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『フミオ劇場』まとめ

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昭和初期生まれ“めちゃくちゃ系父“のエピソードを小説風連載にしたものです。 家族が被った数々のネタを書き残しておこうと、昨年よりnoteで始めてみました。 80%実話で、20%…
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2022年7月の記事一覧

フミオ劇場 4話『フミオ式・女の心得その一』

フミオ劇場 4話『フミオ式・女の心得その一』

【1話から3話は、最後にリンクしてます】 

 昭和45年秋、気持ち良く晴れた日曜日。

 家族を乗せたフミオの白いセドリックが車庫を出て、浜寺公園へと出発した。浜寺公園というのは、堺の臨海地区に古くからある市民憩いの場だ。今日は、そこでピクニックをする。

 浜寺公園もピクニックも大好きなフミオは、早朝からご機嫌さんだった。

「おぃ、ほうれん草のおひたし作ったか?おにぎりとは一緒にすんなよ、

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フミオ劇場 5話『ワシは柔道なろてたんや』

フミオ劇場 5話『ワシは柔道なろてたんや』

昭和49年頃のこと。

 スケートボードの大ブームが起きた。

 小学生の間でも、スケボーを持っているとか、スケボーに乗れると言う子が、ちやほやされた。

 この物語の主人公フミオの子供たちは、持っていなかったのだが、その日フミオの8歳の息子、和彦がスケートボードを抱えて帰ってきた。

「姉ちゃん見て見て! スケートボード! 友達が貸してくれてん!」

 玄関で叫ぶと3つ上の姉、樹里と、その友達

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フミオ劇場 6話『サラ金のはずがヤク金』

フミオ劇場 6話『サラ金のはずがヤク金』

 【1〜5話は最後に貼っています。お時間ある方は、ぜひ順に読んでみてください】


 終戦後、フミオの住む大阪府堺市も急ピッチで復興が進められた。

 足袋工場が稼働し、商店街も姿を見せた。

 大人たちが懸命に働く間、まだ幼い子らは
 ゴマメ(ルール適用外)とされ
 大きい子供たちに混ぜてもらって
 日中を過ごした。

 子供たちは、どんな場所でも特別な道具が無くても、そこにあるものを使って遊

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フミオ劇場 7話『荒療治もなんのその』

フミオ劇場 7話『荒療治もなんのその』


 フミオがヤク金騒動を起こし

 生まれ育った堺の町から母親に追い出され

 約2年が経とうとしていた。  

【第6話はこちらです】

 以前のように顔を合わせることが無いから  

 フミオの母、孝江の日常は

 この上なく穏やかだった。


「良かったな孝江はん
 思い切って追い出したん、正解やったで」


 周囲の誰もがそう口を揃えた。

 フミオが不意に孝江を訪ねて来たのは

 

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フミオ劇場 8話『友達っちゅうもんはな』

フミオ劇場 8話『友達っちゅうもんはな』


「ここへ座れ」

 フミオが娘の樹里を呼んだ。


 畳に胡座をかいて腕を組んでいる。


「今からパパが大事な事いうからな。しっかり頭に入れろよ」


「なに?」


 樹里はチラッと壁の時計を見た。
 明日は中学の入学式だ。

 ハンカチとティッシュ
 メンソレータムリップ
髪を結ぶゴムも探さないといけない。

 忙しいのに大事な話て、何なのだ。

 何でも良いけど短く済ませ

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