『MORSE』ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
「モールス」と読みます。映画がありましたね。たしか。
ハヤカワから上下巻が出ています。
ミステリーですね。私はあまり「怖いもの」は読まない主義なんですが、題名「モールス」に惹かれて買いました。
ミステリーや推理作品をご紹介するのにネタバレはモラルに反しますので書きませんが、スプラッター風の描写もありで、なかなかえげつないです。
北欧(舞台がスウェーデンのストックホルム)だからでしょうか?寒々とした中での凄惨なシーンが印象深い。
スウェーデンって福祉が行き届いて、とっても暮らしやすいというイメージが、私たち日本人にはあるじゃないですか。ところがどうだ?陰湿ないじめがあり、そのいじめが延々と続いて物語の根幹にあるわけ。また、ホームレス(に近い)のたまり場、酒におぼれる人々、など、およそ福祉国家スウェーデンの片りんはないのです。
グーグルマップで舞台周辺を調べながら読んでいきました。私の読書はだから遅々として進まない。
主人公の少年オスカル・エリクソンと、少女(?)エリの住んでいるところは首府ストックホルムの西、地図に赤く丸を付けたあたりです。
地下鉄が通っている郊外です。
地図に見える水路は氷河地形なんですね。メーラレン湖水系か?
これが、ストックホルムの地下鉄網です。Wikipediaからの引用です。
東西に走る緑の路線が物語中に出てきます。「ブラッケベリ(Blackeberg )」という駅が西から6番目にありますが、ここがオスカルたちの住む街です。
スウェーデン特有の人名なのか、「トンミ」とか「ヨンニ」、「インミ」などよく似たのが出てきて混乱します。また「ヨッケ」、「ラッケ」、「ミッケ」という猫の名前のようなのも出てきます。
エリはヒロインなのか?性別に疑問符を打ったのは、そこに物語の真相があるからです。
いじめられっ子オスカルと、謎の少女(?)エリはアパートの隣同士(エリたちがあとから入居してくる)になり、壁を指で叩いてモールス信号でやりとりするのね。
だから「モールス」という題が与えられているのでした。
訳者の富永和子氏は、日本語版『スターウォーズ・ブラッドライン』なども訳をされているベテランですから、うまいです。
後から知ったのですアメリカカ映画「モールス」と原作では登場人物の名前などが変えられていますね。その前の原作に忠実な映画『ぼくのエリ200歳の少女』があるそうです。
どちらも私は観ていませんので、感想を述べられない。
上下巻という長編ですが、引き込まれるので、長く感じなかった。
猟奇殺人のえげつなさと、陰湿ないじめの描写が読ませます。
読む者は、オスカルがんばれ!と応援したくなるし、エリがだんだんオスカルに好意を持ち始め、クライマックスのオスカルのピンチを救ってくれるのはエリしかいないと信じれる。
お勧めです。
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