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同じ穴のむじな

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大学に入学し、アパートに下宿したが、「おんな」に翻弄される毎日。
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#小説

同じ穴のむじな(終章)むじなの交尾

同じ穴のむじな(終章)むじなの交尾

夜の七時でもまだ外は薄暮で明るかった。
湯屋の表(おもて)で恋人と待ち合わせるおれが、まさに歌の文句の通りだったのには、苦笑を隠せないでいた。
おれのほうが待たされて、その上、季節が夏だということだけが違ったけれど…

「ごめんなさぁい。遅くなっちゃった」
「夏やし、かまへんけど、また汗かいたよ」

二人は、上気した顔で銭湯を後にした。
「ビール、買ってく?」
おれは、大人の真似をして尚子に訊いた

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同じ穴のむじな(13)なおぼん

同じ穴のむじな(13)なおぼん

おれは横山尚子と京阪京橋駅のコンコースで待ち合わせた。
ここは国鉄環状線の京橋駅に接続する場所で人通りが盛んである。
京阪電車が高架で、エスカレーターで地上に降りる。
降りたところが京阪の改札と切符売り場で、この京阪の駅ビルを出ると、向かいが国鉄の京橋駅だった。
尚子の姿は…柱の陰などを見回すが見当たらない。
まだ来ていないのだろう。
約束の時間は十時半だった。今が、ちょうど十時半だった。

おれ

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