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第一話 長い道のりの始まり

熱い思いを持って、ベンチャー企業で働く人たち。
縁の下の力持ちである人事の方々がこのような人たちを支えている。
ベンチャー企業に入社して2年目となる江川千里の産業医採用への挑戦が始まろうとしている。

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忙しい日々の始まり

人事労務である江川千里千里が働いている会社は、従業員が30名を超え、今なお毎月従業員が増え続けている、とても勢いのあるベンチャー企業である。

それというのも、応募者を面接して採用する社長の目が確かすぎるため、革新的なアイデアや技術をもとに新しいサービスやビジネスを展開しようとする新卒、中途採用者たちの意欲が、軒並み高すぎるためだった。

入社して2年、千里は今年で28歳になるが、彼らにつられて自分も10歳若返る思いである。

技術的なことや金銭的なことはどうにもできないし、自分自身だって周りに助けられながらどうにか仕事ができているという状態だが、人事労務として、人事管理、労務管理は私に任せてガンガンやっちゃって! と陰ながら応援する毎日だった。

そんな充実の日々を送っていた千里だが、ある日、思わぬことが発覚する。

昼休憩を挟んだ14:00、時間きっかりに社労士とのミーティングを始め、何の問題もなく終わろうとした時、

「そういえば江川さん、産業医採用の件は考えていますか?」

社労士の口から出た言葉に、思わず千里は、え? と固まってしまった。

さんぎょうい…産業医。今までそんな言葉を聞いたことがなかった千里は、すみません、何のことでしたっけ、と素直に尋ねた。

 社労士は笑って教えてくれたが、千里にとっては寝耳に水の案件だ。
「産業医…従業員の健康や職場の安全を守る医師、か。なるほど、そういうお医者さんがいるのね。従業員が50名を超えた時点で14日以内に採用しないと罰金…え、罰金が発生するの!?」

 ミーティング後に自分でもスマホで調べてみたら、出るわ出るわ驚きの情報が。

 しかも詳しく見ればそれだけでなく、

・従業員が50名を超えた企業は衛生委員会の設置が義務付けられている
・衛生委員会には衛生管理者の国家資格を持っている者が必ず1名参加しなくてはならない

「つまり、従業員が50人を超えたら、第一に産業医を確保しつつ、第二に会社の誰かが衛生管理者の資格を取得してなくちゃいけない…ってことだよね?」

 今の社長の採用ペースだと、従業員が50名を超えるまで、きっと3ヶ月もかからない。


 ひるがえって、衛生管理者の資格取得には3ヶ月ほど、産業医の採用には通常1-2ヶ月ほどかかると書いてある。


「…今から準備しないと間に合わないよ…!」

 昼までの余裕をかなぐり捨て、千里は顔面蒼白になってネットの海での情報収集を始めた。


■次回予告

突如判明した衛生委員会の設置と産業医の採用義務に焦る千里。
タイムリミットは3ヶ月と短い。藁にもすがる思いで社内に衛生管理者がいないか聞いてみることに。<第二話へ進む>



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