見出し画像

伊藤忠商事を勝手に5段階評価してみた~企業財務分析


挨拶

このページをご覧になってくれている方ありがとうございます。改めましてコブータと申します。私は米国公認会計士や簿記2級の学習を通じて会計のマニアになりました。企業の財務分析を行うことで皆様の投資判断の材料にしたり、就職、転職の企業分析にお役立ちいだだければと思います。今回は5大商社最後の伊藤忠です!5大商社の中で一番良い印象を聞かれると自分は伊藤忠なので最後にしましたがみなさんはどうですか?この企業の分析をしてほしいとリクエストがありましたらコメント等に残してくれると嬉しいです!

企業概要

伊藤忠の前身は1858年の創業に始まります。奇しくも丸紅と同じ年ですね。伊藤忠兵衛が、麻布類の卸売業を創業したのが始まりです。伊藤忠は麻布類の販売から始まっており、1941年には株式丸紅と合併していました。伊藤忠と丸紅にはかなり深い関係があるようですね。

事業内容

伊藤忠の事業は下記の8個の事業に分けられています。

  1. 繊維(衣類)

  2. 機械(プラント・インフラ含む)

  3. 金属

  4. エネルギー・化学品

  5. 食料

  6. 住生活(不動産・住宅建築材料)

  7. 情報・金融

  8. 第8(その他)

  9. その他

伊藤忠は特に生活消費分野に強みを持っています。ですので食料事業部や住生活の分野に強みを持っていることが分かりますね。そして第8事業は特にこれら生活消費分野のビジネス基盤を使って新しいビジネスを創造する事業です。伊藤忠も割とシンプルに事業を分類していますね。だからこそ、プラントやインフラが「機械」事業に一括りにされてしまう点もありますが。

人員について

伊藤忠の従業員数内訳は下記の通りです。
従業員数は約11万人の大企業です。意外にも5大商社の中で一番多く人材を抱えているのが伊藤忠でした。そして、一番人材を割いているのが食料事業、その次に住生活事業になります。伊藤忠は特に生活消費分野に強みを持っているとのことでしたが、人材もしっかりと強みのある分野に配分されていることが分かりますね。

伊藤忠従業員数

働きやすさについて

現在注目されている働きやすさですが、伊藤忠は子会社もかなり多いので今回は主な伊藤忠のデータのみ持ってきました。女性の管理職は8.6%と女性の管理職を推進はしている最中かなと思える割合ですね。ですが、多様性が重要な現代では日本を代表する企業としてはもう少し頑張ってほしいですね。男性の育休取得率は52%とかなり昭和な匂いが漂ってきていますね。今まで分析してきた大企業と比較するとここはかなり頑張ってほしい点ですね。

伊藤忠多様性指標

伊藤忠商事の売上構成

伊藤忠商事は収益約13兆円の大企業です。そんな伊藤忠商事は何で儲けているのでしょうか?
伊藤忠商事は収益の半分を食料事業とエネルギー事業で稼いでいます。意外にも住生活事業での収益は多くはありませんでした。とは言っても金属、機械と並ぶ収益の柱であることは変わりません。
さらに伊藤忠商事はすべてのセグメントで2021年度と比較すると増収になっています。その中でもやはり食料事業とエネルギー事業の収益の増加が全体の収益の増加を引っ張っていますね。エネルギー・化学品事業ではエネルギーの原材料の高騰の影響があったと思いますが売上総利益も大幅に上がっているので価格転嫁をしっかりと進めているか、原価を上手く調整しているようです。

伊藤忠セグメント別売上

営業利益と当期純利益

収益が増加しているのも重要ですが、営業利益と当期純利益についても無視することはできません。
伊藤忠の営業利益率は約5%となっています。メーカーであればまあまあの評価ですが、その他の事業であればもう少し営業利益率は高くしてほしいのが本音です。それだけ、総合商社として価値を社会に提供するのに苦戦をしているということでしょう。ですが、これは伊藤忠だけに当てはまるわけではなく、5大商社全部に当てはまります。
また有価証券損益が2021年度と比べて大幅に減っているのも気になります。これは2021年度に所有していた株を売却した影響が大きいです。つまり、昨年度たまたま有価証券損益でたくさん儲かったわけです。
また、支払金利が2021年度と比較して2倍以上になっており、急激な増加は5大商社全てに見られましたね。
当期純利益は今まで分析してきた4社では最高益を達成していましたが意外にも伊藤忠は2021年度と比較しても減益という結果でした。これは有価証券損益の影響が大きかったですね。ですが、それを考慮しなければ利益は増えていたので特に今後の財務諸表には注目していく必要があるでしょう。
1株あたりの配当金も年々増加しています。配当性向は約20台%ですので今後の配当金の増加も期待できそうですね。また、配当性向がこれだけに抑えられているということは今後の伊藤忠商事の投資によってさらに利益が増え、株価の上昇と配当金の増加の両方取りができるかもしれませんね!配当利回りは2%台と少し寂しいですね。

伊藤忠損益計算書

伊藤忠商事の倒産リスクは?

会社が潰れてしまう可能性があるか?を判断するには流動比率の分析はかかせません。流動比率とは流動資産÷流動負債で求めることができ、短期的な資金繰りに問題がないかが分かります。
流動資産は1年以内に現金になりえる資産、流動負債は1年以内に払う負債のことです。流動資産が流動負債より多ければとりあえずOKです。
ですが気をつけるのは棚卸資産の項目です。棚卸資産は1年以内に販売できるかできないか分からないからです。
伊藤忠商事の流動資産を確認すると約5.1兆円あります。その内棚卸資産は1.3兆円ですので流動資産の約26%です。一方で、流動負債は3.9兆円と流動資産より1.2兆円少なくなっています。棚卸資産を除いたとしても資産は3.8兆円あり、流動負債と流動資産(棚卸資産除く)はほぼ同額ですね。ですので伊藤忠商事の短期的な資金繰りについてすぐに問題は起こらなさそうですが注視が必要です。

伊藤忠商事貸借対照表(流動資産)

伊藤忠商事の非流動資産

伊藤忠の非流動資産は増加していますね。特に持分法で会計処理される投資の資産額が増えています。会社への投資が上手くいっているのはとても良いですね。

積極的な自社株買い

伊藤忠は積極的な自社株買いを行っています。昨年とほぼ同額の600億円分の自社株買いを行っています。自社株買いを行い、世間に出ている株数を減らすことで株価を上げて投資家達に還元することが目的ですね。ですが、それだけのお金を使うのなら設備等に投資をしてさらに利益を増やして配当金や株価の向上に繋げてほしいという投資家の意見もあります。ここは投資家としての好みが分かれる点ですね。

投資活動のキャッシュフローがマイナスに

伊藤忠の投資活動のキャッシュフローは2021年度はプラスでしたが2022年度はマイナスになっています。これは持分法の投資の売却による収入の影響です。
損益計算書で有価証券損益が2021年度は多かったと説明しましたが、その理由は所有株の売却でした。この売却の影響で2021年度は多くの現金を得ることができ、投資活動のキャッシュフローはプラスになっていました。
また持分法の投資の取得による支出も2022年度は2021年度と比較して10倍以上増えています。それだけ2022年度に他の会社への投資を開始したので今後の利益の増加にも期待ができそうですね。ですが、上手くいくかは今後の決算報告や有価証券報告書の確認が必要ですね。

伊藤忠投資活動のキャッシュフロー

まとめ&評価

  • 2021年度と比較すると全ての事業で増収を達成(減益している事業あり)

  • 食料、エネルギー事業で半分以上の収益を稼いでいる。食料事業もエネルギー事業も安定しているので今後も同程度の収益になりそう。

  • 営業利益率はもうひとつ。当期純利益は減少だが2021年度の株の売却が大きく影響。今後も増益し続けられるかは注視が必要。

  • 配当はもう少し出しても良いのでは。自社株買いも行っている。

  • 短期的な資金繰りについては今後も注視が必要

  • 2022年度は他の会社への投資が多く、その利益を享受できているかは2023年度の決算や有価証券報告書の確認をする必要あり。

伊藤忠評価

ここまで読んでいただきありがとうございます。コメントにどの企業の分析をやって欲しい等書いていただければ分析します!

出典:EDINET閲覧(提出)サイト https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100R19K.pdf?sv=2020-08-04&st=2024-04-20T06%3A04%3A34Z&se=2033-06-23T15%3A00%3A00Z&sr=b&sp=rl&sig=JyN1V7SJ3c%2BucCUiFmjISSdt5rC5ZyZ7Zg6hrDY%2F%2FhM%3D

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?