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オーディブル『騎士団長殺し』

村上春樹さんの作品、それはMUSTだ。HAVE TOでもある。このふたつを掛け合わせた造語がちょうど良いかも知れない。とにかく、私たち(ファン)にとってはそうなのだ、よね、きっと。

やや脅迫にも似た形の【絶対読む】なのだ。

といっても

ひとつも悪い意味はなく。どう表現しますかな、自然なこと? 毎日の食事? 朝起きること? とにかくそう、必然であり習性なのだ。

それは「風の歌を聴け」(1979年)「1973年のピンボール」(1980年)「羊をめぐる冒険」(1982年)からずっと

そしてこれからも

村上さんが絶筆されるまで。

あ、言葉選び良くないな。

ええっと。では

ステージにそっと万年筆を置くその日まで。(百恵ちゃんバージョンイメージ)

さて、そこから月日がえらい経ち

書く側の作家さんはもちろんのこと、伴走する私たち読む側も老いてゆく。そうすると我が脳の読解力よりも、老眼やその他(自分の場合なら眼の病気など)活字を追うチカラそのものが弱くなってくるナウ。

そんな頃の「騎士団長殺し」(2017年)だったから、それまでと違ってゆっくり読んだ。そして毎回、同じになるけどファンとしての感想は、やっぱり良かった。

ただひとつ
単行本一冊、一晩、一気読み出来てた頃の没入感は薄れる。仕方ない、目が疲れて休み休み読むから、自分の日常が割り込む回数が多くなる。

本を手に取り栞をつまんでから、物語の座席に座るまで、また少し、前の行から目を凝らさねばぁならない(あらない)。

そんな、プチストレスを解消してくれたのが、オーディオブックだった。

この作品は、高橋一生さんが朗読している。

物語がとつぜん立体的になった。

高橋一生さんは(ネタバレ少し入ってしまいますが)騎士団長さんの特異で可愛い言葉遣いから登場人物すべてのキャラクターを

自由自在に操られて

驚愕そして感動的だった。

楽しかった。とても楽しかった。楽しい旅が終わる前日の気分で、耳から帰りたくない。最後の方は、物語終わらないでぇと本気で名残惜しかった。

物語を終えて余韻に浸る時間。

しかし、それは叶わなかった。淡々と音楽が鳴って、エコーの効いた「ポン!」(と、聞こえるのだがあれはナニ?)と女性に言われて、退場させられる。まあ、いた仕方ない。
合図が無いと、ずーっと聴いてしまう。

それでもオーディブルは良い。世の中の進化にはときどき疑わしいものあるけど、これは、ワシらシニアには、本当にありがたい。こちらのリクエストで読み聞かせしてくれるサービスなんか増えてくればもっと嬉しい。読んで欲しい本はたくさんある。


高橋一生さんは、この物語がとても好きだということを以前、新潮社の『波』で話されていた。少し前の花火師のドラマも純良な世界だった。岸部露伴も。高橋一生さんは何者?どんな役されてても興味深い。

役者業って奥深いのだろうなぁ。作家も画家も作詞作曲家もみなさん、深いのだろうなぁ。大工さんだって漁師さんだって深いんだろうなぁとも、思う。

みなさんいつも感動をありがとう。

高橋騎士団長さんへ。ありがと〜!また会いに行くけんね。

              終わり

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