「雪月花 水の情景・月の風景」~皇居三の丸尚蔵館~
少し前に、皇居三の丸尚蔵館の展示のことを知りました。
チラシには大好きな上村松園が使われていて、なんだろう、見たい・・・と思いました。
そもそも皇居三の丸尚蔵館って?
知らなかったのです、皇室に代々受け継がれた美術品が国に寄贈され、保存・研究、公開を目的とした場所があることを。
というわけで初めて行ってまいりました。
ひさしぶりの皇居!
大手町で降りて、大手門から東御苑に入ります。
門を入ってすぐ、旧江戸城三の丸の地に建設されたので「三の丸尚蔵館」があります。
尚蔵とは、「古代律令制において蔵司の長官「くらのかみ」をさし、大切に保管するという意味を持」つそうです(パンフレットより)。
「花鳥風月 水の情景・月の風景」という、日本の風景・自然をモチーフとした絵画や工芸の展示です。
展示品はすべて素晴らしかったのですが、特に好きだったものをいくつか。
展示についてwebで見たときに、実物を見たい!と思った作品。
写真ではわかりにくいけれど、真中あたりに人がいます。
長く続いた雨のあとに、陽が差して大きな虹が出ている情景です。
画面の左側、雨上がりの湿気を含んだ煙るような空気感が素晴らしく、ずっと見ていたい光景でした。
川合玉堂が、香淳皇后(昭和天皇の皇后)の絵の先生だったと初めて知りました。
玉堂の美術館は東京の青梅にあるんですね。
俄然行ってみたくなりました。
日本画に詳しいわけではないので、知っている画家は少なくて
小室翠雲という人も知りませんでしたが、この絵がとても好きでした。
文展での受賞と同時に宮内庁で買い上げとなった作品だそうです。
(文展とは文部省美術展覧会で、日展の前身)
なぜ好きだったかというと・・・
あの2階の部屋に私も入りたい!
静かな林のなか(きっと鳥の声や風の音はしそう)で、お気に入りの本を読んだり、思索なんかをしたい!
・・と思って。
しばらく妄想しながら絵の前に佇んでしまいました。
お次は。
国宝!
伊藤若冲 「動植綵絵」のなかの「梅花皓月図」。
30幅あるなかで唯一異質な作品だそうです。
動物が見えない・・・。
なんせガラスのなかの展示ですから、近くには寄れない。
梅の花の描き方が可愛くて綺麗で、
それと月との組み合わせばかり目を奪われました。
が、なんと
右端の上のほうの枝に、蛾の繭があるそうです。
今日になってから知りました。
そんなの見えないって!
そして・・
上村松園が貞明皇后の御用命を受けて描いた作品。
完成までに20年かかったのだとか。
左の女性、外は雪景色で御簾をあげようとしています。
なんだか、清少納言の”香炉峰の雪”のエピソードみたいだけどなぁ・・・と見ていたのですが
家に帰って調べて、やはり左は「枕草子」からテーマを取っていることがわかりました。
写真だとわからないかもしれないけれど、
美しく描いた女性の上から御簾の線を描いているのですよね。
これは大変なことだろうと思いました。
そして真中は紫式部と石山寺の月
左は「伊勢物語」から・・
と皇室にふさわしい王朝の雅をテーマに描いたのだそうです。
絵画は好きでも、工芸はいまひとつ興味が薄かったのですが
今回の展示では工芸品もとても興味深く見ることができました。
紫式部が源氏物語の着想を得た場所といわれる石山寺が描かれた蒔絵のなかの黒いのは、紫式部の髪の部分です。
ガラスに顔を押し付けても、小さくてよく見えないのですよねー。
となりには、石山寺蒔絵文台という机がありました。
こちらの棚は部分の写真しか取らなかったのですが、
この上の左側の引き戸に描かれているのも、石山寺と月だそうです。
平安時代の貴重な書もありました。
おそらくは貴族のあいだでやりとりされた贈り物を集めたもの、だそう。
現代語訳も一緒に解説されていて、興味深いです。
展示は27点でこじんまりとしていますが
ひとつひとつが見応えがあって、
大きな展覧会よりもゆっくりじっくり見ることができ、満足度が高かったです。
このあと、日本橋三越で開催されている、書家の根元知さんの個展「和歌でたどる源氏物語」を見にいったのですが、
長くなったので、また次回。
御苑は広いので奥に入っていきませんでしたけど、
石垣を見ると、江戸城の大きさを実感しますね。
なんだかしみじみと心が豊かになる、新月の日でした。
書くこと、描くこと、撮ることで表現し続けたいと思います。サポートいただけましたなら、自分を豊かにしてさらに循環させていけるよう、大切に使わせていただきます。