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頭を傾けることのない高校生活を送れた

高2の息子が色気づいたか、毎朝、髪のセットに余念がない。
髪を濡らしたり、ドライヤーで形を作ったり、僕のワックスやジェルで整えたり、スプレーで固めたり。

洗面所の占有時間はなかなかのものだ。
今僕は在宅仕事だからいいが、ふつうに会社員やっていたら争奪戦が勃発していたかもしれない。

そういえば僕が色気づいたのは中3の頃だ。
前髪を9対1くらいに分け、9側は長めに伸ばして流し、1側は短く切るだけでなく耳周りを上まで大きく刈り込んだ。
研ナオコスタイルといえば通じるだろうか。

今でこそそんな中学生も珍しくはないだろう。
でも当時まだ神戸の公立中は男子全員丸刈りと決まっていた時代。
僕は神戸大附属中に通っていたから丸刈りの強制を免れていたのだ。
でもさすがに周囲を見渡しても研ナオコはいなかった。

そんなカットを母に頼んでいたが、毎回本当にこんなんで学校行くん?と言われていた。
大学生だった兄も、うちの弟おかしいねんと僕の写真を友達に見せたりしていたそうだ。

僕は天使の輪っかのサラッサラヘアで、いつも女子からいいなぁと羨ましがられていた。
しかし、おでこが丸い僕は前髪がすぐ貼りつくから、それが嫌でこのサラサラを恨んでもいた。
とくに体育や部活のあとは最悪だった。

だからセットは必須。
僕は毎夜、母のピンクのカーラーを内巻きにつけて寝た。
朝はドライヤーで髪を整え、父が使っていたよく分からない整髪料をつけ、最後はスプレーでホールドして完了。
なかなかに大変だった。

幸い父は毎朝早く出て行くから、洗面所争奪戦は一度も起きなかった。
しかし、父もどこかにこう書いていたかもしれない。
「中3の息子が色気づいたか、毎朝、髪のセットに余念がない」

僕の髪型はクラスでもおおむね好評で嬉しかった。
でも卒業前にクラス全員で交換した色紙に、一人だけ「(へんいち)君、頭傾いてるで」と書いた女子がいる。
前夜からの並々ならぬ努力の結果がそれかと愕然とした。
そらぁ9対1やもん、無意識に頭が傾いてまうよな…

春休みに入り、僕は何ごともなかったかのようにふつうの髪型に戻した。
頭を傾けることのない高校生活を送れたことに、僕はその痛烈な指摘をした女子に感謝している。

さて息子はどうなっていくかな。

(2023/6/2記)

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