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YES! 高○クリニックじゃないよ Ceiling Painting/Yes Painting by YOKO ONO

本日2月15日から、イギリスロンドンにある近現代美術館「テート・モダン」で、ヨーコ・オノの70年に渡る活動を振り返る回顧展「Yoko Ono MUSIC OF THE MIND」が開催されるようです(BSのフランスニュース番組で紹介されてたので知った。どんだけ又聞き状態なんだかw)。

今週末の18日で彼女も91歳の誕生日を迎えるそう。
(ジョンが亡くなったのが1980年。40年以上も前。彼女は当時で50歳近い年齢だったんですね。ショーンを産んだのも随分高齢出産だったんだ)

開催期間は9月1日まで。

いろいろと参加型のアートがあるのが楽しそうです。
真っ白な部屋に真っ白な難民ボート。そこに観覧者が好きにメッセージを書き込む。黒い鞄と言われる布に包まれてみる。釘を壁に打ち付けるなどなど…。

ウクライナ、ガザと各地で戦争が続いている中、長年平和を訴え続けてきた彼女の回顧展を企画する。このキュレーターの方々の企画力と意識の高さ、現実問題に向き合う姿勢、素晴らしいと思います。今こそ彼女のアートが人々に訴えかける力が最大化される時期ですもんね。

SNSでビートルズとヨーコ・オノ関連の動画とか観てみると、未だに彼女に対する罵詈雑言、誹謗中傷で溢れていて陰鬱な気分になります。
このある種の「魔女」としてのブランディング。当時ビートルズを愛したファンだけでなく、その後の世代にも受け継がれているようで、世界中からヘイトを向けられる彼女がそれをどう処理しているのか、非常に興味があります。

毅然として全く相手にしない、自分の世界に干渉させないように努めているのか?
多少は影響されてネガティブに落ち込むこともあるけど、何か上手い解消法を持っているのか?
それとも根本的にそういう部分の感度が低い人物なのか?

ネット、SNSの発達で、誹謗中傷で溢れる世の中。
それによって人を死に追い詰めることが頻繁にニュースになっている。
40年前、50年前とは違い、ダイレクトに誹謗中傷に触れてしまう機会も増えてしまった…。
世界中から嫌われることをどうやって乗り越えて91歳まで生きてきたのか?もっと日本のメディアも彼女に話を訊きに行って、何かしらの生き抜くヒントを教えて貰ってもいいと思うんですけどね。

彼女はこんな曲「Yes, I’m A Witch」も出してます。

「そうよ、私は魔女よ!でも何を言われようが気にしないわ!」
って感じの歌詞で、ヘイトをする人たちへのなかなか挑戦的な曲。
でも歌詞を見てみると、恨みつらみを歌っているのでなく、復讐なんてしないと言い、後半は抑圧されている人々への応援歌のようになっている。
(途中にバックで流れる「ウェ~」みたいな囁き声が面白くて笑っちゃったwww)

歌詞はコチラ


勿論、彼女のことを実際に知ってるわけではないですし、メディアに伝えられてるイメージに影響されて彼女のことを捉えてる自分がいるのは事実。
実際は本当に付き合いたくないな~という人物の可能性もある。ジョンとの付き合い初めは不倫みたいだし、妻シンシアのバスローブ着ていたという話とかはちょっと引くし…。

でも、ジョンが彼女と出会った時のエピソード、そのきっかけになった彼女の作品はやっぱり素晴らしいと思うんですよね。

1966年、ロンドンのインディカ・ギャラリー
「Unfinished Paintings 未完成の絵画とオブジェ」という彼女の個展を訪れたジョン。
そんな彼が彼女に興味を持ったきっかけになったのが「Ceiling Painting/Yes Painting 天井の絵」という作品。

脚立を登った先、天井を虫眼鏡で探すと「YES」と小さい文字が書かれているというもの。

その時のジョンの感想。
「もし"No"とか『インチキ』みたいな意地の悪い言葉が書かれていたら、すぐに画廊を出て行ったよ。でも"YES"だったから僕は『これはいけるぞ、心温まる気持ちにさせてくれる初めての美術展だ』と思ったんだ」

この感想は以前にもどこかで読んだ覚えがあったのですが、インチキみたいな意地の悪い言葉ってなんだろう?と今回思ったので原文を調べてみたら…

"climbed the ladder, looked through the spyglass, and in tiny little letters it said 'yes'...So it was positive. I felt relieved. It’s a great relief when you get up the ladder and you look through the spyglass and it doesn’t say ‘no’ or ‘fuck you’ or something, it said ‘yes’."

「Fuck You」と書かれていたら…ということだったwww
そりゃ、そんなこと書かれていたら超ムカつきますよね😅
でも当時のアバンギャルドの作風ではそういうのが多かったらしいです。
時代的にはポストモダンの頃でしょうか?尖ってる俺たちカッコいいぜ的な風潮だったのでしょうかね?ビートルズによるロックが世界を席巻していた時期、そういう逆張り的な芸術家風情もわんさかいた時に、この作品に出会ったら…確かに嬉しくなるというか、パッと心が光で照らされるような感じになるんじゃないかな?

作品についてのヨーコ・オノの説明はこんな感じ。
Ceiling Painting/Yes Painting has been described by Ono as being representative of a journey towards hope and affirmation from pain. The difficulty in attaining hope and affirmation has been likened by Ono to the intimidating stature of a cathedral.
(痛みからの希望と肯定に向かう旅路を表現している。希望と肯定を得ることの難しさを大聖堂の威圧的な高さになぞらえている)
この作品の前に夫だか恋人だかとの別れがあったそうです。

ここではHopeとAffirmation 希望と肯定と書かれていますが、私はこれ、「Hope」と書かれてなくて「YES」と書かれていて本当に正解だと感じるんですよね。希望という言葉、皆さんは素敵に響きますか?私はいろんなところで使いまくられ、そうそう希望のない現実世界を長年見てきたら、もうそう簡単に心に響かない安っぽい言葉に感じられて、ちょっと苦手だと思う自分もいるんです。だからHOPEじゃなくてよかった、私がジョン・レノンだったら、HOPEと書かれていてもさほど感動せずに、なんかカッコつけたPretenciousな作品だなと思って評価は低いまま会場を後にしたと思う。

「HOPE」じゃなくて「LOVE」とかも書かれそうな言葉。でも「LOVE」も違うんだな~。「LOVE」も「HOPE」同様使い回され過ぎて、安っぽくなってる。人に寄ったら「何がLOVEだよ、ケッ!」ってイラつかせかねない言葉だと思う。だからホント「YES」が正解、「YES」でヨカッタと思います。

威圧的な大聖堂の高さ…ここは神との距離を意味してると思うわけで、この天井に書かれているというのは、天井=天国、つまり神に近づこうとして、神からの「YES」という肯定の言葉を与えられることだと捉えられる気がします。

そして「YES」が小さい文字で書かれていて、それを虫眼鏡で探すという。
現実の距離感、つまり目と天井の間の数十センチを「小さい文字」&「虫眼鏡」というもので物凄く大きい距離感(=天国までの距離)のように錯覚させる発想もスゴイし、その神からの肯定メッセージも、虫眼鏡でやっと見つけられるほど、そう簡単には見つけられない=探すというワンクッション、手間、苦労も必要という意味も込められている。

この脚立という、ちょっと不安定なものに登るというのも、人間の、人生の、世界の不安定さを表しているようにも思えます。その中で見つける肯定。吊り橋効果じゃないけどポジティブな感情が増幅される装置のようでもある。

人間にとって「自己の存在意義」というのは永遠のテーマ。
そこで親からの愛を求めて彷徨う人もいれば、他人に見出そうとして依存する人もいる。
でも究極的には神というか、地球というか、世界から存在を肯定されてると思えることって物凄い救いになる気がします。

私も「何で生まれてきたんだろう?死にたいな…」とか考えることいっぱいあったし、いまだに「何で生きているんだろう…?」とか考えてしまいます。

でも今から数十年前、海外の巡礼道を歩いていた時の、ある山越えの日。
足にも靴擦れ&マメができ、膝も痛くなり、疲労もたまり、満身創痍で山の稜線に出た時、そこに斜面いっぱいの黄色いお花畑が広がっていました。

春の暖かい陽光と、花と緑から立ち上がる香りにも包まれた。

いままで自分のことを否定し続けてきた自分だけど、その時ふと漠然と、神様(キリストとか特定の神というより大きな超越した力的なもの)に存在を肯定されたような感覚になったんですよね。世界の、自然の美しさ、生命の輝き、一生懸命咲き誇る小さい花々。自分の周りのもの全てが自分の存在を肯定し祝福してくれているかのような感覚。地球という生命体から、そこに生きる他の生き物たちから、同じ生きる仲間のひとつとして存在を肯定された感覚。

この体験で、その後ガラッと肯定的に生きられていればいいのですが、現実世界に戻ってくるとまたネガティブ感情に囚われては苦しむことになるのですが、それでも、この体験、一瞬でも肯定感を持てたというのはもの凄く重要な体験だったと思っています。これを追体験するために、時々登山に行く。特に花が咲き乱れる山に登るのが極上の喜びです。

この簡単には辿りつけない天国のような空間で得る自己存在の肯定感…ヨーコ・オノによる「Ceiling Painting/Yes Painting 天井の絵」にもそれと同じメッセージが込められている気がするし、それを脚立と虫眼鏡と天井の小さな文字で表現するアイデア、ただただ素晴らしいと尊敬してしまいます。

この作品が今回の回顧展で展示されているのか?
Xのポストで載せていた方がいたと思ったんだけど、今探したら発見できず。あるかどうか探しに訪れてみるのもイイかもです。機会がある方は是非!!

ちなみに入場料は£22。日本円、今日のレートで4,151.91 円
流石ロンドンの美術館、お高いですね~😅。

私はちょっと機会が無さそうなので、日本にやってくることがあれば行ってみたいな~と。

ビートルズの本国イギリスで開催されるYOKO ONO展。
少しでも彼女に対するヘイトがなくなり、アーティスト ヨーコ・オノの再評価につながるといいな~と願うばかり。

WORLD PEACE!!!

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