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#32 先生とちょっとバトル!(レッスン 7月1回目、2回目 その1)

 息子が期末テスト対策の勉強したいのでピアノを休むそうなので、息子の枠をもらい、この週は2回レッスンすることになりました。

 しかし、今回は先生とちょっとしたバトルに。まぁ、多くのピアノの先生がブログ等でよく愚痴をこぼしているよくある話です。下手な癖に難しい曲を弾きたがるとか、弾けもしないのに速いテンポで弾きたがるとか、そんな類の話。。。ほんとよくある話。。。


グリーグ/ホルベアの時代より~プレリュード

 何となくあいまいなゆっくり目のテンポで1回通して弾いたのですが、何か指の動きがぎこちないというか、ノれてないというか。。。

 なので、ちょっと調子を取り戻すために、先生に「1度、速く弾いてみてもいいですか?」と聞いてみました。すると、

ダメです!!!

と、すかさず、いつになく強い口調で一言。そのあと、お互いに沈黙が続きます。

 先生は「しまった!」という顔をしています。性格的に頭ごなしに否定する人ではないのですが、私相手だとつい本音というか、口に出てしまったようです。そして、沈黙に耐えられなくなったのか、

・・・・・・ 。
わかりました! いいです。弾いてみてください。

実は「先生はダメというかもな」と予想してましたが、OKだすのは予想外でした。

 なので、早速、自分が出せる全速力で弾いてみることに。音を外そうが、止まって弾きなおそうがひるまず、最後までテンポを落とさず、一気に弾き切りました。で、先生のコメントですが、

「音がグチャッとしていて、何を弾いているのかよくわかりません。」
「呼吸も感じられないので苦しく、ドキドキして不安になります。」
「正直、聴いているのがツラいです。」

立て続けに言われてちょっと凹みますが、これは考えてみれば、いつものこと。何も速く弾いたからではなく、普段のレッスンでゆっくりなテンポで弾いているときにも言われていることです。

なので、次は「私のターン」というか、ふと思いついたことで逆襲することにしました。楽譜を持ってないので、音の記憶を頼りにして、

ソドミ ソドミソ ドミソド ミソドミ ソドミソ ドミソド ミソドミ ソ!ソ!

と、わざとゆっくりなテンポで、ある有名なフレーズを片手で弾きました。

「!!!」

先生はあからさまに反応。効果てきめん。

私の生徒ですね!
確かに彼女はそのくらいのテンポで弾いていました。
でも! でも! そのテンポで弾くことが「許されない」というのなら、生徒が弾ける曲はなくなってしまいます!

・・・・・・。あと、半音間違ってますよ(ボソッ)

原曲は嬰ハ短調ですね。ハ短調で弾いてしまいました。記憶頼りだったので。それとも老化現象で、音感が半音狂ったのか。。。

いや、「名曲をゆっくりなテンポで弾くのは許さない」とは、一言も言っていないんだけど。。。

ただ、売り言葉に買い言葉のような言い争いはしたくなかったので、先生の言葉をスルーしながら、もう一度、同じフレーズを(またハ短調で)ゆっくり弾いてみます。

ソドミ ソドミソ ドミソド ミソドミ ソドミソ ドミソド ミソドミ ソ!ソ!

名曲もゆっくり弾くと、なんだかハノンみたいになり、最後のソ!ソ!も間抜けに響きます。そして、私はこうつぶやきました。

「彼女はなぜ、この曲を発表会に選んだのかなぁ。。。」
「この曲の”速さ”(プレスト・アジタート)に憧れたからじゃないのかなぁ。。。」

うっ! でも、彼女はこのテンポで弾くことに満足していました!
・・・・・・ だと思います!

そうならば、別にいいんですけどね。
本当だろうか。。。本当の気持ちは本人にしかわからないけど。

つゆにそばをたっぷりつけて食べたい

「死ぬ前にたった一度でいいから、つゆにそばをたっぷりつけて食べたかった・・・」

 何だか、今回の件で、私は有名な落語の「まくら」に使われる小話のことを思い起こしました。

 そばの香りを楽しむには、粋な食べ方をするには、つゆにはほんの一寸しかそばをつけてはならない。。。

 確かにそうなのかもしれないけど。でも、今際に後悔するくらいなら、ちゃんとそばを食べられるうちに、つゆにたっぷり付けて食べたほうがいいよね。

 ピアノの先生の誰もが、生徒が難易度の高い曲を弾くことや、速く弾くことで、音楽的に弾けなくなることをとても嫌う。ゆっくりでも、簡単な曲でも、自分のレベルにあった曲、あったテンポで音楽的に弾けるほうがよっぽど重要で、いいことであると言う。

 私の先生も同じ。みんな言っていることは同じ。そして正しいと思う。そのことを、ネットサーフィンして、私はよく理解しています。

 でも、その曲の「速さ」に憧れて、弾いてみたいと思ったのなら。速く弾かないまま、終わらせてしまっていいのだろうかと、疑問にも思います。

速さにあこがれてロードレーサーを買ったのに、危険だから、迷惑だからと他人軸の判断で、歩く速さ程度しかスピード出さなかったら、ロードレーサーを買った意味って何なのだろう。。。

その曲の速さに憧れたのに弾き始めたのに、速く弾くなという。その曲を弾く意味って何なのだろう。。。


残念な弾き方」だとか、
拍子感がおかしい」とか、
フレーズの処理がなってない。尻もちついている」とか、
音のつぶがそろってない。転んでる」とか、
強弱がつけられてない」とか、
左右のバランスがおかしい。左がうるさすぎて台無し」とか、
タッチが弱いから芯のある音が出ない」とか、
鍵盤を叩くから音が汚い」とか、
呼吸をしてない。感じられない」とか、
時間芸術なんだから、止まったり、弾きなおしたら音楽が壊れる」とか、
暗譜ができない」とか、
ペダルが汚い」とか、

ピアノの先生はいろいろ言うけど。
でも、圧倒的な「速さ」に憧れてその曲を弾きたいと思ったのなら、そんなことはいったん全部取っ払って、全部置いてしまって。

自分の思う理想のテンポで、指が転ぼうが、止まろうが、弾きなおそうが、残念な弾き方になっていようが、「速さ」を追求してもいいんじゃないかなぁ。

速く弾くからこそ聴こえる音

「月光の3楽章」。ネットで話題になってたヴァレンティーナ・リシッツァの 動画を見たとき、強い衝撃を受けて、もうどんなんでもいいから、残念でもいいから、とにかく一心不乱にピアノを速く弾いてみたい、という強烈な憧れを持ちました。

でも、発表会で見た先生の生徒は、私よりもずっとずっと上手いのに、速く弾こうと思えば弾けそうなのに、とてもゆっくりなテンポで弾いていました。それが私にはショックだったんでしょうね。

「グリーグ/ホルベアの時代より プレリュード」もそう。まずは「速さ」に憧れました。そして、この曲の場合、速く弾かないと聴こえてこない音というのにも惹かれました。

私はダメ耳なせいか、自分の速弾きの下手な演奏だけでなく、プロや十分上手い人の速い演奏でも「ぐちゃっ」と聴こえて、何を弾いているかよくわかりません。

(さすがに「ホルベア~」は、自分が弾くようになって、どう弾いているかはわかるようにはなりました。。。ぐちゃっとは聴こえますが)

でも、ぐちゃっと聴こえる音の中から、自然とエコーのように浮かび上がってくる音に気付いて、その音にとても惹かれました。

例えば、この赤い音。

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例えば、このオレンジの音。

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例えば、この水色の音。

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まるで高速で回る扇風機のフィンに浮かび上がってくる、逆回転のフィンの影のように、拍頭からずれてエコーのように響いてくるこれらの音を不思議に思いました。

でも、自分でゆっくり練習しているときは、なぜかこの音が聴こえてこない。。。

ただ、ある程度弾けるようになってきたある日、試しに家で思いきり速く弾いてみたら、別にアクセントをつけてるわけでもなく、ただ音を並べているだけなのに、ぐちゃっとした音の中から自然と聴きたかった音が浮かび上がってきました。

「なんだ、私でも速く弾くと聴こえてくるんだ。。。」

ちょっと感動しました。グリーグってすごい!

そして、先生の前で、教室のグランドピアノで速く弾いたときも、同じように聴きたい音が聴こえてきました。先生には単なるぐちゃっとした音にしか聴こえないのかもしれないけど、私には確かに聴こえる。

それと、家のアップライトでは速いテンポだとどうしても音が鳴らない、両手での同音連打部分も、教室のグランドピアノだと、速く弾いてもちゃんと音が出ました。

そのことがわかって、私としては教室で速弾きして実は満足しました。それに、先生も嫌がりながらも最後まで聴いてくれたし。
そろそろ生徒側の引き際でしょう。

バトル終了。テンポは。。。

「この曲、多分、発表会で弾くのは一生に一度きりでしょうね。。。」

「・・・・・」

落語の小話を思い浮かべながら、

「でも、わかりました。先生のいうとおり、テンポを落として弾きますね」

と、こちらから折れなくてはと、最初に弾いたときよりも遅めで、「ホルベア~」を弾きます。

あのっ!

先生が何か言いたそうにしてますが、「あ、まだテンポ速かったですか?」と、さらにテンポを落として弾きなおします。さきほどの月光3楽章のフレーズのように、テンポが遅すぎてかなり間抜けな感じになります。

あのっ!
「つまらない」と思いながら弾くくらいなら、速く弾いてください。

先生が折れはじめたので「これはまずい」と思い、いったいどの程度のテンポで弾いたらいいのか、と先生に聴きました。

今日最初に弾いたくらいのテンポでお願いします。

ということなので、今回私は速く弾くことはあきらめました。

このテンポでは聴きたい音が浮かび上がってこないので、落語の小話のように「やっぱり速く弾けばよかったなぁ」と正直、後悔するかもしれません。

でも、実は、私には「速さ」よりも優先したいことがあります。

それは「自分のタッチを直したい」ということ。
私がこだわっているピアノの一音一音のタッチを、手取り足取りで教えてくれる奇特な先生は、おそらく今の先生以外にはいないでしょう。

私はあくまで習いにきているので。
自分の好きな曲をただ好きなように弾きに来ているわけでないので。
先生の言う通りにすべきでしょう。

でも、本番のときに、緊張して、出だしを速いテンポで入ってしまったら。。。そのときは、もう仕方がないですよね!

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