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【タイミー小川嶺】20代のみんなへ伝えたい「自分の道を切り拓く、20代の働き方」

高校や大学で留学やインターン、学生起業などさまざまな経験をしても、新卒一括採用で一括りにされてしまうことに違和感を持つ若者が増えている。これからの時代に合った道の切り開き方は必ずあるはずなのに――。そこで、VENTURE FOR JAPANでは自分の未来のあり方を想像して「挑戦するキャリア」の第一歩を踏み出すための、オンラインイベントを開催している。第2回目のゲストはスキマバイトアプリ「タイミー」を運営するタイミー代表の小川嶺氏。現役大学生でもある小川氏に、なぜ起業したのか、どのような思考で事業を展開しているのかなどについて語っていただいた。

経営者のそばで経験を積み、起業家レベルを上げる

タイミー小川さんスクショ

小松 小川さんは学生のうちに起業をされていますが、起業したいと思ってもなかなか行動に移せない人が多いと思います。小川さんはどんな行動から始めましたか?

小川 僕は高校3年生のときにFacebookでの情報収集から始めました。経営者の多くがFacebookを利用しているから、経営者コネクションを築くにはいいツールだと思ったんです。

そこでいろんな経営者を見ていたところ、目に留まったのがCtoCサービスを展開している企業の「インターン募集」の投稿。しかも、創業メンバーの3人目として、社長の目の前で仕事ができるとのこと。これはまたとないチャンスだと思い、無給で働かせてもらいました。大学1年生のときです。

小松 社長のすぐそばで、経営に関する具体的な学びを得られるチャンスだった。

小川 そうです。最初から、自分は起業したいから経営について学びたいと社長に話していたので、エンジニア採用の仕方や投資家とのコミュニケーションの取り方、投資家ネットワークへの入り込み方など、いろんなことをゼロから学びました。とにかく「起業レベル」を上げたかったので、どんな場にも同席させてもらいましたね。

小松 自分のありたい姿を実現させるには、すでに実現させている人のそばで経験を積むのが手っ取り早いですよね。インターンの後はすぐに起業されたのですか?

小川 起業というよりは、インターン終了1ヶ月後に事業を立ち上げました。ただ、うまくいかなくてリリースできないまま終わっています。そもそも、やってみてダメだったらすぐに止めて次に行こうと思っていました。

小松 事業を立ち上げるまで、仮説検証に1年がかかる人もいますが、小川さんは1ヶ月で立ち上げた。

小川 人生は1回しかないので無駄な時間を過ごしたくないんです。次々と意思決定をしないといつまでも仮説検証が続くので、高速でPDCAを回していました。

小松 たしかに、早く意思決定をした方が早くフィードバックを得られますからね。とはいえ、いざ事業を立ち上げようとしたときに不安や恐怖は感じませんでしたか?

小川 個人で借金を背負うわけじゃないから、何も怖くなかったです。VCが投資してくれるならチャレンジしたらいいし、投資してもらえないならインターンをして経験値を積めばいい。起業家レベルを上げれば、資金調達につながって事業をスタートできるから、不安も恐怖もなかったです。

具体的な2つの将来設計で、起業をリスクヘッジ

小松 小川さんは起業前、スタートアップでのインターンの他に、リクルートやサイバーエージェントなどの大手でもインターンをされています。どんな背景があったのでしょうか。

小川 大手を見ておきたいと思ったからです。ベンチャーばかりでは視点が狭まるし、創業後は大手とのアライアンスが必要になるから、思想や組織を知るべきだと。それに、タイミーを作る前だったので就活も視野に入れていました。

小松 ゆくゆくは起業を視野に入れた上での就活ですか?

小川 起業のリスクヘッジとして、就職もできるよう準備を進めていたんです。なぜなら僕の親が厳しくて、起業を反対されていたから。でも起業は諦めたくなかったので、大学1年生のときに「一回やらせてほしい、大学3年生の1月までに結果が出なかったら就職するから、そこでジャッジしてほしい」と、伝えていました。

当時描いていた将来設計は2つあって、1つは学生起業で成功すること。もう1つは、学生起業に失敗した後にリクルートなどに入社して、3年でマネージャー候補になったら、同じマネージャー候補の同僚と会社を作ることです。

1つ目のプランを成功させるには、早く動くしかない。だから、大学1年生のときにリクルートを含めてさまざまなインターンに応募して、短期間で集中して学びました。結果、大学2年生の時にタイミーをリリースでき、半年後に3億円の資金調達を得られたことで親に認めてもらえました。

このとき出資してもらえなかったら、きっとリクルートやサイバーエージェントの就職試験を受けていたと思います。「運7割、実力3割」と言われますが、本当に運が良かったと思いましたね。

小松 具体的に2つの道を描いていて、うまくいかなかったときのリスクヘッジをしていたんですね。

小川 経営者として求められるスキルは、未来をどれだけ解像度高く読めるかだと思っています。他人の未来はわからなくても、自分の未来は自分で決められるから、かなり深掘って考えていましたよ。

休めないセブンイレブンのオーナー夫婦を救いたい

タイミー小川さんスクショ2

小松 インターンを経て起業した小川さんですが、タイミーの事業を立ち上げるきっかけになった出来事はありますか?

小川 本当にお金がなくて、いろんな誘いを全部断っていた時期があったんです。同じように、少額のお金によって選択肢が狭められている人たちを救いたいと思って、面接せずにすぐに働けてお金がもらえるタイミーのサービスを思いつきました。

そういった思いで立ち上げたサービスなので、24時間いつでも報酬を引き出せる機能にはいち早く着手しました。それによって選択肢の幅が広がった人は多いと思います。

小松 事業を始めて以降、印象に残っているエピソードはありますか?

小川 フランチャイズのセブンイレブンの高齢オーナー夫婦と出会ったときのことです。

オーナー夫婦は1日18時間、週7日も働き詰めで、ほとんど休めていません。なぜアルバイトを雇わないのかと聞くと、駅から離れているから求人を出しても応募がないし、採用できたとしてもすぐに辞めてしまう、と。

これは本当に深刻な問題だと思いました。店舗の外を歩いている人たちに声をかけて、2時間でも手伝ってもらえたらオーナーは2時間でも休めるのに――。そう思ったとき、「いま時間があるから手伝うよ」というマッチングの仕組みがないことに気がついたんです。

この仕組みを求めている人はたくさんいるはずだから、まずはオーナーのためにタイミーを磨き続けよう、少しでも休めるようにしようと、会員を集めてオーナーの店舗にアサインするようになりました。もちろん、僕も働いたし、友達にも行ってもらいました。

結果、オーナーはきちんと休めるようになり、セブンイレブンの本部からも連絡が来るようになって、「人手不足」という日本の大きな課題解決に少し貢献できているなと実感しました。

自分の意思決定で、5人の優秀な仲間の時間を奪ってしまった

小松 起業後にしんどかった経験があれば教えてください。

小川 しんどかった経験は2つあります。1つは、課題を解決するための事業ではなく、資金調達をするための事業をしてしまったこと。

当然、軸がないから事業はピボットをしまくり、1年半の時間を費やして資金調達はできたのですが、このお金で何の事業をしたいのかわからなくなったんです。結果、調達したお金は受け取らず、5人の優秀な仲間と解散しました。

自分の意思決定で5人の大切な時間を奪ってしまったことが本当に辛くて、数ヶ月間は自分から連絡が取れないほど病みましたね。でもその経験から、事業はお金のためではなく、世の中のために何ができるかを本気で考えてやるものであるという、大きな学びになりました。

もう1つは、タイミーのリリースから1年目のこと。事業が軌道に乗り、売り上げも伸びて僕が関与しなくても組織が大きくなる様子を見て、この会社に自分は要らないのではないか、代表を変わろうかなと思って悲しくなった時期がありました。

親離れする子を見る親のような感覚になって、3日ほど仕事をせずに過ごしたのですが、自分が生み出したサービスの成長をもっと見届けたいと思うように。

だから自分ができる範囲の仕事をやると決めて、タイミーの社会意義やビジョンを深掘りしてメディアに発信したり、3ヶ月6ヶ月先を解像度高く考えたりしました。その経験があったから、今楽しく過ごせているんだと思います。

小松 資金調達の話は起業家に限った話ではないですね。生活のために働いている人もいれば、社会を変えるために働いている人もいる。自分は何のために働くのかは大学生も社会人も考えるべきですね。

日本から世界に挑戦できる会社のロールモデルへ

タイミー小川さんスクショ3

小松 今後の事業展開について教えてください。

小川 もともとグローバル展開を狙っていたので、コロナ以前に海外視察にも行きました。今はご時世的にも厳しい状況ではありますが、早く日本から世界に挑戦できる会社のロールモデルになりたい気持ちに変わりありません。

日本は世界一の少子高齢化の国だから、その課題を逆手にとって、世界No. 1のワークシェアリングの会社になる。そして、そのノウハウを提供するために、まずはアジアから展開しようと考えています。

小松 海外の研究者と話すと、日本の少子高齢化や人口減少についてよく聞かれます。どうするのかと。そこに寄与する日本初のビジネスとして、ぜひグローバルで成長してほしいです。最後に、大学生や20代の若手社会人に向けてメッセージをお願いします。

小川 自分のロールモデルを見つけることをお勧めします。僕の場合はDeNAの南場智子さんやサイバーエージェントの藤田晋さん、ソフトバンクの孫正義さんで、書籍は暗記するほど読みました。

特に、自伝を読むと今後自分がどう進めばいいかの羅針盤になりますし、起業家の本質がわかります。もちろん、起業しようと思っていない人も、これからの世の中で生き抜くための糧になるはずなので、本当にお勧めしたいです。

それから、最近よく講演などで話しているのは、「学生起業家は目指さなくていい」ということ。全員が起業家を目指す必要はなくて、むしろ、副社長のようなトップを支えるナンバーツーの存在が必要だし、副社長のポジションは空いています。

日本は特にCEO以外のCxO人材が足りていないので、自分の適性を理解して、自分は支える側の方が向いていると思えば、副社長などのポジションを目指してほしいです。いずれにしても、人生は1回しかありません。だから、どんどんチャレンジして濃密な時間を過ごし、豊かな人生を送ってください。

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