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モーターの焼けるニオイが懐かしい

山陽電車。
この名を聞くだけでとてつもないノスタルジーに包まれるのは、昔、神戸の西の端っこに暮らしたからだろう。

山陽電車は、神戸と姫路を結ぶ鉄道会社だ。
東端はそのまま阪急電車、阪神電車とつながっていて、大阪まで直通する。

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鉄道会社が協力し合いほぼ全路線が相互直通している関東と違い、関西は我が強すぎて相互直通は数例しかなく、この山陽と阪急・阪神は稀といえる。

神戸に本社があり、海沿いを走るので愛称は「シーサイドエクスプレス」。
…と聞いて連想されるイメージと実際はちょっと違って、とてもローカル。
普通はたったの3両編成だし、特急も6両編成。
その特急にしても、阪神電車に直通するため6両編成となったが、無理やりなので、駅によってはホームが足りなくて扉の開かない車両もある。

小学生の頃、下の写真で左の車両が来たらかっこよくてアタリ、右の車両が来たらダサくてハズレと思っていた。

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今なら右がかわいくてアタリと思うだろうけど、残念ながらそう思うようになった頃にはもう見かけなくなっていた。
昔の大人がかわいいと思いながら右のに乗っていたなら羨ましい限りだ。

高架になる前の懐かしい旧・明石駅。
小4までこのかわいらしい駅を使っていた。

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この駅舎には山陽電車直営の立ち食いそば屋「山陽そば」があって、夏の学校帰りに火照った僕はよく店に侵入してセルフの冷水だけ飲んで逃げた。
店のおばちゃんの「またあんたか! 附小やな? 学校にゆうとくで!」のがなり声を背に浴びながら店を飛び出す毎日だったが、学校で説教食らうことはなく、おばちゃんの優しさがよけいに水をおいしくさせた。

小学校の遠足で潮干狩りとなれば、山陽電車を借り切って出かけたものだ。
山陽電車沿線は潮干狩り場の宝庫なのだ。
行き先を示す方向幕に「貸切」と出た電車に乗るのは嬉しかった。
そういえば昔は貸切をよく見かけたし、国鉄では「修学旅行」と表示されたのもちらほらあった気がするが、最近の過密ダイヤでは走らせる隙がない。

山陽電車は小1~小4、高1~高3で使った。
それ以来あんまり乗ることもなくなったから、自分の中ではコトコト走る無骨な車両しか印象に残っていないが、最新車両はこんなの。

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(掲載写真すべて©山陽電気鉄道)

お! かっこいい!
でも、なんか違うんよなぁ。
こんな洗練された都会チックな車両は東京あたりが似合うかもしれない。

冷房のない車内に充満する油のニオイ、ここぞで加速した後のモーターの焼けるニオイが懐かしい。

(2021/6/5記)

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