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はじめての司会のお仕事で言われた「あなたはいらなかった」という言葉

専門学校卒業後、声優事務所に所属させて頂いたんですが、1年で退所。現在までフリーランスで活動してきました。フリー1年目の(声のお仕事の)収入は3万円。2年目で11万、3年目でようやっと15万になりました。あ、年収がですよ。

数字だけタターと書きましたが、このくらいのわずかな収入UPもえぐいくらい大変で。

毎日毎日営業連絡をしても断られて、催促し続けているのに支払いが遅れたり(危うく飛ばれそうになったり)、本来はその額で受けていないにも関わらず「有野さんでと言ってしまい‥」と格安でお仕事をふられしまったり。

もっとお仕事をたくさんしたいなぁ‥と、ツラさを感じることもありましたが、お金がないながらも楽しくはあったんです。でも、お金が無い以上にツラかったことがありました。

とあるお仕事現場で“かけられた言葉”です。


・前回「MCのお仕事をください!!!」

【初の司会業。リハでは問題なかったのに‥】

事務所を辞めた後、とにかく暇で時間はたんまりありましたから、一般公募されているオーディションに片っ端から連絡していたんです。もちろん、ほとんど落ちていました。

たまーに返信があるかと思えば

「〇〇(作品名)に出演していただくため、ワークショップを受けて頂きたく存じます。つきましては、〇日までに〇〇万円を指定の口座に〜(以下略)」

というものばかり。

「学校、養成所で勉強してきたのに、なんでこんなもんばっか‥」


半分腐っていたといいますか、嫌になってきちゃってたんです。もう辞めようかな。でも、辞めたとて何をやれば‥。腐りながらもいつものように、オーディション調べをしていたら、ラジオパーソナリティー募集!というのを見つけました。

「いや、やりたいけどさぁ‥またお金取られたり‥ん?そういうんじゃなさそう‥?」

ためしに問い合わせてみたところ、話がどんどん進んでいき、枠を頂けることになったんです!専門学生時代の同期の女の子と2人で担当することになり(半年で終わってしまいましたが)やっとフリーランス生活が、スタートできた気がしました。

そしてそして。なんと、ゲストにきていただいた方の繋がりで、企業パーティーの司会をやらせていただけることになったんです!

「あんまり堅い感じにしたくなくて、ラジオのようなラフな感じでやってほしくて!」

司会のお仕事は初めてでしたが、そういう雰囲気で良いならと(パーソナリティをやっていた女の子と2人で)お受けしたんです。

「あぁ、仕事ってこうやって決まっていくのかなぁ♪」

‥なんて、ホクホク嬉しかったのも束の間。



打ち合わせを含めた会食にご招待頂いたとき、「え、ほんとにラフなノリでいいの‥?」と感じるくらいガチガチな雰囲気でした。

ザ・社長という感じの恰幅の良い方の側には、ザ・お付きの方という感じのスラッとした男性。

「え、この人たちの企業パーティーの司会をするの?ムリムリムリ」

と、心で喚きながらも話はどんどん進んでいき、いざ本番当日。ザ・ホテルという感じの、ぼくとは一生交わらないであろう素敵な会場でした。

(ラジオのノリなんてムリでしょ!そういう雰囲気じゃないよ!!!)

司会業はぼくも初めてでしたが、一緒にやることになった女の子も初めてでした。

「詰まったらなんとかするから大丈夫よ!」

なんて何の保証もないことを言ってしまった手前、泣きつくこともできない。

「‥よしっ。何とかしなきゃ」

と心に決め、いざリハーサルに。リハーサルでは特に問題はなく、スラスラと進み「おっ、こんな感じでいければ‥!」と思っていました。そう。リハーサルでは問題はなかったんです。


【男の方はいらなかったね】

「あ、乾杯の音頭はゲストの方にお願いするので‥」

「そうなんですね。わかりました。ちなみにゲストの方というのは?

「あぁ、〇〇さんです」


‥まさかの某大御所女優さんのお名前。

(ちょっと待て!!!それならもっと早く言ってくれよ!てか、本当にラフな喋りでいいのか!?空気感もゲストの方も全然ラフじゃないんだがっ!?!?)

「えっと、あの、ちなみに何ですけど、なんで我々を司会に選んでくださったんですか?」

「前にお願いしてた方がいたんですが、もう少し若い方にやって頂きたいですねーという話になりまして」

「あぁ、そうだったんですか。‥あの、差し支えなければでいいんですが、前に司会をやられていた方というのは‥」

「〇〇さんですよ」

某大御所お笑いコンビの1人。

(もーラフなんて信じない。めちゃくちゃ真面目に堅くやる。てか、そうなっちゃうよ)


決めていたタイミングで音楽は鳴らないわ、マイクがハウリングして「キィィィィィン」と鳴ってしまうわ、変な間ができたとき「それにしてもぉー‥ねっ。ほんとに。ねっ」と全然繋げないわで散々でした。

落ち込みも落ち込み、お一人お一人に挨拶へ行くことに。大変でしたねー、ご苦労様ですとお声をかけていただける中、とある女性にご挨拶をしたときテンション高く

「わぁー〇〇ちゃん(一緒に司会をやった女の子)すごくかわいかったー!ほんとにおつかさまぁー!あ、男の方はいらなかったね。」

~男の方は、いらなかったね~


‥その後のことを書こうと思ったんですが、正直全く覚えていません。唯一覚えているのは、某大御所女優さんにご挨拶をしたことくらい。


お仕事があるのは本当にありがたいことです。でも正直、全部が全部良い思い出なわけではありません。結果論、今こうして「大変だったんですよー」なんて話すことができていますが、当時は誰に何を話していいのか分からず、1人で抱え込むだけでした。

「ぼくのせいだけど、そんな、そこまで言わなくてもいいじゃん‥。」

こうしている間にもどんどん入ってくる同期たちの活躍情報。やりたいお仕事をやりながらも、どんどん荒んでいきました。でも、この体験があったからこそ今があります。

正直、慰めて欲しかったですよ。でも、お仕事です。拙かった自分がいけないんです。

ラジオをやっていたからこそ体験できたお仕事。あのとき、オーディション検索をしてよかった‥。


次回「ある日のアルバイト帰りに感じた絶望」


ナレーター
有野優樹(ありのひろき)

noteを通して書籍出版を目指します!タイトルは「僕には喋りの仕事しかない~いじめから脱却できたのは“喋りのおかげ”だった」

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正直に言います。話を上手くするため、映画を見たり本を読んだりのお金に当てます。直近、島に暫く住む予定なのでそちらの生活費に。