見出し画像

いや、あえて10時に差してみようか

先日眼科でドライアイと診断され、目薬を処方された。
1日5回、なるべく等間隔で差せ、との指示だ。
必ず起きているだろう時間から次の予定を立てた。
7:00→11:00→15:00→19:00→23:00

その数日後、耳鼻科でアレルギー性鼻炎かもと、別の目薬を処方された。
あれこれ差すのは面倒だから、眼科の目薬もあるのでと断ったが、差し支えありませんと即答された。
まぁいっしょに差していいならと思ったら、こちらは1日4回、眼科の目薬とはなるべく時間を離して、との指示。
ほら、それいっちゃんめんどいやつやん。
となると、こうしかない。
9:00→13:00→17:00→21:00

結果、7:00から始まって23:00まで2時間おきに、僕の目には眼科と耳鼻科が交互に訪れることになった。

父はとてつもなく几帳面な性格をしている。
よく言えば、だ。
言葉を選ばなければ、神経質というほうが正しい。

決まった時間きっかりに、決まったことをかっちりとやりたい人。
きっかり、かっちり――いかにもこの硬そうな音の言葉が似合う人だ。

若くして目を悪くした父は、数種類もの目薬を併用している。
父は、○時○分にこれ、△時△分にこれと紙に書いて手元に置き、それに従って○時○分にそれ、△時△分にそれを差す。

たとえばトイレに行って、その時間を逃したとする。
たとえ5分であっても、そうなったら父的には結構大変な事態だ。
次に差す別の目薬との間隔が狭まることを恐れ、後続の目薬予定がすべて5分遅れで再調整される。
JRの運転司令室に勤務するといいかもしれない。
そして車掌はこうお詫びをするのだ。
「え、ただいま先行目薬が5分ほど遅れており、この目薬も5分遅れての点眼となります。お客様にはお急ぎのところ大変申し訳ありませんが…」
えっと、何の話だっけ。

父は先日しばらく入院したが、もちろん薬類はすべて病院の管理下に置かれるため、目薬も自分の意思で差せなくなって、さぁ大変。
看護師は○時○分を気にはかけてくれるが、父専属ではない。
他の患者との兼ね合いもあり、○時○分はときに○時◎分になったりする。
父の手元の紙では遅れ時間が再調整されるが、看護師はそれを知らない。
そして父はあれこれと悶着を起こした。

そんな父の頑なな性分を見て、なんとも大変な生きづらさを感じてきた。
もっと柔軟に対処できるすべを身につけなければと反面教師にもしてきた。

あ、そろそろ9時の目薬の時間。
いや、あえて10時に差してみようか。

(2023/1/29記)

サポートなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!