では気をつけて。東京、がんばれよ。
息子が大学の後期授業料免除申請を出さなくてはいけないという。
え? それってもう春に済ませたやつではない?
――6月に父さん無職になったやん? 状況変わってるから。
あ、はい。
ありがたいことに息子は大学入学以来ずっと授業料を免除されている。
僕が無職になってさらに免除は堅いのに、再申請がいるなんて面倒な。
書類を見ると、なぜ無職なのか前職からの経緯を詳しく書けという。
同じようなのを転職サービスへの登録で書いたばかりだから任せとけ!
「新しいことを始めるために退職を選び、現在いろいろと準備中…」
実際以上にポジティブなワードを並べて書いた。
――父さん、めっちゃ前向きやん、これ。
書き終えた書類を一瞥して息子が言う。
そやろ? これなら前職が合わず辞めたとは全然見えんやろ?
――いや、これは授業料免除申請には向いてない。
なんですと?
新しいことをやりたくて退職した、というのはよくないらしい。
子供が大学を出るまで我慢することもできんのかということになるようだ。
転職サービスへの登録なら、そういう前向きが受けるのにな…
結局何も盛らず、いやむしろ少しネガティブ気味に書き換えた。
息子に見せたら、これでいいとのこと。
会社を去って次を模索中という事実は一つなのに、転職サービスに登録したものと授業料免除申請に書いたものは天と地ほども違う。
なんだかなぁ。
***
その息子が東京へ帰っていった。
金沢、長野を経由してゆっくり帰るのだとか。
北陸は明日から災害警戒の予報が出ているが大丈夫だろうか。
昼ごはんはちょうど金沢に向かう特急サンダーバードの車内らしい。
隣がいたら弁当広げるのが恥ずかしいからパンでも買うと言う。
ネットで調べてみたら、隣どころか車内ガラ空きの模様。
それならと急いで弁当を作って持たせた。
鶏照り焼き丼弁当。
最初できた!と見せた時はネギと海苔がなく、娘にプッと笑われた。
時間ギリギリだったが、ネギと海苔を刻んで載せたら、らしくなった。
おぉ!市販品みたい!と自画自賛したら、次は息子にプッと笑われた。
では気をつけて。
東京、がんばれよ。
(2022/8/16記)
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