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キャリアを積む日本の女性の皆さんへ、謙虚さと自信のなさは別のもの

日本人の女性のキャリアについて相談を受けると、スキルや実力、経験を持っているにも関わらず、自信の無い方によく遭遇します。しかし、アメリカで働く私にとって、お会いした女性から受ける印象は日本特有のもので、対照的にアメリカ人やヨーロッパ出身の女性からは全く逆の印象を受けることが多いのです。そうした地域の女性は、時に自信過剰になっていることさえありますが、男性にも及ばないキャリアを積んでいる方が多いのはそのせいかもしれません。

なぜ日本人女性にそうした方が多いのか。これは社会的な女性に対する態度や扱いに始まっていることは言うまでもありませんが、原因はもっと深いところにあるように思います。日本の子育ての中には「女の子だから」とか「女の子らしく」という言葉が未だに出てきます。根本的に「女の子を女の子として育てる」というこの感覚を我々大人が解決しない限り、世代を超えて脈々と継がれていってしまう文化でしょう。例えば「女の子だから男の子より早い門限を設ける」という親がいたとします。すると、女の子であるがために男の子より経験値を積む時間を短縮していることに繋がります。また、「女の子だからもう少し身だしなみや身の回りを綺麗に」などとアドバイスすると、成長の過程で子どもの意識の中に「女の子だから・・・」という言葉が残っていきます。これはかなり根深い問題かもしれません。

話をキャリアに戻します。女性が女性らしい大人になることは大切でしょう。しかし、キャリアについて言えば、特定の仕事を除いては女性らしさや男性らしさを求められる仕事はありませんし、あってはいけません。それにも関わらず、日本においてもアメリカにおいても日本の女性と仕事をすると、高い確率で自らサポート・支えるタスクを選んで仕事をする人に出会います。自分で考え計画したものを自身でまわすような、プロジェクトをドライブするタスクをこなす日本人女性にお目にかかることは稀です。サポートするような仕事をしているほうが、自分らしく輝いていられることもあるでしょう。しかし、それだけを仕事にしていてはキャリアを積むことも、そして自分自身が何ができるか、どんなことを仕事にできるかという部分でスキルに自信を持つことが難しくなっていきます。更に言えば、誰かのサポート役に回ると自分で考える力を失ってしまうのです。サポートするような仕事のやり方は自分のスキルのひとつにすることはとても良いことですが、それをキャリアの中心に置くことはお勧めできません。

一方、女性のみならず、日本人の良いところに「謙虚さ」というものがあります。日本で成長し日本らしい心を持つと世界では驚かれるほどのレベルの謙虚さを持った人になります。これはとても良いことです。自己主張の強い世界の舞台に出ると、この謙虚さは宝物になりますし、光を放ちます。しかし、「謙虚さ」と「自信の欠如」は別のものです。相談を聞いていると、この部分を混同して自信のない女性は多いようです。それは、先にも言ったように「女の子だから」というような文化的背景で成長すると、自信をもって主張することよりも謙虚でいることを求められ続けるからです。キャリアを積む上で、この謙虚さに影響された自信の欠如は大きなマイナス要因となります。会社で働いている場合は、自信がない人には大切な仕事や責任は与えられないでしょう。もし経営者になったとしても自信のない経営者には、誰も案件をもってきてくれないでしょう。キャリアの世界では、何かをできるようになった時、その何かに持つものが謙虚さであって、自分を否定してしまうほどに、全てに謙虚になろうとする必要はないのです。何か自分に足らない部分があるからといって謙虚であっても自信を無くす必要はないのです。男性であれ女性であれ、人間は完璧な人などいないのですから。

最後に、子育てが後半に入っているお母さま方に応援の意味で新しいアイデアを差し上げます。今、東京をはじめ、日本各地で若者が次々とスタートアップとしてビジネスやNGOを立ち上げています。彼らがある程度の成長ステージに入った時、実は皆様のようなお母さまという子育て経験をしたような人たちの力が必要になります。事実、こうしたスタートアップの経営者たちは、カスタマーサクセス(顧客対応)や、総務的な社員対応(社員のモラルを向上するためのイベントを企画運営したり、プログラムを考えるような仕事)の分野に、皆さんのような子育てを終えてその経験を生かして細やかな人のケアができる、しかし細かなことをくよくよしない、そして若い人たちの気持ちのわかる人を求めています。これは、日本という社会の中で、女性のキャリアステージにとっては、初めて起きた大きな変化かもしれません。こうしたニーズが存在することを理解して、是非、社会のなかで楽しくキャリアを積む女性になっていただきたい、そう思っています。

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