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怪談手帖・天狗

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リライト本vol.3発売後に行われたリクエスト企画。そこへ自分が送ったお題『天狗』を元に語っていただいたお話と、その関連話
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禍話リライト 怪談手帖『天狗××(ペケペケ)』

『天狗』という説明不要なほど有名な妖怪の特徴の一つに、その名を冠した怪異の多さが挙げられる。
天狗倒し、天狗囃子、天狗太鼓、天狗の礫、天狗笑い、天狗火、天狗揺り……。
特に山中や山の周辺で天狗が起こすとされる怪異の話は枚挙に暇がない。

僕(『怪談手帖』の収集者、余寒さん)自身、禍話へ比較的初期に提供した話の中に、とある山の天狗による石投げと子どもの顔の出るお話があった。
これから紹介する怪異譚も

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禍話リライト 怪談手帖『変容の実例』

……これはいわゆる『怪談』と言っていいものか。実際のところ、かなり怪しい話である。

ただ、僕(怪談手帖の提供者である余寒さん)が収集した中でも、

『天狗』

というものについて、珍しいアプローチがされている体験談であり、僕自身、話者の方からの聴収において寒気のするような一瞬を味わったので、ここに紹介しておきたい。





世間に災禍が蔓延するよりも前のことである。

「……こういうのって

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禍話リライト 怪談手帖『天狗のこと』

『……天狗と申すは人にて人ならず、鳥にて鳥ならず、狗にて狗にもあらず、足手は人、かしらは狗、左右に羽生えて飛び歩くるものなり』

『平家物語 巻十』より

「……俺、天狗を見たことがあるんだよ」

薄く紫煙を立ち上らせる煙草を指の間に挟みながら、ふざけている様子もなくAさんは淡々とそう言った。

「……そのせいで死生観、というか。

『幽霊観』

……っていうの? 変わっちゃってさあ……」

何と

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(怪談手帖)天狗【禍話リライト】

S山に住む古老から伺った話。
S山は峠越えで有名な山なのだが、一人で峠を越えてはいけない、という決まりがある。
というのも、一人で峠を越えようとすると、あらぬ方向から石や木の実が飛んでくる。
天狗礫、というやつだ。
驚いてその方向を見ると、木々の隙間、ありえないような高さから、無数の子供の顔がのぞいているのだという。
そういう時は、念仏を唱え、道の端になんでもいいので持っている食料をおいていけばよ

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