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俺たちはこう生きるが????

『君たちはどう生きるか』を観て来た。
もともと全然興味も見る気も無かったのだが、
友人がTwitterで「駿は義務を果たした」とだけ書いていて、
その謎の言葉に俄然見る気が湧いてきたのでそのまま映画館に駆け込んだ。



ここから先はネタバレを含むので観てない人は読まない方がいい。
また、私の感想はあくまで私が感じたことであるため、あなたがこう感じなくても当然であることは理解しておいてほしい。









「いや、読んでから観に行きたい」という人も当然いると思うが、まずは自分が観てどう思ったかを大事にした方がいいというのが私のポリシーだということはお伝えしておく。











さて、別に物語の解説もするわけでもなくいきなり所感を書かせてもらうが、最初の感想は「ずいぶん教科書的な物語の作り方だな」だった。

ジブリや宮崎駿といえば、型にはまらないような登場人物や物語展開をするという印象だったが、私が漫画家を目指し始めたころに最初に教わったような物語作りの典型に今回は則しているような気がした。

例えば、主人公が少年少女(視聴者が共通して経験した年代であることから共感しやすい。まあこの辺はこれまでのジブリ作品でもよくある)。

主人公がトラウマを持ち(母を火事で亡くしている)、家族関係に問題があり、この物語を通してそれらが改善、解決する。

絵に描いたような冒険譚。

主人公である少年が不思議な世界に迷い込み、世界の秘密に触れ(世界系とも言うかもしれない)、全てを解決して戻ってくる。

ともすれば、一時期によくあったような新海誠風アニメ映画のひとつといってもいいくらい、ジブリにしてはありふれた作風だった。

この物語を単体で見ると。


ここでいったん戻ってきて「君たちはどう生きるか」というタイトルについて考えたい。
今回の映画の詳細は公開前、なんなら公開後も全く明かされないという異例の事態であったが、宮崎駿が吉野源三郎の著作『君たちはどう生きるか』を読んで触発されたという話は耳にしていた。

だから、可能性のひとつとしてこの小説のそのまんまアニメ化という方向もあった。だが、ふたを開けてみれば全く異なる話であった。
そんな中でも一応、この元となった小説そのものが申し訳程度に出てくる一シーンがある。塔の中の世界に迷い込む前、主人公の眞人少年が母が残した筆跡からこの小説に気づき、読み始めるシーンである。
それまでの話では疎開してきた眞人が義母ともギクシャクし、庭に現れる謎のアオサギの正体を見極めようと、戦の準備をしている。
そんな中この本を見つけて読み出し涙を流し、気が付くと義母が森の中に消えいよいよ冒険へと飛び出していく。

このとき、劇中では一瞬に過ぎなかったこの瞬間に眞人少年の中では何かの葛藤や心変わりがあったのではないだろうかとも思うのだが、今のところ詳細についてはまだ考察出来ていない。ただ、元の小説が読む者にこれからの生き方を問いかける話(前に読んだ。ただ詳細は覚えていない)であることや、母が残した本であることを考えると、この時点で義母に対する考えが既に変わっていてもおかしくはない。

さて、ではなぜ宮崎駿はこの本をこのタイミングで眞人少年に読ませたり、あまつさえ突然とも思えるような登場のさせ方で観客に見せたのだろうか?

そういう風に考えると、この映画のタイトルと合わせて、ある考えが浮かんできた。
それは、この映画の中で起きる事象には、単に一つの物語として見たときの意味と、メタ的な意味が込められているのではないかということだ。

どういうことかというと、つまり「眞人にとっての小説『君たちはどう生きるか』と同じことを、観客にとっての映画『君たちはどう生きるか』を通して受け取ってほしい」ということだ。

言っている意味がわかるひととわからないひとがいると思うが、続けて説明させてほしい。
例えば、小説『君たちはどう生きるか』は、主人公の少年が複雑な家族関係と友人関係の中で起こった出来事に悩んだりしながらも、人間らしく正しく生きていくとはどういうことなのかを考えていく物語だ。読者は彼の悩む姿を見て一緒に悩み考えることで、自分の生き方を見つめていくことになる。
同様に映画『君たちはどう生きるか』は、主人公の眞人少年が複雑な家族関係を持ちつつも、不思議な世界に迷い込んだ中で義母と世界とのかかわり方について考えていく(観客はいまのところそれを見て、どうとらえればいいか困惑させられているが)。

映画の中で、大叔父と呼ばれる老人が、自分の後継に積み木を組んで欲しいと眞人に申し出るが、眞人はそれを断る。この老人が、宮崎駿のメタファーであり、眞人は若い世代(あるいは観客たち)のことなのではないかと感じた。

物語単体としても意味はある(多分。正直まだわかんないけど)が、メタ的に見るとそれはひとつひとつが彼(大叔父=宮崎駿)が若い世代に伝えたかったことであり、この映画が同名小説のように、若い人たちの教科書として語り継がれて欲しい、そのためにはこうした教科書的な物語構成が最適なのだと宮崎駿が判断したのではないか。なんとなくそんな風に感じた。

例えば受け取り方によっては、塔の中の世界はこれまで宮崎駿が作ってきた世界(ジブリ)であり、この世界とは別に存在し閉じられている(そして別の時空として存在する)=イメージの中の世界だが、大叔父のようにそれを若い人に受け継いで欲しいと駿が願ったとしても、若者としては眞人少年のようにそれを否定して自分の世界は自分で作るべきだとか、そういう風に解釈することだってできる。

ここまで書いてきたけどぶっちゃけマジでわからん。
けど、わからないなりに考え続けることが、駿が残してくれるものに対しての受け取り手なりの礼儀なのかもと思ったりする。

それが「俺たちはこう生きるが?」という今回の感想である。
この文章はこれで結論というわけではなく、見終わって帰ってきてそのままの衝動で書いている。クリエイティビティを刺激されたとまではいかないが、なぜかわからないけどとりあえず忘れないうちに書き残しておかなければならない気がしたのだ。
だから、とりあえず見た直後はこう思ったけど、何日かすると変わってくる可能性もあるし、もしかして二度目以降が観たくなって観に行ってまた新しい発見があるかもしれない。


・自分なりに納得してる解釈
■キリコの存在
キリコは元々塔の中の世界の存在だったが、ラストシーンでヒミと一緒に過去の現世に出現した。塔の中の世界のことは忘れてしまったので、そのまま女中としてあの家に仕えて歳を取り、現代に至る。
塔の中の世界でお守りになってしまい若い頃と顔を合わせることがなかったのは、同じ存在が一度に二つ存在できなかったため(という法則があるかどうか不明)。


~余談~
以上の内容ももちろん議論したいし、
普通に塔の中の世界についても色々議論したい。
ワラワラは何なのか。
ヒミ=母親だとしてもどういうことなのか。
なぜ産屋に入ってはいけなかったのか。
あと鏑矢を急に持ち出してくる??
わからないことが多すぎる。
だからこそ、一人で解けないこういう話をたくさんの人が集まって話し合って解明してほしいというのも、またひとつの駿のメッセージなのかも知れない…。

…Hayao Forever…


~余談2~
この記事を書いた後、いろいろな人の書いた考察を読んでゲラゲラ笑っている。
私の考察と似ている人もいるし、全然違う人もいる。
自分の解釈が正しいから真相を君たちに教えてあげるよという人もいるし、あくまで自分はこう感じましたよというスタンスの人もいる。
なので、どんな感想を抱いたとしてもそれは全て正しいと思う、自分がそのように生きるのであれば。

●なるほどと思った話
①大叔父=高畑勲で眞人は宮崎駿説と大叔父=宮崎駿説がある
 自分が感じたのは後者だったが、もし前者だった場合、
 世界に対しやたらものわかりがいいのは眞人=駿=この世界を作ったひと 
 だったからだと考えることもできるかも。
②城やあの世界がジブリを指すという考えの人が多い
⇒そういった現実の人間関係が色濃いため、エゴが出た映画という人もいる
 だとしても個人的には別にどうでもいい。
 100年後にこの映画が残ったとき見る人はそんなこと知る由もないと思う
③海の世界の影たち⇒ジブリの凡庸なアニメーターたちを指す
 なんとなくわかりづらいが、「彼らは殺生が出来ない」=創作における決 
 定権や意志を持たない、という解釈だと腑に落ちるところがある
 ⇒もしあの世界がジブリのメタファーであるなら、ワラワラとはこれから 
  生まれてくる・命を吹き込まれるキャラクターたちのアイデア原案?
 「熟すと飛ぶ(生まれる)」=「アイデア・設定が練られると誕生」
  途中で食べにくるペリカン=?

あと、補足した方がいいと思った点。
私は「典型的な物語」だと書いたが、ほとんどの人は「破綻した物語」だったと書いていた。
個人的に気になったのは、もし塔の中の世界の冒険を描きたかったなら、現実世界の尺をもっと削ってその分塔の世界の説明描写に時間を割けたはずだ。だが、駿はそれをしなかった。
それは多分、現実世界の尺を削る必要がなかったからだと思っていて、あれで最低限の塔の世界の説明は出来ていると考えているんじゃないだろうか。
つまり、予想ではあの世界の説明は破綻していないし全部描写で説明されている。ここまで言っちゃうとさすがに言い過ぎか?

↑これが正解かはわからないが、すごく参考になる動画だった。

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