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数年ぶりの芝居

先日、ボイトレのカラオケ大会で知り合った、生徒仲間の女優さんの舞台を、トレーナーさんと観に行ってきた。
場所は中野。
去年、タイの俳優でミュージシャンの、MewSuppsitさんが、First FMをしたのが、中野サンプラザだった。今はもう、閉館となり解体工事を待つばかりとなってしまった。そこに新しい建物ができるそうで、劇場もできる予定だという。
トレーナーさんによると、中野は小劇場が多いのだとか。
そういえば、戯曲を書いたり、講評、アート関係の編集をしている友人に誘われて、何度か観劇したのも中野近辺だった。

中野駅の改札を出たところで待ち合わせ。
落ち合って劇場に向かう。
究極の方向音痴なのに、こんな時に限って、もらったチラシを、家に忘れてしまうというポカをやってしまった。
幸いにも、トレーナーさんが、スマホのアプリを見ながら、劇場まで連れて行ってくれてひと安心。

受付でトレーナーさんが、女優さんの名前を告げて、チケット代を払い、チケットとパンフレットをもらって劇場内へ。
知り合いの女優さんは、すでに映像や舞台に出演していると話していたが、どうやら養成所的な劇団で、卒業公演となっていた。

パンフレットに記されている講師陣の中に、奈良橋陽子さんというな前を見つけて、あれ?この人どこかで見た記憶が……
そうだ以前、ゴダイゴというバンドクループが、ガンダーラというタイトルの歌を歌って、大ヒットしたことがあったが、その時、作詞をしていたひとだ。
確か、英語の詞の部分を書いたという話を聞いたことがあって、英語に長けているんだなと、記憶していた。
あの頃、ボーカルのタケカワユキヒデさんや、バンドメンバーは、みんな私より年上で、作詞をしていた人も年上だったはず。
そのひとが、主宰者に名を連ねていたことにちょっと驚きながら、こんなふうに、何十年経っても、第一線で活動していることに、胸が熱くなった。

今回の舞台は、玉ノ井に暮らす人々を描いたもの。
玉ノ井と言えば、昭和32年4月に、売春防止法が施行されるまでは、赤線と呼ばれる風俗営業を主にしていて、他に吉原や新宿二丁目が知られている。

狭い長屋で暮らす3人兄妹弟を中心に、日常で起こるさまざま出来事が描かれていた。
3人の両親は、すでに他界し、長兄は国鉄に勤めて弟妹の世話をしていた。
とにかく面倒見のよい明るい性格で、困った人や動物を見ると、放っておけず、家に連れ帰るのが、癖。今までも、猫や犬を拾ってきたり、家を追い出された従姉妹を住まわせたり。
次兄は銀行員で生真面目な性格らしい。それが後で仇になるのだが…
妹は小説家志望、彼女が主人公の役割を果たしている。

友人の家が、近くにあると知った妹が、訪ねていくとその家はカフェで、女給さんが何人もいるらしかった。友人の母親がカフェを営んでいると知らされる妹。やがて出先から母親が帰ってくる。
着物を上手に着こなしていて、カフェのママの雰囲気を醸し出している。

実は、この役、知り合いの女優さんが演じていた。
それを私は、終わってから気づく事になる。
なぜかというと、パンフレットには、誰がなんの役かを演じているかが記されていなかったのだ。
なにせ、彼女とは、一度しか会っていない。顔を覚えるのが苦手な私には、声だけが頼り。それもカラオケ館で音楽がなるなか聞いていたので、あまりよくは覚えていない。

話を舞台に戻そう
長兄がまた困った人を見つけて家に連れて帰ってきた。
着るものはボロボロ、髪が長く、雷にでも当たったようなボサボサ頭。全身から臭い臭いが漂うことから、耐えきれない次兄は、彼を銭湯に連れて行くが、銭湯のお湯が真っ黒になったことで、今日はもう閉めなくてはいけないと苦情を言われたと兄に報告。
ボサボサ頭だった彼は、すっかり身綺麗となり、洗髪もしてさっぱりした表情。

他に長屋の住人で母親とデパートに勤める娘
出版社の編集者
女性関係にだらしない小説家、芝居小屋の俳優などが登場。

銀行員の次兄は、好きになった女性が、親の手術代が必要という話を聞いて、集金したお金を渡してしまう。
カフェで編集者と知り合った妹は、ひょんなことからスランプに陥った作家の話し相手を務めることになるが、書いた原稿をうっかり渡したことで、勝手に名前をすり替えられ文芸誌に出てしまう。
憤慨するも、後の祭り。
しかし、なんと長兄が面倒を見た浮浪者まがいの男性が、文芸社の息子とわかり、彼の助言のおかげで、原稿は実は彼女が書いたものと判明、小説家デビューが決まる。

場面転換が多めで、しかも必ず黒子が出てきては、看板や、幕などを出しては引っ込めたりと、忙しい。
影の存在ではありながら、はっきりと存在感を出していて、大きな劇場では見られない光景だった。
初めは、ちょっと目障りに感じたこともあったが、中盤あたりから
それも芝居のひとつとして、楽しんで観られるようになっていた。

若い俳優さんたちのせいなのか、セリフの言い回しが早く、序盤では何を言っているのがよくわからなかったが、耳が慣れるほどに聞き取れてきた。
これもスピードの時代なのかなと…
ただ、そんななか、唯一、知り合いの女優さんの言うセリフが、初めから滑舌がしっかりしていて、何を言っているのかがはっきりと聞き取れた。

彼女が、トレーナーさんのボイトレに通うようになったのが、もっとセリフを上手く言えるようになりたいという理由だったそう。通って1年以上経って、周りにも声の出し方や、滑舌、声の通りがよくなったと言われるようになったとか。
やっぱり、こうして生の舞台を観ると、その違いが表れるものなんだなと、つくづく思った。

終演後、席を立とうとすると、トレーナーさんから「◯◯さんが、ここまで来てくれるそうなので、待ちましょう」と言われてびっくり。
やがて、舞台を終えてまもない、衣装の格好そのままの姿で、彼女が来てくれた。
まさか、私が観に来るとは思わなかったらしく、トレーナーさんから聞いてびっくりしたそう。とても嬉しいと喜んでくれた。

年齢的に、女優さんとしては、遅いスタートだったかもしれないが、舞台や映像での仕事をしつつ、ボイストレーニングに通ったり、養成学校で勉強して、しっかりと実力を身につけ、活動の場を広げて、活躍していかれるのだろう。
せっかくのご縁。これからも応援していきたい。

札幌にいた頃は、よく観ていたミュージカルやストレートプレイも、コロナ禍以降は、まったく遠ざかってしまっていた。
今回、ふとした縁でこうして、芝居に触れられて、とてもいい時間だった。
やっぱり好きだなぁ。
1月は、トレーナーさんが出演する、ミュージカルを観に行くことになっている。
準主役的な役だそう。
歌声を聴けるのが、楽しみだ。





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