4月・5月の読了
オッペンハイマー 愚者としての科学者
映画「オッペンハイマー」を観るために予習として読了。この書籍の発売は2021年だけど、映画を観るにあたり知っておいて良かったことが網羅されていて「ガイドブックかな?」くらいのレベルだった。オッペンハイマーという人物についてだけでなく、この時代が「物理学の激動期」であったこと、その時代に関わった人々とその関係、広島長崎に原子爆弾が落とされるまでの生々しい各国の思惑・・・などなど、世界史の勉強としても非常に面白かった。
そして何より、被爆国の日本人という立場でここまで客観的に彼を書けることに驚いたな。日本人は確固たる被害者としての立場で常に怒りをベースとした発言をしなければならない、という暗黙の前提から脱却していたように感じた。
映画の感想はこちらから。
アメリカの中高生が学んでいる話し方の授業
話し方についての本はたくさん出ているけど、圧倒的わかりやすさと刺さり具合だった。(話に説得力を持たせるために書くのであろう)著者の経歴自慢とか、そういうのがないのも良かった!笑
後半の具体策パートよりも「こう話してしまっていませんか?」という自分の話し方を顧みる前半パートが刺さりすぎた。こういう人いるなあ…と思ったり、自分に思い当たる部分は今気づけて良かったああ( ;∀;)と救われた気分になった。
自分がしようとしている話は「こう思われたい」「さりげなく自慢したい」というような思惑を混ぜていないか?それは気づかれないように入れているつもりでも、相手には違和感として伝わってしまう。他人からそういう話をされたときに自分が違和感・嫌悪感を感じるのと同じように。
ちなみに、「話し方が上手」というのは「聞き方が上手」であることとほぼ同義であることは最近の常識になっている気がする。聞き上手であることの大切さを説いた本の中では「LISTEN」が一番良かった。帯に書いてある「聞くことは最高の知性」という言葉が好きで、ずっと本棚のいちばん手前に置いている。
母という呪縛 娘という牢獄
「娘を医学部に」と望む母親のあまりに長すぎる教育虐待の末、耐えきれなくなった娘が母親を殺害するという実際の事件を題材にしたノンフィクション。この教育虐待が想像を絶するもので、Audibleで聴いていたのだけど朝の散歩のお供としてはとにかくしんどかった。
母親とふたりきりの生活で、共に生活する唯一の大人の価値観が歪んでしまっていることの絶望たるや。他の大人が救う場面はなかったのか。あの国語教師は、もうちょっとどうにか介入できなかったのか。父親、別居してないで娘の味方にならんかい。いろんな方向にいろんな怒りが出てくる。
加害者が罪を全面的に認めた控訴審では、裁判長が判決文を読むのに約1時間もかけたという。実際の裁判を見たことはないけれど、その長さが異例であることは明らかで、裁判官が彼女に真剣に向き合い、最悪の結果を選ぶまでに彼女が受けてきた苦しみをを知ろう、明らかにしようとする熱意を感じた。
判決文を読み終えた後の「お母さんに敷かれていたレールを歩み続けてきましたが、これからは自分の人生を歩んでください」という言葉は、同情でも体裁でもなく、罪を償った後の人生への心からのエールだと思う。
判決文が裁判所のHPでPDF版で公開されている。→判決文
これは実際の出来事なんだ、とわかっていてもなかなか信じられないな。
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