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違うけれど、違うから愛おしい ―『グアテマラの弟』―

片桐はいりさんが、グアテマラに住む弟さんを訪ねた日々のことを中心に綴ったエッセイ。

異なる文化に出会う時「そんなもんなんじゃない?」とさらりと言えてしまう弟さんと、「なんで?どうして?」とアンテナが敏感に立つはいりさん。たしかに違うのだけれどどこか通じ合っている感じのする、とても素敵な姉弟だ。

この本を読んでいると、グアテマラの街並み、人々の息遣いに自ずと吸い込まれてゆく。著者と同じ空間に第三者としているような気分になる本はよくあるが、この本はちょっと違う気がする。
はいりさんに乗り移ってその瞳から風景をみているような、弟さんやそのご家族、街の人々を見つめているような、そんな気持ちになるのだ。
「グラシアス!グラシアス!むちゃむちゃグラシアス!!」とはいりさんと一緒に叫んでしまいたくなる場面もあれば、「ポコアポコ、ポコアポコ (少しずつ、少しずつ)」と一緒に唱えて落ち着きたくなる場面もある。

お腹が痛くなるような笑いも、家族だからこそちくっとするような痛みも、寂しくないけれど寂しい時に流れる涙も。生きる中で育まれる色とりどりの感情が、ありのままの言葉で彩られている。

はいりさんになって読んでも良し、弟さんになって読んでも良し、はたまたグアテマラの人になって読んでも良し。
どんな登場人物の視点で読んでもその感情を共に噛みしめることができる、人間くさくて生温かい、大好きなエッセイだ。




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