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せっかく美しい話と思って読んでいたのに

おかしな夢を見た。

ある村で僕に似た虹が出るという。
写真を見せてもらったら、たしかに僕の横顔そのものだ。
偶然その日の夕方、その虹が出た。
僕は、僕に似た虹をそっくり持ち帰った。

そこでいったん目が覚めた。
2時くらいだっただろうか。
夢かまことか判然とせぬまま、虹の話をnoteに書こうと思った。
そしてそのまま、また眠りに落ちた。

僕はその虹を大切にした。
僕に似てなくても、虹は明日への希望に思えるから。
虹を手元に置いておけるなんて素敵だと思った。
でも僕はやっぱりその虹が僕に似ているから大切にしたようだ。
金庫のような暗い箱の奥深くにしまい込んでその虹を守った。

夢の中で、いつしか虹は金の延べ棒に変わっていた。

僕はその金の延べ棒を、失われないよう損なわれないよう大切にした。
だって、世界にまたとない、僕に似た金の延べ棒だから。
今日も黄金色に光り輝いているだろうか。
そう思って久しぶりに箱から金の延べ棒を出してみた。
そこには僕の顔が映っていた。

目が覚めた。

村の皆の明日への希望をなぜ勝手に持ち帰ったのだろう。
なぜそれを自分すら見ることのできない暗い箱に押し込めたのだろう。

僕は何を後生大事に持っていたのか。
虹を?
希望を?
金の延べ棒を?
そこに映る自分を?

なんとも後味の悪い夢だった。
まるでせっかく美しい話と思って読んでいたのに…という小説ではないか。

昨日たしかに仕事で虹のイラストを描いた。
相続には預貯金より純金がいいという話も読んだ。
しかしよりによってそれらが夢に出て自分を問うなんて。

時計は4時を指していた。
まだもう一度眠ってもいい時間だ。
でも僕は怖くてそれ以上眠ることはできなかった。

(2023/5/28記)

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