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リアルタイム会議 メタバースの勃興 (その2) ~ファッション・イン・バーチャル・スペース~

4月末に全世界をズームで結んで行われた「リアルタイム会議 2021年春」。今年はメタバースに使われる技術を広く紹介することが主な目的でした。前回のnoteでは、映画監督の視点から見た、技術の活用法を紹介しました。演劇部の子どもたちとロックダウン環境の下でアニメーションを制作したパトリック・オズボーン監督の功績は素晴らしいですね。

リアルタイム会議のダイジェスト2回目はメタバースの中でファッションとはどのようにデジタル化されるのか、という観点から。例えば、昨日はRoblox内のバーチャル・ブロック・パーティについてのnoteでした。映画のプロモーションとしてのメタバースの活用方法の一つと言えるでしょう。

Balenciagaにおけるバーチャル空間の活用について

ではハイエンドなファッション・ブランドがメタバースにも通じる「バーチャル空間」(※)を利用して何が出来るか。会議で取り上げられたのは、Balenciaga(以下「バレンシアガ」とカタカナ表記)のケース・スタディでした。

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※「バーチャル空間」ここでは人々がまるで現実世界にいるかのように歩き回ることのできる3D空間を指します。

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まず重要なキーワードとして:
メタバースの中ではファッション、スポーツといった娯楽は、日常と同じようにデジタルにより統合化される
という発言が会議中にありました。

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バレンシアガが2020年の12月に実施した「2031年のバレンシアガ~インタラクティブ・ジャーニー」についてです。ファッション・ディレクターのNiklas Bildstein氏の発言によると「50人のモデルを集めてそれぞれの服を着たキャラクターすべてにストーリーがある」というコンセプトでつくられました。バーチャル空間には、現代にはない乗り物を配置し「未来的だけど現代とも繋がりが感じられるデジタル・リアリティ」を目指したそうです。

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Niklas氏によると、ファッションは古いフォーマットである一方、ゲームは熟成されたメディアと言えるので、ゲームのナビゲーションを取り入れた。メタバースでは、オンラインで永続的に生きるアバターを使うことでコラボレーションを広げることが出来る、と考えたそうです。

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一方でStreamline Media GroupのAlexander Fernandez氏によると「常にゲームに使用されるテクノロジーをファッションに持ち込むことを考えていた。」「実際に(ゲームを)マーケティング・プロセスに持ち込むところまで行くのはかなり背伸びしないと出来なかった。しかし近年のミレニアムの消費行動が後押ししてくれた」とのことです。

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バレンシアガのデジタル・コンテンツ制作の実現を技術的な観点からサポートしたEpic Games UKのSally ann Houghton氏によると、「メタバースは最終的な到達地点」との発言が。デジタル技術の発達によって、メタバースにより多くの人たちを巻き込んだ様々なバーチャル空間の活用が生まれることを示唆しているように思いました。

「ファッションのデジタル化」とは?

しかしメタバースを利用しなくとも、ファンションのデジタル化は既にいたるところで起きています。例えば、ロックダウンによってファッション・ショーのバーチャル化を行い成功を収めた事例が、Innovative Agency London College of FashionのMatthew Drinkwater氏によって発表されました。

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また何年も前から研究が続けられてきたバーチャル・トライアウトも進化し続けています。例えば顔の画像認識を元にしたキャプチャを利用した事例が、フランスのブティック"Chloe"のGuillaume Gouraud氏によって紹介されました。

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「ファッションのデジタル化」とは「バーチャル空間のアバターに服を着せる」ことばかりではなく「ファッションという概念をメタバースでどう活用するか」という方向に既に進んでいるということが実感出来るプレゼンテーションだったと思います。その意味で、ファッションを現実世界とバーチャル空間がシームレスに統合するためのメディアとして利用するのは、ごく自然なアプローチなのかもしれません。(つづく)

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