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『西洋人との結婚に関する産業的状況』④(作者:ヴー・チョン・フン、1930年代ベトナムのルポルタージュ)
第四章 枝迎南北鳥 葉送往来風
その木製の邸宅を二部屋に区切るものが、壁でもなければ、漆喰でもなく、また竹で作られているとはしても、それは粗末な柵に過ぎず、その柵が部屋と部屋の境目に半分置かれているだけで、もう半分にはあけっぴろげになるのを防ぐために、簾が引っかけてあるだけであれば、これこそまさしく〈近所〉と呼べる間柄なのだろう。ここの主人である女は簾に数枚、ハンボー通りを描いた絵とその両
『西洋人との結婚に関する産業的状況』③(作者:ヴー・チョン・フン、1930年代ベトナムのルポルタージュ)
第三章 お前は俺のことを夫として認めたくないのか?
真っ暗な空に汚い道路、これが・・・夜十時の〈厩〉の裏手から見える風景である。私は冒険者であるかのように辺りを散策してみた。危険の尽きない冒険だ。目の前にはただ暗闇ばかりが広がっている。時々、靴が水たまりの上を打ち、飛沫の音が響いた。どこか家先でコツコツとタイルの上を蹄が打つ音がする。さらに耳には馬のいななきも聞こえてきた。その馬は涎を垂らし
『西洋人との結婚に関する産業的状況』②(作者:ヴー・チョン・フン、1930年代ベトナムのルポルタージュ)
第二章 妻、側室らを非難すること
その男とは知り合いになったばかりなのではある。だが、すっかり昔からの友人になってしまい、ドゥブル・マグナム を二本半開けた時には、彼は非常に多くのことを語ってくれていた。酒は血を温める。温まった血は人に愛情を考えさせる。ただし愛情はいつも人を必ず苦しめる。目の前でオピウム台に寝そべっているこの男は、私と何も変わらない凡人のような所作をしていたが、れっきとしたケ
『西洋人との結婚に関する産業的状況』①(作者:ヴー・チョン・フン、1930年代ベトナムのルポルタージュ)
第一章 頭と耳
喫茶店の老婆は震え出した・・・。
自らよりも体力の優れた者の出鱈目な激しい怒りを前にして、私はすぐさまに立ち上がり、守勢を保つために何歩か退かなければならなかった。臆病な話し方を徹したのも、そうしておけば、易々と口を割られることもなかろうと思ったからである。またさらに怯えた様子で屈服し、ただ譲歩するような姿勢を続けたのも、この私の守りを固めた体制が相手側にさらなる油を注ぐこと
『西洋人との結婚に関する産業的状況』(1930年代ベトナムのルポルタージュ)を掲載するに当たって
ベトナム文学研究者である川口健一氏は、本記事のタイトル『Kỹ nghệ lấy Tây』を『西洋人と結婚する技術』と訳した。たしかに、この記事の中では、多くの女性が西洋人男性を手玉に取る、そんな場面がいくつか見られるが、その話題が記事の全体を占めているわけではないため、『西洋人と結婚する技術』と訳するのは、少々内容との齟齬が出てくるように思われる。そのため、大家に歯向かうようで恐縮ではあるのだが
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