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自分を喜ばせる

母が旅立って、来月で1年が経とうとしている。
今でも、再入院してから旅立った日までのことは、鮮明に憶えている。
それでも、時間が経つにつれ、悲しみが薄まるというよりは、諦めの感情が心の多くを占めるようになってきて、母のことを思い出して泣くということは、ほとんどなくなった。

代わりに、配信の映画やドラマのを観て、涙を流すことがめっきり増えた。
それも、繰り返し同じ作品を観ては、同じシーンで涙が溢れるというパターンが、ここ数ヶ月続いている。

きっかけは、テレビで配信の映画やドラマが観られることに気づいたことだった。
以前、友人に教えてもらい、星野源さんの配信をテレビで観られるようにセットしていたが、まさか他の配信も観られるようになっているとは、今年になるまで知らなかった。
ずっと、好きな映画やドラマは、Blu-rayを買って観るものと思い込んでいた。
あるとき、たまたま配信も観られると気がついて観るようになった

わけもなく涙が出るのは、鬱的症状の表れだと、かかりつけの病院の先生に言われたことがあったが、今はそういう類というよりは、登場人物に感情移入してのこと。
むかしから、すぐ感情移入するタイプだったことを考えると、ごく普通の反応で、正直、こんなに早く回復するとは思わなかった。

これも、ピアノと音楽そして、映画やドラマのおかげだ。
ピアノは、母が買ってくれた電子ピアノなので、弾いていると自然に母と対話しているような気になって、ずいぶんと慰められた。
特に、母が大好きで、よくリクエストされた「乙女の祈り」は、ほぼ暗譜できるようになった。

そして、海外のドラマで流れた主題歌や挿入歌を聴くと、「いいな、ずっと聴いていたい」と思うよりも先に、「弾きたい」「楽譜が欲しい」という気持ちになって、楽譜探しが始まる。

最初に楽譜が欲しくなったのが、アジア圏のドラマの挿入歌、主題歌だった。
初めはAmazonや、単に曲名をネット検索してみたが、さすがに欧米の作品と違って見つからず、諦めかけていたところ、たまたま関連で検索に引っかかったのが、香港ポップピアノ協会というサイトで、ここで楽譜を見つけることができた。

無料ということだったが、有料(月額千数百円)に申し込むと、完全な形での楽譜が手に入るのと、何曲ダウンロードしても定額なので、結果的に割安になる。
初めの目的の曲を2曲、そのほかにビートルズや戦場のメリークリスマス、ジブリの曲など数曲ダウンロードすることができて、なかなか上手くはならないけれど、少しずつ弾いて楽しんでいる。

今年に入ってからは、アジア圏の範囲が広がり、タイのドラマを観ていた。
これも配信で見つけて観始め、一時期よく観た。
いわゆるBLドラマというものなのだが、作品によっては差別、偏見、性差の問題に深く切り込んでいるものもあり、正直、国内のドラマよりも内容が深いことに驚かされた。

なかには、出家を取り上げているものもあって、さすが仏教国。
慈しみ深く育ててくれたひと(親、先輩、恩人など)のためにするという、出家の意味もセリフに盛り込まれていて、その国も文化に触れられたのは、思いがけない収穫だった。

ただ、幸いというか、これ以上のものはないと思える作品に早々と出会ってしまい、すでにもうBLドラマからは離れつつある。

その作品と一緒に出会ったのが、Mew Suppasitというタイのミュージシャン・俳優で、ドラマの中で彼が歌う歌声に惹かれ、早速、CDを探したところ、日本では発売されていないことがわかり、とりあえず、メルカリで探してアルバムとシングル2枚を購入した。ジャンルとしては、ヒップホップとなっているが、声質が柔らかいのと、とにかく音域が広い。

高音域は、いわゆるファルセットなのだが、じごから裏声に切り替わるのが、とても自然で、流れるように変わっていき、女性でも出すのが難しい高音域まで出るのには、びっくりした。

10代の頃から、あ、これ!いい!!と思うと即、行動に移すところがある。

例えば、その人の音楽(声、歌、楽曲)が好きとなると、とりあえず全部聴いてみたくなる。最初はストーリーミングで聴くのだが、万が一何かがあると、聴けなくなる可能性があるので、できるだけCDを手元に置くようにしている。
昔からそうだった、アリスから始まり、谷村新司、堀内孝雄、カーペンターズなど、CDとレコードを揃えた。 

ただ、20年ほど前、レコード針が製造中止になるというニュースと、引っ越しが重なって、一旦、全てを手放してしまった。なのに、レコード針製造中止の話はどうなったのか、いつの間にかレコードが復活した。

もちろん喜ばしいことだが、ならばあのとき手放さなければよかったと、つい思ってしまう。
クラシックから邦楽、洋楽と集めたレコードは数十枚あったはずなのに…
今、同じ物を揃えることは難しい。
それだけに悔やまれる。

ここ数ヶ月、音楽にしても、ドラマや映画にしても、自分の気持ちに素直に従うようになった。
流行や人気に影響されることなく、自分の耳や目が喜ぶカルチャーを、好んで選ぶようになってきた。
段々、自分が好む傾向がはっきりとわかるようになって、どんなに持て囃されているアーティストでも、自分が好んでいないものは、自然と遠ざけるようになったきた。

好きな声、曲、アレンジに浸りながら生活していきたい。そう思うようになった。

最近、目が覚めると自分で作ったプレイリストを聴きながら、朝の支度をしている。
よく聴くのが、星野源さんとMew Suppasitさんの曲。
今も、Mewの曲を聴きながらこれを書いている。

これからは、自分を喜ばせることを、最優先にしていこうと思う。

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