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起業家やVCに伝えたい、「恐怖」「怒り」「インポスター症候群」との向き合い方

本日は The Twenty Minute VC というポッドキャストより、3月9日にリリースされたエピソードについて書きます。

MATT MOCHARY, COACH TO SILICON VALLEY’S LEADING VCS & FOUNDERS ON HOW TO DEAL WITH IMPOSTER SYNDROME AND SELF-DOUBT, HOW TO MANAGE FEAR AND ANGER & WHY BOARD SEATS ARE THE DEATH OF INVESTORS

(意訳)VCや起業家にコーチングを提供するMatt Mochary氏に聞く、どうすればインポスター症候群や自己否定を対処し、恐怖や怒りという感情と向き合うのか?&なぜ投資家にとって取締役の派遣は死を意味するのか?

1. 今回出演した Matt Mochary氏はどんな人?

Matt Mochary氏はシリコンバレーでVCや起業家向けにコーチングを提供している。これまでBenchmark、Sequoiaなどの有名VCのパートナーレベルや、Coinbase, Plaid, Reddit など著名なスタートアップの創設者にもコーチングを実施した経験あり。以前はSpectrum Equity Investors にて投資家として働き、のちに Totality という会社を共同設立した。(MCI/Verizonに買収)

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さて、早速今回のポッドキャストの内容に入りたいと思います。私が面白いと感じた大まかな部分だけ、ざっくりと意訳しているので、全体の内容を知りたい場合はぜひポッドキャストを聞いてください。30分ほどの収録です。

2. 起業家やVCは、恐怖・怒りとどう向き合えば良いのか?

まず前提として、恐怖や怒りを感じている間は、最適な意思決定は不可能である。かといって、恐怖や怒りを感じずに日々を過ごすことも不可能でしょう。では、恐怖や怒りをどのように対処すれば良いのだろうか?

大事なのは、恐怖・怒りを感じているときに、その感情に気づくことだとMochary氏は言う。そのためには、周りの方々に協力してもらうことが理想的である。

周りの人に協力してもらい、「今、あなたは恐怖を感じているよ」「今、怒っているでしょ」と、適宜指摘してもらいましょう。そして、自分がその感情に気づけたら、感情が落ち着くまで待ち、それまでビジネスにおける意思決定は行わない。もし、今すぐに意思決定が必要な場合は、自分で決断するのではなく、その感情を抱いていない別の誰かに意思決定をアウトソースしましょう。

さて、VCで働いていると、このような感情を抱くときは多々ある。多くの場合、それは何かに対する理解が深まっていない時である。例えば、投資契約に慣れていなかったり、複雑なタームシートに直面したりすると、「わからない」から恐怖を抱いてしまうかもしれない。そして、その感情を見せることは恥ずかしい、と感じることもある。

そういう時に、ベンチャーキャピタリストはどうすれば恥ずかしい思いをせずに、スタートアップと良い関係を築けるのだろうか?

Mochary氏はそれに対し、こう答えている。

素直に自分がわからないことを伝えましょう。「私はこのようなタームを見慣れておらず、あまり自信がないので、もう少しシンプルでわかりやすいものにしていただけませんか?」と。こう発言することは、自分のことを頼りないと思わせてしまうのではと心配する人も多いですが、それは間違いです。むしろ、その逆で、あなたのことを信頼するようになります。

実際、シリコンバレーVC・Benchmark Capital のパートナー、 Peter Fenton がこのようにコミュニケーションをとっている。会話を始めてから5分以内に、彼は自分の弱みを何か1つ共有する。自分の弱点を隠さず、素直に明かしてくれる ー そんな彼だからこそ、みんなから愛されているのである。

3. インポスター症候群をどう対処すれば良いのか?

7割の人が経験済みというインポスター症候群。この現象はずばり「恐怖」。では、この恐怖をどのように乗り越えれば良いのだろうか。

Mochary氏は次を推奨している。

自分がどの作業に喜びを感じるかを把握し、逆に喜びを感じない作業を少しずつ取り除きます。自分のカレンダーに、赤いペンと緑のペンを取り出して、喜びを感じる作業に「緑」、喜びを感じない作業に「赤」、と1時間ごとに色を塗っていきます。どちらでもない場合は、特にポジティブエネルギーを感じないという意味で「赤」にします。

色が可視化されたら、次は行動です。取れる行動は下記の3つです。
1. アウトソースする。
2. その作業を一切やめる。そもそも不要な作業かもしれない。
3. どうすればよりポジティブな感情を生み出せるか考える。
「XXとXXさえあれば許容できる」と、最低限の必要項目を書き出す。

それが終わったら、1ヶ月様子見。30日後に、またカレンダーを開いて、1時間ごとの作業に赤・緑を塗っていきます。そして同じアクションを繰り返します。このプロセスを毎月行い、3ヶ月おきに振り返ってみましょう。少しずつ、緑が増えていくことが理想です。

覚えておきたいことは、これらの作業は決して「得意な作業」「苦手な作業」の話ではなく、その作業を「好き」かどうかを表しているということ。好きな作業なら、時間や努力も惜しまず尽くすので。

あと、CEOとして大事なのは、CEOだからといって、すべてのタスクを自分で抱える必要は全くないということ。タスクが完了されることを見届ける重要性はあるが、自分自身がタスクをやるのとはまた別の話である。

4. どうすれば相手と飾らない信頼関係を築けるのか?

互いに弱さを見せ、素直に感情について話し合えるには、信頼関係がMUSTである。では、どのように信頼関係を築いていけば良いのだろうか。

Mochary氏がアドバイスするのは、自分に対するフィードバックを求めること。相手とコミュニケーションとったら、必ず最後にフィードバックをお願いする。「私との会話で、何がよかったですか?何を改善すれば良いですか?厳しくても良いので、率直にフィードバックをください」と。そしてフィードバックをいただいたら、相手に感謝をし、改善点に関して具体的なアクションを提示する。そうすると、相手も「自分の意見を聞き入れてくれる、そしてこの方も良い関係を築こうと努力してくれている。この人となら心地よく交流できる」と感じ、素直に打ち明けられるようになる。

ただ、もちろん全てのフィードバックを受け入れる必要はない。自分に響くものだけを受け入れて良い。もちろん、響かない場合でも相手に感謝を伝える必要はあるが、受け止めるだけで、受け入れる必要はない。

5. 聴き終えた感想

30分ほどのポッドキャストでしたが、聞いていて落ち着く内容でした。近年、起業家のメンタルヘルスへの注目も高まりつつあり、国内でも cotree が話題になってきているのは良い傾向です。

一方、ベンチャーキャピタリストに向けたアドバイスはそれほど見当たらない気がしています。ベンチャーキャピタリストとして、どうしても常に動じないべき・弱さを見せないべき・無知は許されない、というように感じてしまいます(私だけかもしれない?)。今回のポッドキャストではちゃんと「ベンチャーキャピタリストのためのアドバイス」も含まれていたので、とても為になりました。

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余談ですが、面白いと思ったMochary氏の意見を2つ。

VCとして、取締役の派遣はおすすめしない。なぜなら取締役に就くというのは、生涯(無期限の)コミットメントを約束するということになる。生涯コミットメントを約束するより、サポートを約束するほうがよっぽど効果的です。起業家に、どのようなサポートが必要かを聞いてみてください。大半の場合、VCの持つネットワークへのアクセスを必要としているでしょう。
恐怖や怒りを感じるとき、その感情の原点はどこにあるのでしょう。ほとんどの場合、この原点は5歳までの頃の体験に紐づいています。

The Twenty Minute VC のポッドキャスト、かなり早口で英語を聞き取るのが難しいかもしれませんが、メンタルヘルス、ウェルビーイングなどに興味ある方は、ぜひ聞いてみてください!

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