しゃべらない生き物をどうやって診察するの?
今日の一言。
「気持ちがあれば乗り越えられるよ、なんて絶対に言わない。」
人間は言葉があるから便利だ。
どんな風に調子が悪いのか、どこが痛いのか、患者さん本人から聞くことができる。
では、動物病院にきた動物たちはどうだろうか?
彼らは私たちにわかるような言語では話してくれない。
どう頑張っても私には「わん!」とか「にゃー」としか聞こえない。
動物の言葉がわかる獣医師の話が映画になっていたりするが、あくまで映画の中の話だ。
動物と話せるという資格?もあるそうだが、少なくとも私は獣医の学校で習っていない。
話さない動物を相手にした時、大事なのは動物の見た目と飼い主さんからの話(稟告)だ。
明らかにぐったりしていなければ、まずは飼い主さんからじっくり話を聞く。
もちろん、飼い主さんも調子が悪い本人ではないから、何が悪いのかはっきり分かる訳が無い。
「なんだか様子が違う。でも、何が変なのかわからない。」
「いつもより鳴く。」
こういった稟告からスタートすることもある。
これを聞いただけで「じゃあこの病気ですね!」と言える獣医師がいるならぜひ弟子入りしたいものだ。
そんな冗談は置いておいて・・・
触られることが好きだったり、我慢できそうな子の場合は、診察台の上で聴診・触診をしながら稟告を聞き、問診(こちらから必要な情報を聞くこと)をする。
その上で、何が体調不良の原因かを見極め、必要だと思われる検査を追加していく。
検査に積極的な飼い主さん、協力的そうな患者さん(動物)の場合はしっかり検査をして、より適切な治療を選ぶことができる。
でも逆の場合は、検査まで進むことが叶わないこともある。
何しろ、動物の検査費は安くはない。
(動物病院のお金事情は以前の記事を読んでもらいたい。)
こうなると、経験則から「こうだろう」というものを選んで治療をすることになる。
しかし、ここでのキーワードはエビデンス・ベースド・メディスン(EBM、根拠に基づく治療)。
これは当然、獣医療の中でも治療方針の決定に大切なこと。
より確証の持てるエビデンスをかき集めるため、できれば必要な検査はしたい。
とはいえ、人であっても精神疾患など、血液検査といった検査で数値化できない疾患は、時に経験的治療になるところもあるかと思う。
正直、「お腹を下したんです。」という稟告では、下痢以外に本人の体調が問題なく、初診であれば、検査なしで胃腸の薬を渡して終わりということはよくある。
下痢がつづくなら再来してもらって精査をする、という流れだ。
これは小児科でもあると思う。
数値や画像診断など、明らかな根拠がない上での投薬に、不安がないわけではない。
何か重大な病気が隠れていたら・・・?
と不安になることもある。
かといって、元気なわんこの1回の下痢に2万円もかけてフル検査をする人はそうそういないだろう。
まとめると、
稟告と問診と触診と聴診。
一般的に通常の”診察料”に含まれるこれらの範囲で、できる限りのエビデンスを集め、判断する。
必要なら検査を追加していく。
そして、患者さん本人が喋らない以上、その検査の要求度が人間より高い。
動物病院の検査・治療費が高くなるのは、それがどうしても必要だからだ。
ペットを家族に持つ方々には、この辺りを理解してもらえると嬉しい。
今日も1日お疲れ様でした。
明日も頑張りましょう。
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