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昨日のブカティーニが、これまででいちばん旨かった

先日、ブカティーニを手に入れた話を書いた。
8年間探し続けてきた、穴開きロングパスタだ。

話は入手したところで終わっており、料理はまたのお楽しみとしていた。
最近ちょっとバタバタしていて、少し先のことになりそうだったからだ。

ところが昨日新鮮な小イワシが手に入ったので、急遽決行。
作りたかったのは、イワシのブカティーニだった。

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ブカティーニとはこんなパスタ。
スパゲッティよりやや太いくらいで、中心に穴が開いている。

太いパスタゆえ、濃厚なこってりしたソースと相性がよい。

イワシを手開きにして多めのオリーブオイルでソテー。

昔は焦ってすぐ裏返し、みごと無残に皮がペロンと剥がれたものだが、些細なことでは動じなくなった今、うまくソテーできるだろうか。

続いてソースを作る。
ごく少量のタマネギとニンニクをたっぷりのオリーブオイルで炒め、ホールトマトの水煮缶をごろっと入れて煮詰めてからトマトを崩す。

ソテーしたイワシは一部をトッピング用に残し、他はソースに入れて突き崩し、フレッシュバジル、鷹の爪、乾煎りした松の実をここで投入。

このイワシのソースを、タイミングよく茹で上げたブカティーニに絡める。
熱々のパスタと熱々のソースを絡めることで乳化が起き、パスタにソースが浸透するのだ。
タイミングを外すとソースの油が行き場を失い、ギトギトの食感となる。

ディルを散らして完成。

イワシのブカティーニ
Bucatini con Sardine(ブカティーニ・コン・サルディーネ)

太いブカティーニは濃厚なソースにも埋没しない。
ディルの爽やかな香りがイワシのクセを消し、すっきりと旨い。
やはり年の功か、イワシの皮は剥がれなかった。

ドンクのプティバタールをガーリックトーストにして添えた。

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イワシのブカティーニとの出会いは、故・澤口友之シェフのレシピだ。
義姉が六本木の澤口氏の店〈ラ・ゴーラ〉で催した結婚披露パーティーが、氏の魔法のように旨い料理の食べそめ。
折しも当時勤めていた出版社の雑誌編集部から澤口氏監修のパスタレシピブックが出て、そこにイワシのブカティーニが載っていたのだ。

これは運命と思い、何度も何度も作った。
最初の頃はイワシはボロボロになるし、トマトソースもちぐはぐだった。
さらにブカティーニは入手困難、探せどもなかなか見つからず、スパゲッティで代用してきたがまるで別料理だった。
それが先日、ついにブカティーニを8年越しで手に入れたのだ。

これまでに20回、いや30回は作っただろうか。
昨日のブカティーニが、これまででいちばん旨かった。

(2021/10/3記)

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