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上からの傾聴だけではなく、下からの傾聴も

1 哀悼の念

 少し遅くなりましたが、稲盛和夫翁が、お亡くなりになられました。

 誠に謹んで、哀悼の念をここに示します。

2 上からの傾聴

 さて、様々な時代に国家や民族においても、政治や経営等で、人民や労働者の大きな苦悩や不安等の一つは、「上の人々が、ちゃんと下である私達のことを考えてくれたり、働いたりしてくれるのだろうか?」でしょう。いわゆる、「上からの傾聴」は、善き政治や経営等にとって、極めて重要不可欠な徳行の一つであり、また、民主主義や自由主義の大本の一つでもあります。

 そのことが説かれている名著の一部を、以下の通り、ご紹介させて頂きます。

2.1 書経

 古くは「書」といい、漢代以後に「尚書」と呼ばれ、『書経』と言われるようになったのは宋代といわれる。『書経』は虞書(ぐしょ)・夏書(かしょ)・商書(しょうしょ)・周書(しゅうしょ)など、唐虞三代にわたる政道の記録であり、中国最古の文献に属する。編者は孔子とも伝えられ、歴代の名君、賢者が残した語録集であり、中国における政治文化の発生と理想を語る好資料として、古来帝王学の必読経典となった。

2.2 貞観政要・帝範

貞観政要は唐の呉兢の撰、全10巻。世界史上に輝く唐代文化を基礎づけた太宗の実録と群臣との対話を収めたもの。東洋の政治と文化を知る上で必読の書。わが国でも中世以後の武家社会で重んじられ、軍記物語などにも多く引用されている。

2.2 ティルックラル

南インドのタミル地方で,今もなお誰もが口にする1300余の箴言。6世紀頃につくられ,法・財・愛をテーマにインド的思考を結晶させた聖なる短詩(ティルックラル)を,詳細な注釈で読み解く。

3 下からの傾聴

 さて、政治や経営等で、人民や労働者の大きな課題や挑戦等の一つは、「上古からの遺徳を確りと傾聴すること」でしょう。いわゆる、「下からの傾聴」もまた、善き政治や経営等にとって、極めて重要不可欠な徳行の一つであり、また、民主主義や自由主義の大本の一つでもあるのです。

 まず何よりも、自分自身の心身の状態を傾聴するべきでしょう。

 特に、ストレスの理解に管理や調節等は、極めて重要です。

 徳を誠に善く確りと修めることで、傾聴力が向上することでしょう。

 そして、経営者が哲学や思想を学ぶべきであるのであれば、労働者も然りでしょう。

 民主主義や自由主義の醍醐味は、「享受」や「受動」ではなく「追求」や「能動」でしょう。今の時代、「享受」や「受動」にいつまでも走り過ぎて、「追求」や「能動」が寡少になり過ぎているのでしょう。

4 拙作『根性』

 以上のことに関連するように、今現在、執筆中の拙作『根性』に、以下のような話を著述しました。

 正月が終わり、ミンとズンは登校と出勤を再開した。そして一月のある日、終業後に二人はカフェで夕食を取ることにした。そしてカフェで偶然、野々村と出会い、そのまま、三人で会食することとなった。
野々村「いやあ、オムレツカレーは本当に美味しいなあ!」
ミン「本当にその通りです!カレーライスやオムライス等、日本の食文化は、独創性と多様性に富んだものですね!」

ズン「このような素晴らしい食文化のように、創意工夫は、どうしたら出来るのでしょうか、野々村さん?」
野々村「うむ、そうだな…僕も、しがない研究者・開発者・薬剤師・実業家だけど、『静かな忙しさ・健やかな疲労・安らかな奮闘』、この三事を大切にしているね。そして僕は、この三事を以て、創意工夫し続けているかな。」

ミン「おお、『静かな忙しさ』…『騒がしい忙しさ』はすぐに分かるのですが、『静かな忙しさ』は想像もつかないです…どういう忙しさでしょうか?」
野々村「『衆賢茅茹』と言う言葉があるように、確かに、皆で協力し合っては、学び教わって、事を成すことは、集団・組織・社会の醍醐味だけど、それもまた、各個人の力があってこそ成立するものだよ。そして個人の強さや賢さに力等は、独立心や向上心、自主性や主体性、そして孤独等から生じては育つものだよ。だからこそ、独りになって、あれこれ学び問うては、あれこれ苦しみ悩んで、あれこれ挑み闘うのが、大切なことだよ。」
ズン「なるほど、『静かな忙しさ』とは、懸命な独学のことですね!」

野々村「うん、その通りだよ。さて、次に、本当に世の中は、健康の大切さを忘れ続けるものだ。国は人に無理強いさせ、人は体に無理強いさせ、体は心を無理強いさせ、そして、心は体を麻痺させ、体は人に隷属し、人は国に生き殺しにされる。こんな惨状にならないために、確りと健康を大切にしないといけないよ。
 本来、体操であれ勉強であれ娯楽であれ、適度な疲労があれば、その回復中に、知識や経験の蓄積・習慣や技能の獲得・成長や進歩の糧等になるんだよ。でも、過度な疲労・終わらずに続く疲労・一向に回復しない疲労等は、極めて危険だ。だからこそ、健やかに疲れることが、大切なことだよ。」
ミン「『ストレスに弱い』のは、必ずしも不利なことではなく、『ストレスに強い』のは、必ずしも有利なことではないのですね。」
ズン「自分自身の不快感や嫌悪感に、苦痛や苦悩等に確りと関心や理解を持つのは、本当に大切ってことですよね!」

野々村「そうそう、全く以てその通りだよ!自分の弱さは、時に自分を助け救い出すものになり、自分の強さは、時に自分を麻痺させては堕落させるものになるからね
 さて、そしてだからこそ、『安らかな奮闘』が大切なんだよ!自分の弱さを克服するのには、極力、激しさではなく、安らぎを以て、着実に克服し続けていくことが大切であり、自分の強さを向上させるのには、極力、緩慢さではなく、奮闘を以て、確りと向上させ続けていくことが大切なんだよ。
 世の中は総じて、自身には甘くして、他人には厳しくしたり、他人には強制して、自身はせず、また、他人には厳禁して、自身は好き放題をするものだよ。だから、自分の弱さを、安らぎを以て着実に克服し続けていくことで、その難しさを知りつつ克服し、こうして、他人に厳しくも優しくなるようになり、そして、自分の強さを、奮闘を以て確りと向上させ続けていくことで、その大切さを知りつつ向上させ、こうして、自分自身に優しくも厳しくなるようになり、そして、他人の善き厳しさを善く受け容れることも出来るようになるものだね。」

ミン「野々村さんは、三徳を兼備しておられますから、成功するのも当然でしょうね。静かな忙しさを以て知を得、健やかな疲労を以て仁を成し、安らかな奮闘を以て勇を行っていらっしゃるのですから。」
野々村「アハハ、本当にそうであるように、僕は毎日毎日、確りと努力し続けているよ。知れば知る程、悩みは多く深くなり、愛すれば愛する程、苦しみは多く深くなり、勇めば勇む程、難しさは多く深くなるものだよ。でもね、悩み・苦しみ・難しさ等が、創意工夫の力となるんだよ。そして、知れば知る程、創意工夫の必要性や重要性等を得られ、愛すれば愛する程、創意工夫の喜楽や幸福等を得られ、勇めば勇む程、創意工夫の道を得られるものだよ。」

 以上は、三徳(知・仁・勇)と認知科学に基づいた対話です。

MITが編纂した認知科学の事典。認知科学を構成する主要分野、哲学、心理学、神経科学、計算論的知能、言語学、文化・認知・進化の中から470項目を厳選し、それぞれの方法論および理論を第一級の研究者が記述する。

 皆さんの何らかの善き参考になれば幸いです。ちなみに、オムライス、美味しいですよね?(写真の出典:十六雑穀オムライス&ドリア専門店 おむらいす亭 ゆめタウン大牟田店 - 新栄町/オムライス | 食べログ (tabelog.com)

5 結語

 いずれ、自分も経営哲学を研究します。数多くの先哲の遺徳を確りと学ばせて頂きます。稲盛和夫翁もまた、その先哲達の中の御一人です。

二つの世界的大企業、京セラとKDDIを創業し、JALを再生に導いた
「経営のカリスマ」、稲盛和夫氏が本当に大切にしていたこととは?
『稲盛和夫経営講演選集』とは、稲盛和夫氏による、
1970年代から2010年代(現代)に至る膨大な講演録の中から
選び抜かれた、珠玉の講演集。
このシリーズの特徴
1)読みやすく臨場感あふれる講演録
2)未発表講演を多数収録
3)テーマ別の構成で、稲盛経営を体系的に理解できる
第1巻『技術開発に賭ける』第2巻『私心なき経営哲学』
第3巻『成長発展の経営戦略』第4巻『繁栄する企業の経営手法』
第5巻『リーダーのあるべき姿』第6巻『企業経営の要諦』
4)各講演をわかりやすくまとめた「要点」を収録

ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。