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白昼夢

まだ梅雨時の週末、次女と2人で車に乗って外出しました。一通り買い物を終えて帰路に着く頃には雨も上がって太陽が照り付けていました。

マンションの駐車場に車を入れようとしてバックミラーを見ると、開いた傘が置いてあるのが見えます。私が借りている駐車場は、他の住人が車を置いている大きな駐車場とは違う場所にあります。マンションのエントランスと隣家に挟まれた狭い空間で、車1台分だけ空いた場所に駐車場が作られているので前面以外の三方はフェンスと植え込みに囲まれています。そこだけ時間が止まったある意味非日常空間で、その場所に立ち入ることができるのは借りている私と同乗者だけです。この辺は車が1家族につき1台の家が多く、そのためファミリーカーなどの大きな車に乗っている人がほとんどです。でもこの駐車場は狭いので大きな車を入れることはできません。それに対して私の車は軽四なので入れることが可能です。この場所は、私だけのスペースなのです。

話がそれましたが、バックミラーから見える駐車場の地面に広げた傘が置いてあります。車がいなくて空いていたので晴れ間に近所の人が傘を干しているのでしょう。この場所は三方を囲まれているので風が吹いて飛ばされることもなさそうです。傘をそのまま車止めの後ろまでずらして駐車しました。傘はそのうち持ち主が現れて持ち帰ることでしょう。


次に駐車場へ行ったときは雨でした。まだ傘はそこにあって、開いたままひっくり返って中がずぶ濡れになっていたので閉じてフェンスに引っ掛けておきました。傘は持ち手が水色で、ビニール傘を少し良くした感じの白の半透明に水色で模様が入っています。

あの日、家に入ってから家族に「駐車場に誰かが傘を置いていってさ〜」なんて話していたけど、それ以来ずっと何かが引っかかっています。
「あ、あれ私の傘じゃね?」
普段私が使っている傘も同じように持ち手が水色で、白の半透明に水色の模様が入っています。私は自家用車で動くことがほとんどなので傘を使うことはあまりなく、どんな模様が入っているのかも覚えていません。そういえば数日前、雨の日に出かけたときに車へ傘を持っていきました。そのまま降ろすのを忘れていた傘が、後日車を使用したときに何かのはずみで落ちて開いてしまったのかもしれません。そうなるとつじつまは合ってきます。

帰宅後玄関へ行ったときに傘立ての中をのぞいてみました。水色の傘は入っています。駐車場にあった傘とは同じような配色ですが、模様はぜんぜん違います。やっぱり誰かが置いて行った?


梅雨が明け、セミがうるさく鳴くようになった今も相変わらず傘は駐車場のフェンスに掛かったままです。でも毎回それを見るたびに思うのです。
「この模様、使っていた気がする」
日に日にその思いは強くなります。でも私の記憶では、これまでに水色の傘を持っていたのは今の1本だけ。その前の傘はピンクだったし、今の傘を使うようになってから引っ越しをしているので今さらこんなところで昔の傘が出てくるのはおかしい。でも玄関にある傘よりも駐車場の傘の模様の方に懐かしさを感じる…。


結局それが何だったのかは今もわかっていません。もし持ち主が現れたときのために傘は今でも駐車場のフェンスに引っ掛けたままです。

この柄の傘を使っていたと言う認識はあるのに、そのような傘を持っていた事実はない。でも私の記憶違いで忘れているだけなのか。それにしたってこのタイミングにこの場所でそれが出てくるのはおかしい。これは一体…。

人は、その時々で違うパラレルワールドを生きていると言います。普段一緒にいる相手でもじつは波動の違う、別のパラレルワールドにいたりするようです。もしかすると、パラレルワールドを移動する時に「いつかのどこかの私が使っていた傘」だけが何かの拍子に紛れ込んできたのかなと考えています。

これは、夏の日の夢なのでしょうか。


未来はいつも面白い!