所長コラム⑨「目的と目標の違いとは」
こんにちは、VCラボ所長の松本です。
以下のやりとりはご存知でしょうか?一時期、Twitterで話題になった書き込みですが、私もこの内容には「なるほど!」と唸ってしまいました。
実は私、漫画を読むのが大好きで、特に異世界転生ストーリーが気に入っていて、週末はベッドに寝そべりながら一日中読んでいることもあります。自分の親しみのあるストーリーに紐づくと、難しい概念や馴染みのない言葉も一気にその意味が了解可能になります。
目標には「なんのためにその目標を設定するのか?」という目的が必要です。目標は目的実現のために必要なプロセスで存在し、達成がメジャラブルに設定されることが重要です。「魔王を倒す」はメジャラブルです。でも、「世界平和」を皆が分かるように言語化するのは容易じゃありません。目的の言語化は、非常に難しい場合が多いといえます。
ちなみに、目標が目的から落とし込まれない場合もあると思います。例えば、「世界一強い勇者になる!」という目標は、「なんのために世界一になるのか?」という目的がなくても、「世界一強い勇者になりたいから」という熱い思いによって成立し得ます。これは、目標と目的が一体化した姿といえるかもしれません。
日本で目標管理制度(MBO)が普及した際、数値や成果に目が向き過ぎ、形式的な運用が増えてしまった時期がありました。その頃、野中郁次郎氏を中心として「思い」のマネジメント(Management by Belief:MBB)が提唱されました。MBBは仕事に「思い」を持って取り組む状態をつくり出す経営手法であり、MBOを補完する意義があったといえます。
目標はメジャラブルに設定するものですが、目的は心に内在する「思い」に裏づけられた抽象的なものです。いくら目標が明確でも、目的の描写が不十分であれば、目標との繋がりが不明確になります。目的の描写が十分に行われてこそ、「こういう目的だから、この目標がある」「こういう思いがあるから、この目標がある」と目標の意義が浮き彫りになります。
経営者や管理者は、事業の目的や思いを社員に伝わるように表現できることが重要です。伝わるように伝えることができないと、納得できる目標に落とし込むことはできません。伝わるように伝えるには、伝えたい相手を理解する取り組みが重要です。私の異世界転生ストーリーじゃないですが、相手の親しみある物語を知り、アナロジーを使って伝えるなど、工夫を惜しまないことが重要と思います。
■所長プロフィール
松本 桂樹(まつもと けいき)
株式会社ジャパンEAPシステムズ 取締役
神奈川大学人間科学部 特任教授
精神科クリニックにて心理職として勤務後、日本初の外部EAP専門機関であるジャパンEAPシステムズの立ち上げを担う。 現在もEAPコンサルタントとして、勤労者の相談を多く受けている。
臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、日本キャリア・カウンセリング学会認定スーパーバイザーなどの資格を保有。