人気になるコンテンツの秘訣は、偏愛を語ること

——— 人気なコンテンツは偏愛を語ることだったりします。学芸員の方にも、とにかく偏愛を語ってほしいです。

土方:
分かります!個性のある美術館とか博物館はたくさんあります。例えば「刀剣博物館」や陶磁器の美術館など。そういう特化した施設にはすごく合ってるんじゃないかなと思うんですよね。

——— Voicyであれば、初心者と上級者の放送を分けて作ったりすることもやりやすいですよね。

土方:
ありだと思います。その放送を聴けるQRコードを、展示の前に張っておいて「お好きなのものを聴いてください」と選んでもらうのも楽しいですよね。

——— 最後に、博物館・美術館などで音声活用を検討している方へメッセージをお願いします。

土方:
Voicyは施設の規模が小さくても手軽に始められますし、個性も出しやすいです。企画や考え方次第で、音声と展示の可能性も無限大に広がると思うので、ぜひおすすめします!

※2021年9月取材

さいごに

音声での発信は、瞬間的な「リーチ」や「効率性」という面を求めるには不向きです。一方、ブランドや企業が大切にしている世界観や、想いや本音といった価値をリスナー一人ひとりに届けるために役立てていただけると思います。音声による新しい企業カルチャーの発信や、音声放送による組織の活性化に関心のある方はお気軽にご相談ください。


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