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イシヤの女神

金星の女神、美の女神、愛の女神、性の女神、王権の女神でありながら、生命を生み育てる豊穣の女神である、いと高き女性。

人類の歴史に幾多の顔を持って現れ、「物語」の覇権を握った世界の女王……。

彼女が握ったのは、人間の信仰や想念の世界の権力だけじゃない。

「下の世界」の運営の要である政治や経済といった部分も、彼女が主導権を握ってきたのかもしれない。

昨日、本の蔵で一冊の本と出会った。

こちらの世界とはあまりに事情が違うので最初は読み進めるのが困難だったが、地道に調べながら徐々に理解していった。

分からないことが多かった分、これまで以上に「一つの仮説に過ぎない」という理解の余裕を持たせることに努めた。

その本の要旨をここで引用しようと思う。

その前に、大前提としてこの本の著者が指している裏の権力を持った団体というのはいくつかあって、
大別すると「フリーメイソン」「イルミナティ」という二つの秘密結社だ。

その二つと、他の幾多の団体を総称して、
この本の著者は裏の権力者たちを「イシヤ」という呼び名で呼んでいる。

フリーメイソンという団体が太古の石工職人たちから来ているという説があるため、「石屋」という言葉から取ったものらしい。

「イシヤに所属している人々、特にフリーメイソンやイルミナティといった現代においても儀式的なものを重んじている秘密主義的な団体の多くは、一説によると、オカルティズムに傾倒しているという。

……言うなれば彼らは魔王サタンを崇拝するサタニストである。

つまり、彼らは秘密裏に黒ミサを行っており、古代の豊穣神でありキリストの対立神であるサタンを崇拝していたというのだ。

彼らは大地的なもの、暗いものの象徴として女性を扱い、儀式に参加した女性は祭壇として扱われた。

そして儀式の中で彼女は裸となり、司祭と性交を行うことでサタンに供物を捧げた。

また彼らは、角が二本あり、翼が生え、動物の足を持ち、両性具有で、五芒星をシンボルに持つバフォメットという悪魔を崇拝していたという説もある。

……イシヤの思想はグノーシス主義であり、彼らはソフィアという知恵の女神を象徴的に崇拝していた。

……サタンとソフィア――全く違う二つの神を拝んでいるように見えるが、実はこの二つは「同じ神」である可能性が大きいのだ。

この二つの神に共通しているのは、「人類を自らの世界に導こうとした」という点。

元は神の忠実な大天使であったルシファーだが、神の命に背き魔王サタンとなった。

そしてエデンの園においてイブをそそのかし、生命の樹ではなく知恵の樹の果実を食べさせた。

つまり、後世まで続く罪を人間に作らせ、自らの地獄的世界に引き込んだ、ということだ。

次に、至高神の神性アイオーン(時間、時代を意味する)の一つであるソフィアは、ヤルダバオートという”偽の神”を生んだ。

グノーシスの神話では、このヤルダバオートの作り出した世界こそが、我々の生きているこの世界であるとされている。

つまり、ソフィアは偽の神を生み、自らが作った偽の世界に人類を住まわせたのだ」

……僕は、ソフィアの容姿に関する次の一文を読んで、古代メソポタミアのイナンナの姿を髣髴とした。

「絵画などでは、体を大地に対して弓なりにし牛の頭をした女性で描かれることが多い」

イナンナの頭にも角があったはずだ。

ここまで読んで、僕はメソポタミア神話におけるイナンナの世界樹の話を思い出していた。

やはり、人類は彼女の胸の中に……。

僕はまだ子供で、広い大人の世界を知らない未熟者ですが、こんな僕でも支えてくださるという方がいらっしゃったら、きっとこれ以上の喜びは他には見つからないでしょう。