猫がつないでくれたご縁:路上生活者との出会い

 今日は天気がよく、長田のル・ジャルダン(ケーキで有名。ランチもおいしい)で豪勢なランチをとり、気分もよかったので、荒本のクリエイション・コア(東大阪市を中心とする大阪のものづくりの展示室もある大阪府の施設)に寄り、その足でイオンモールのコムサイズムで部屋着を買い......と寄り道をしつつ、ようやく16時頃に帰宅した。本当は昼寝がしたかったが、15時以降に眠ると夜入眠しづらくなるとカウンセラーに言われたので、諦めて、眠気覚ましに近所の公園に足を運ぶことにした。

 うちのベランダからも見える公園は、遊具は少ないものの、クローバーがたくさん生え、子どもがクローバーの花飾りを作ったりする、平和な公園だ。ただ今日の16時は人出がなくさびしかったので、そこから隣の公園まで足を伸ばしてみることにした。

 隣の公園は遊具も充実しており、バスケットゴールもあり、球技もOKなので、子どもがたくさん遊んでいた。最寄りの公園は危険な球技(サッカー、野球、ゴルフ等)禁止なので、雲泥の差である。活気のある隣の公園で、私もブランコやすべり台をひとしきり堪能した後、併設の野球のグラウンドを見に行ったところ、一人の路上生活者が通行人を話し込んでいることに気付いた。

 もう散々寄り道をしたので、路上生活者には話しかけず、トイレで用を済ませて帰宅するつもりであった。しかし、彼が飼うオス猫「まめ」さんのかわいさにやられた。足を止めて、「にゃーにゃー」と猫の鳴き真似をして呼び寄せようとしているうちに、いつの間にか路上生活者との距離が縮まていた。「まめ」という名前も教えてくれた。

 それから結局1時間、いろいろお話をした。私はいま大学の遠隔授業の準備で頭がいっぱいで、彼と40分余、話し込んで、打ち解けたと思ってしまい、つい「インタビューさせてもらえませんか。大学生にホームレスの実態について伝えたいので」と切り出してしまった。すると、彼はにわかに顔を曇らせ、「こんな恥ずかしい生活をしていることは知られたくない」と早口で答えた。気まずい空気が流れた。

 彼から教わったことはたくさんあったが、特に肝に銘じたいことは、非当事者が「路上生活も生き方の一つで恥ずかしがる必要はない」というのはたやすいが、当事者はどうしても恥の意識を抱えていることを理解できずに、研究者の上から目線でインタビューを切り出したことの暴力である。

 因みに10万円の特別給付金は受け取らないそうだ。給付金受給のために住民票を得るのが困難なためだ。青森県西目屋村のように、ホームレスにも現金10万円を手渡しすることはできないのだろうか。そう路上生活者に話すと、「周囲の住民から、勝手に公共の場に住んでいるくせに、10万円ももらうとは許せないと、批判されるのがこわい」と返された。

 特別給付金はマイナンバーカードをもとに個人宛に支給する、そしてマイナンバーカードの要件に住民票の有無を外す、「全ての人間」に発行するカードにする、そういう「当たり前の国」に日本社会にせねばならないと切に思った。

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