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アンラーンの実体験(Yさんの場合)

みなさま、こんにちは。VCラボのさきみです。
前回に続いて、今回も「アンラーン」について、さきみのもっとも身近な人(つまりは、中の人…?)『Yさん』の実体験をお話ししてみようと思います。
 

「気が利く」=仕事ができる・・・?

現在、臨床心理士で1級キャリアコンサルティング技能士のYさんは、もともと心理とは縁遠いところにいました。
 
大学でフランス文学科を専攻し、いろいろな世界が見た~いと、新卒で航空会社に入社し、客室乗務員になりました。
就活で、そこそこ「気が利く」と長所を認識していて、これは仕事でも多いに役立っていました。

サービス業においては、「言わなくてもわかってくれる」という「察する」サービスは素晴らしいとされるものであり、仕事もうまく回っていました。
毎日気を利かせまくって、「察すること」が当たり前になっていきます。
 
その特徴が、臨床心理士となり相談対応する際に、大きな課題となったのです。
 

それって、本当にご相談者のため?

Yさんが新人カウンセラーだったころは、まだ、これほどSNSがない時代で、気兼ねなく本音を語れる場として回数制限のない電話相談やメール相談はうってつけのツールでした。
その中で、なんとなく、周りのカウンセラーより、頻回利用のご相談者が多いなあと思っていたのですが、多い方だと、1日に3、4回お電話くださる方もいます。
新人のYさんは、毎回「未熟な分、精一杯傾聴しよう」と、相談対応をします。
 しかし、頑張れば頑張るほど、頻回利用者が増える…。そのうち仕事がまわらなくなっていきました。


できることを抑えるって、難しい!!

スーパーバイズや先輩の指導を受けながら対応していたある日、スーパーバイザーから、「で、ご相談者の持っている力は何?この相談対応は解決に向かっているの?」という質問が。

Yさんは、カウンセラーの自分が「察すること」により、ご相談者が適切に助けを求める機会や自分で解決しようとする対応力を奪ってしまっていたことに気づきました。
 
重要な気づきを得られたのですが、ご相談者のために「察する」を控えることは本当に難しいものでした。
必要な「察する」まで封印してしまって、我慢の日々。

しばらく、自分らしくない相談対応になってしまい、自己嫌悪にも陥りました。
それでも諦めず、どうしたらよいかを考え続けました。自分の中でたくさん対話を繰り返していたと思います。
 
しばらく悩みながらの対応が続き、あるとき、
 
 ・察することを「我慢する」という自分に意識が向いている
 ・「ご相談者のために」が二の次になっている
 
ということに気づきました。
 
もっと「ご相談者に、そして、ご相談者の理解に集中しよう」という大事な前提を思い出したのです。
 
そうすると、単に「察する」を我慢するのではなく、「手を貸すところ」「見守るところ」「応援するところ」など、対応のバリエーションが増え、自然に対応できるようになりました。
 
当然のことながら、ご相談者と解決したい問題を共有でき、解決に向かってタッグを組めるようになり、頻回ご利用者でも相談頻度が落ち着いていきました。
 

奥深くにある力を見出すこともアンラーンにつながる

Yさんは、この一連の出来事を再びスーパーバイザーと振り返り、
長所だと思っていた「察する」ことの根底で、「観察力を発揮している」のだと思い当たりました。
 
そういえば、小さい時から「細かいところまでよく見ている、覚えている」と言われたものです。(シラスの目が気になって、食べられない子だった…)
 
よく観察しているから、「察する」ことができていたのです。
いわば、「察する」というのは表面的なお化粧のようなものでした。
 
新たに認識できた「観察力がある」という長所を存分に発揮して、得られた情報とご相談者の問題解決の方向性と照らし合わせて、カウンセラーとしての対応を判断する、自信を持って、「察する」をしないこともできるようになりました。
長所を存分に発揮して、懸命に対応する、どこにも我慢はありません。
 
今も、スランプに陥ったときには、「観察力」を発揮して、自分や状況を観察し、再浮上の手がかりを探します。長所・強みというより、「相棒」という感覚です。
 
アンラーン、一度獲得したことや自分の良さを手放すのは、本当に難しいものです。
単に手放す・おさえるというやり方は、Yさんのように無理が生じて、かえってよくない状態になってしまう可能性もあります。
 
有効なアンラーンには、何をどう手放すのか、手放さないものは何か、これを深く内省していくことが必要です。
それは、なかなか一人では難しいものかもしれません。
 
VC面談やオンボーディング面談でも、アンラーンは重要な要素になってきます。
VCラボでは、皆様の本当の長所を発揮しながらアンラーンし、自らを進化させていくことをサポートしています。



こんな時代もあったな… 何か、確実にアンラーンされた気がする


■さきみのプロフィール
ビジョン・クラフティング研究所 シニアコンサルタント
臨床心理士・公認心理師・1級キャリアコンサルティング技能士
 
 
お問い合わせ先:https://www.jes.ne.jp/form/contact
VCラボ ホームページ:https://vc-labo.jp/