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【セッションレポート】「脱・働く」#3(前編) — 3つの資本「コネ・カネ・チエ」を動かし、労働者から投資家になる


人々に「はたらく」を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)をミッションに掲げるパーソルキャリア株式会社。 2020年4月2日、起業家や政策担当者など、多様なイノベーター達をつなぐ「Venture Café Tokyo」と共同で、トークセッションシリーズ「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」の第3回を開催しました。

これからの時代の新しい「はたらき方」はどうあるべきか。旧来の働き方からの脱却、「脱・働く」を大きなテーマに、第3回目は「コネ・カネ・チエの資本主義」をテーマにトークを実施。NPO法人ZESDA代表である桜庭大輔氏をゲストに招きコネ・カネ・チエという3つの資本を意識し、循環・増幅させることの重要性を、これからの「はたらき方」と共に語っていただきました。

(後半の記事はこちらから)

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◆「脱・働く-POWER TO/THE PEOPLE-」について

不確実性の時代とも称される今。技術進化や人口動態の変化などにより、あらゆるゲームのルールが加速度的に大きく変わりつつあります。それに伴い、社会保障制度や終身雇用など戦後期に構築された様々なシステムも「制度疲労」に直面しているように思われます。

我々はこの来るべき時代において、どのようにはたらき、生きるべきなのでしょうか?

本シリーズではその考えをもとに、様々なステークホルダーを招きながら皆さんと繰り返し対話の場を持つことを通じて「日本らしい“はたらく“のその先」について議論を深めることを狙いとします。

1. 人々に「はたらく」を自分のものにする力を「GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.」について

中山氏:パーソルキャリアの中山と申します。弊社では転職支援を中核事業として行なっており、2019年の10月にミッションを“人々に「はたらく」を自分のものにする力を(GIVE PEOPLE THE POWER TO OWN THEIR WORK-LIFE.)”に再定義しました。

私たちを取り巻く外部環境が加速度的に変化するなかで、「働くこと」の可能性や選択肢も無限に増えています。だからこそ、このミッションを掲げることで「もっと自分らしく働けるように可能性を広げ、さまざまな選択肢から選びとる力を得てもらいたい」という想いを込めています。

しかし、私たちだけでは到底このミッションの世界観には辿り着くことはできません。そこで、このミッションに共感してくださった「Venture Café Tokyo」とともに「脱・働く」というテーマで1年間を通じて共同でセッションを開催します。参加する皆さんも含めて、一緒に議論を深めていければと思いますので、よろしくお願いします。

それでは早速ですが、ゲストの桜庭大輔さんにプレゼンテーションをしていただけたらと思います。よろしくお願いします。

2. 「労働者」から「投資家」になるカギは、3つの資本 — コネ・カネ・チエ

桜庭氏:今回はこのような機会を頂戴し、ありがとうございます。私は公務員を務める傍ら、NPO法人・社団法人から依頼を受けて複数の肩書きを持つ、いわゆるパラレルキャリアを実践しています。その中で個人がもっと稼げるようになるには、指示通り働き、成果物として賃金を得る「労働者」から、自ら考えて動きお金を生み出す「投資家」になることが大切だと感じました。

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そして投資家になるにあたって重要といえるのが、コネ・カネ・チエです。これら3つは資本であり、「蓄積できる」「自己増殖する」「他の価値を生む元手になる」という点で共通しています。また、それぞれにはコネ=信用、カネ=金銭、チエ=知識・文化・技術・スキルなどの情報といった価値があると考えられます。

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さらにこれらには「コネとカネを合わせてチエを生む」「チエとコネを合わせてカネを生む」という風に、3つのうち任意の2つを組み合わせることで、残る1つの価値を生み出せるというポイントがあります。

例えば、イギリスのエリート階級が集まる会員制クラブ「ジェントルマンズ・クラブ」では、会費を納めればコミュニティの「人脈」に入ることができ、多くの人と出会いながらさまざまな情報を得られます。それが「お金」に繋がるわけです。コネ・カネ・チエを循環させるのが、イギリス人はすごく上手ですよね。

自分が会社員として働くうえでも、スキルや情報が貯まることをチエ、仕事付き合いでクライアントや同僚、先輩などの知り合いが増えることをコネと捉えてほしいです。チエとコネが自分の職業経験の中で積み上がっているのだと。そして、このチエやコネをどこかに転用できないか考え、自身のキャリアを模索していく。後半では、そのような物の見方を提案できればと思います。

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3. コネ・カネ・チエをスパイラルアップさせ、付加価値をつける

モデレーター:ありがとうございます。ここで質問をさせていただきたいのですが「コネ・カネ・チエの資本主義」を提言した背景は何なのでしょうか。

桜庭さん:日本では、経済成長期〜バブル期の拝金主義に対する反省から、これからの時代は「カネよりもコネが大事」とか「カネよりもチエが大事」という論調で、人間関係資本や知識経営学が語られている印象を受けています。

しかし、日本が国際社会で生き残っていくには経済安定保障上の力、すなわち、「カネを稼ぐチカラ」は必要不可欠。拝金主義の反省の行き過ぎもまた、バランスを欠いていると思います。

さらに現状では、デフレマインドがカネだけではなく、チエやコネにも悪影響を与えています。給料が減り、人付き合いの範囲が狭くなると、手に入る情報が少なくなる。悪循環です。「個人も社会全体もただ単に弱くなっていっているだけなのではないか」という危機感があります。

その結果として「コネとカネとチエは並立している」と考えるのが正しいものの見方だと思い、提言しました。

中山氏: 3つの資本が重なり・連なり・スパイラルアップしていくというイメージでしょうか。

桜庭氏:たとえばコネができ知り合いが増えると、新しいことを教わる機会が増え、それは全部チエになります。

あるいは、自分にとっては当たり前にできることでも、誰かにとっては価値のあるチエになることもあるでしょうね。私は公務員で事務作業を当たり前にしていますが、事務作業が苦手な人もいます。得意な私がその人にほんの少しアドバイスするだけでも、付加価値が生まれるんです。そして、感謝されれば信頼につながり、コネになります。

そしてこの付加価値を与える行為をこまめに実行していくと、自分の持っているチエやコネが付加価値を出せるマーケットに対する認識が変わり、見える世界が違ってくると思います。自分がカネを生める場所も見えてくると思います。

モデレーター:ありがとうございます。参加者の方からもいくつか質問をいただいたので、その中からピックアップして、質問させていただきます。一つ目は、「コロナが長期化した場合、デフレマインド増強やコネの希薄化が進みそうですが、今後についてどうお考えでしょうか?」という質問です。

桜庭氏:今まで培ってきたコネの貯金を切り崩すことになるんだと思います。ただ、テレワークが普及し、Zoomなどの形式に慣れることによって世界が広がる可能性はあるかなと。

モデレーター:感染症によって世界が一気に分断される中、デジタルがつながっていることは唯一の救いかもしれませんね。デジタル世界でどのようにコネを増やしていくのか、桜庭さんとして考えていることはありますか?

桜庭氏: Zoom飲みをする、何か一つのコンテンツを皆で見て感想を言い合うなど、プライベートとパブリックが接続されることで、新しい共感の型が生まれてくるのではないかと。芸能人がインスタで行うライブ配信のようなものが、一般人の間でも広まってくるのかなと思います。

モデレーター:「公」の世界と、完全に分けられていた「私」の世界があって、その境界線があやふやになってきているということでしょうか。

桜庭氏:そうです。他人のプライベートから刺激を受けるチャンスが多くなるんじゃないですかね。人のプライベートに踏み込まれる・もしくは踏み込ませる。プライベートのシェアの手法がグッと増えてくる気がします。

モデレーター:二つ目は、「フリーランスで食える=競争に勝てる強者は少数であり、問題はその他大勢ではないでしょうか?」こちらはいかがでしょうか?

桜庭氏:フリーランスで成功している人たちは確かにコネとチエがものすごいたくさんあったりするわけですけど、そこに自信のない人たちでも、あるいは自信がないからこそ、あちこちで出掛けて行って知り合いをつくったり、知らない人に話しかけたりすべきだと考えています。それで、自分が持つものを高く評価してくれる人を地道に探し続けるしかないと。

例えば、もしかしたら美術館の同じ絵の前で隣の人に話しかけるとか。あるいは、床屋だとか銭湯とか。意外とそういう場所って、全然ちがう業界の人たちでコーヒー牛乳とか飲んでいたりするわけですよね。そういう社交スペースで、どれだけアンテナ高く、センスを持って場を見つつ、どれだけ自分の業界と違う人たちとしゃべれるかが大事だと思います。

モデレーター:ありがとうございます。後半では、「コネ・カネ・チエ」の3つの資本をどう増やしていくのか、「HOW」の議論をしていただきますので、よろしくお願いいたします。

(後半に続く)

なお、本記事のに関わる内容として、ウェブ雑誌PLANETSにて桜庭氏が「プロデューサーシップのススメ」と題して様々なカタリスト、プロデューサーとしての活躍の講演録を発信しています。是非、こちらもご確認してみてください。(2020年中に書籍としても出版予定)

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次回のセッションは、『ジョブ型』は本当に解決策か?〜雇⽤システムから未来の『はたらく』を考える〜

脱・働く第7回となる 8月27日(木) 19:00–20:00 (オンライン)は、「『ジョブ型』は本当に解決策か?〜雇⽤システムから未来の『はたらく』を考える〜」をテーマにセッションを行います。ぜひお気軽にお申し込みください。


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