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所長コラム⑥「アバターの意義」

1.メタバースカウンセリングの動画 

 先般より、メタバースでのカウンセリングの可能性についてnoteで述べてきていますが、実際にカウンセリングの試行を続けています。今回、相談者目線でキャリアカウンセリングのロールプレイ動画を撮ってみましたので、アップします。ちなみに後日、メタバースカウンセリング研究会のページにて、カウンセラー目線での動画もアップする予定です。

 ご覧になって頂き、如何でしょうか?相談する側の立場に立ってみて、「リアルな面談と近く、結構使えそう!」と思われたか、はたまた「アバターが気持ち悪い!」と思われたかなど、是非以下のアンケートフォームに回答を頂けたら幸いです。

2.メタバースカウンセリングの特徴 

 これまでメタバースでのカウンセリングを試してみて、その特色を整理すると、以下の3つがポイントだと感じています。

① アバターのやりとりであること
② 相手の表情が見えて、目が合う感覚が持てること
③ 同一空間を共有している感覚が持てること

 ①は、自分の姿を映し出さずにやりとりできるメリットに関連します。ただ、これは②とも関係しますが、自分が姿を映し出さないと相手も映し出さなくなるため、お互いの表情を読み取ることが難しくなるというデメリットと連動します。

 アバターの設定は「a.動物やロボットなど人ではない姿」「b.自分とは全く違う人の姿」「c.自分に似た人の姿」と主に3つに分類できるでしょう。実際の自分の姿が晒されることは、髪型や服装や振る舞いなど公的自己意識が強まり抵抗感が増しますが、ただ自分の姿とアバターがあまりにかけ離れていると、「自己一致」の感覚が薄れてしまう気がします。カウンセリングでは「c.自分に似た人の姿」のアバターによって、自己開示がほどよく促進される印象があります。

 ②は、例えばビデオオンでZoomのやりとりを行う場合、相手に「目が合っている」と感じてもらうには、こちらはカメラを見る必要があります。でも、カメラを見ている間はディスプレイで相手の顔を確認することができず、お互いの目が合っている感覚は持てません。先に掲載したYoutubeでも分かるように、アバターは表情がある程度認識できます。お互い視線が合う感覚を持つことが可能です。目が合う感覚は「聞いてもらえている」という手ごたえにつながり、話しやすさにつながるものと思います。

 ③は、例えばZoomの画面で相手が指をさしたとき、相手の指がどこに向いているのかを認識することは容易でありません。「北を向いて」と言葉で言われれば、絶対的基準である北を認識することは可能です。ただ、相手が動作で指し示す方向を即座に認識して、共通方向を向くことは難しいといえます。メタバースではリアルな世界と同様、相手が示す方向を即座に認識できるため、同一空間を共有している感覚が強く持てるのだと思います。

3.アバターと人権

 ところで昨今、「人権」に関する企業の方針なり対応が、ビジネスに大きく影響を与えるようになっています。例えば、中国の新疆ウイグル自治区の綿製品が強制労働によって生産された疑いがあるとのことで、現地生産された綿製品の使用中止を決定されたり、その製品を使用した企業の不買運動が報道されたりしました。今は国際的にサプライチェーンにおける労働者の人権に関する法整備も進んでいます。

 長時間労働やハラスメントの問題も「人権」という文脈で語られることが増えており、多くの企業が人権方針を策定している状況です。私はアバターでのカウンセリングを試行していますが、アバターで活動する時間が増えることで、実は「人権」について考えることが増えました。アバターにも人権があるのだろうか?自分の分身が活動を幅を広げるにつれて、より大事なテーマになってきたと感じています。

ちらし最終版

 この度、VCラボでは上記のセミナーを企画しました。セミナーでは、本noteで大人気の「さきみ」も、アバターでシンポジストとして登場します。この機会に、「人権」の法的意味、企業の社会的責任、そしてマクレガーのY理論に示されるような「人間尊重」の意味について考えてみたいと思っています。申し込みページがまだできていませんが、また改めてご案内させて頂きます。

松本さん_2203

■所長プロフィール

松本 桂樹(まつもと けいき)
株式会社ジャパンEAPシステムズ 取締役
神奈川大学人間科学部 特任教授

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精神科クリニックにて心理職として勤務後、日本初の外部EAP専門機関であるジャパンEAPシステムズの立ち上げを担う。 現在もEAPコンサルタントとして、勤労者の相談を多く受けている。
 臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、日本キャリア・カウンセリング学会認定スーパーバイザーなどの資格を保有。

お問い合せ:https://www.jes.ne.jp/form/contact