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これ、クジラのたたきだ

なぜだか分からないが、クジラが食べたくなった。
周期的に訪れるクジラ欲。

子供の頃はクジラってもっと身近で、給食にクジラ竜田揚げがよく出ていたし、家でもサラシクジラの酢味噌和えは頻繁に食卓にあがっていた。
それがいつの頃からか、エセ環境保護運動の高まりで、クジラを食べるのは野蛮な行為とされるようになった。
給食から消え、食卓から消え、食文化から消えた。

反捕鯨の急先鋒・アメリカもかつては世界最大の捕鯨国であり、そもそもペリーが浦賀にやってきたのも捕鯨船の補給基地が欲しかったからだ。
それが100年ほどの間に態度を一変し、今や日本を名指しで批判する国になったのだから分からないものだ。
もしかすると、日本も100年後にはノルウェーやアイスランドといった捕鯨国を批判するようになるのかもしれない。

環境保護にも一定の意味は感じるが、こと捕鯨にまつわるそれは単なる政治的な思惑だ。
そうしたゲスな工作と、食文化という確たるアイデンティティを同レベルで論じるべきではないと僕は考えている。

で、アイスランドのミンククジラを買い求めた。

この赤身。
鯨肉は高タンパク低脂肪の代表といっていい。

ただ、獣臭は牛や豚などの家畜とは比べものにならないほどキツい。
このあたり、好き嫌いが大いに分かれるところだ。
うちにもクジラが得意でない人がいるので、ごく少量にした。

売られているのは刺身用のサク。
でも単に切って盛るだけではおもしろくない。
よし、ローストホエールにしよう。
ローストビーフでもなくローストポークでもなく、ローストホエール。

加熱はできるだけ控えめに。

脂身がほぼないので、身はしっかり硬め。
少しだけ火が通り過ぎたかもしれない。
危ない危ない、もう少しでパサパサになるところだった。
でも初めてにしてはまぁまぁではないか。

夏野菜の鶏つくね汁とともに。

うまいんだなぁ、これが。
しっかり食べて、夏を乗り切る。

でも、グレイビーソースを作るでもなくバルサミコソースを作るでもなく生姜醤油で食べたので、これ、クジラのたたきだ。

(2024/8/10記)

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