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アオハルVチューバー〜連載まとめ(全42話 完結済)

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連載小説です。ゲーム関連のYouTube公式動画を埋め込んでいます。普通の書籍では実現できないことができて楽しいです。kei02様のイラストが素敵なので使用させていただいています。
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#マンガ

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第10回配信 潜在意識は恥ずかしい

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第10回配信 潜在意識は恥ずかしい

〈ユメオ、キュン死のことはもういいから、今いる場所についてレポートして〉

 エリウサが、足を交互にあげながら、話題を変えるよう急かしてきた。僕は反省した。ゲームの倫理問題を話しているあいだ、ずっと同じ場面を映してしまっていたからだ。これでは視聴者が退屈して、観るのをやめてしまうかもしれない。

 僕は、大平原の遙かな地平線を眺め渡して、感じたことをストレートにレポートした。

「さて、僕は、異世

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第9回配信 ゲームの倫理

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第9回配信 ゲームの倫理

 ふ、と目を開けた。

 眩しい。

 太陽の光を遮るため、手をかざす。

 僕はゆっくりと身体を起こし、長座の姿勢になった。

 ぐるりと四方を見る。

 どこまでも緑が広がっていた。僕は大平原のど真ん中に、たった1人でいるのだとわかった。

 視界の右上で、エリウサが鼻をひくひくさせて言った。

〈突然場面が変わったわね。レポートをどうぞ〉

 さて、なにから説明しようかと悩んだが、変に間があ

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第8回配信 キュン死ふたたび

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第8回配信 キュン死ふたたび

 次の日は土曜日で、学校は休みだった。

 僕はお菓子を持参して、昼過ぎにエリスの家に行った。

 エリスは、お父さんにやり方を教わって、ライブ配信の宣伝と告知を済ませたということだった。

「覚えることがたくさんあって大変。ゲームの実況中に、ハイライト動画をつくったりとかね。パパは、慣れたら楽勝とか言ってたけど」

「そりゃああの方は、天才だからなー」

 エリスの部屋の壁には、ユメエリちゃんね

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第7回配信 配信の心得5箇条

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第7回配信 配信の心得5箇条

 つまらない。

 と言われれば、心臓が冷えるほど落ち込む。

 面白い。

 と言われれば、躍りあがるほど喜ぶ。

 では、その落ち込みと喜びのどっちが大きいかと言うと、これはもう断然、何倍も、喜びのほうだった。

 しかしである。

 100回余りの視聴があって、わざわざコメントしてくれたのは、1件だ。

 もしかしたら、「ザクロ石」さんは、エリスのお父さんの同僚かもしれない。だとしたら、その

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第6回配信 コメント第1号

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第6回配信 コメント第1号

 エリスの家に入ると、

「いらっしゃい」

 エリスのお母さんが、明るい笑顔で迎えてくれた。

 榎田家の人は、みんな明るい。そこが僕は昔から好きだ。ひょっとすると、僕が最初に好きになった人は、エリスよりちょっとだけ先に、このお母さんだったかもしれない。

 なので、今でも顔を見ると妙に照れくさい。

「昨日はパートだったから、ライブでは観れなかったけど、あとで動画を観せてもらったわ。剣士になっ

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第5回配信 僕のマジメな恋愛観

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第5回配信 僕のマジメな恋愛観

 翌朝、教室に入ると、エリスと目が合った。

(今日もよろしくね、ユメオ)

 という想いが、無言で伝わってきた。

 僕は嬉しかった。確実に、エリスとの距離が縮まっている。

 もはや昨日までの僕たちではない。そう、今やただの幼馴染みではなく、ともに娯楽を配信するチームメイトだった。

 だからと言って、すぐに付き合えるとは思っていない。

 僕の恋愛観は少々固い。

 恋愛とは、遊びでするもの

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第4回配信 僕はVチューバーになります

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第4回配信 僕はVチューバーになります

「……?」

 熱くなかった。

 どうやら間一髪で、ゲームを終了できたらしい。

 頭に手を当てて、ベッドギアを外した。

 LEDのシーリングライトが見える。

 エリスの部屋。エリスのベッド。そこに仰向けになったまま、しばらく茫然としていた。

「どうだった?」

 エリスが顔を覗き込む。僕はすぐには言葉が見つからず、ただその顔をぼうっと見返していた。

「ウフフ」

 エリスが笑った。

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「アオハルVチューバー〜妄想が実現するVRゲームを配信していたら幼馴染みに蔑まれたけど実はツンデレで【結婚】したいそうです!!!!〜」第3話「第3回配信 異世界は恐怖でしかない」

「アオハルVチューバー〜妄想が実現するVRゲームを配信していたら幼馴染みに蔑まれたけど実はツンデレで【結婚】したいそうです!!!!〜」第3話「第3回配信 異世界は恐怖でしかない」

 キュン死の経験を、言葉で表現するのは難しい。

「あっ」

 て思って、

「死ぬか?」

 てなって、

 暗転。

 無理に再現するなら、こんな感じ。もちろん文才があれば、もっとわかりやすく伝えられるんだろうけど。

 まあ、ありきたりの結論を言うと、どんなことも、経験した人にしか本当のところはわからない。キュン死がどういうものかは、キュン死した人間(僕のほかにいるかな?)にしか理解できない

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「アオハルVチューバー〜妄想が実現するVRゲームを配信していたら幼馴染みに蔑まれたけど実はツンデレで【結婚】したいそうです!!!!〜」第2話「第2回配信 死に方は選びたい」

「アオハルVチューバー〜妄想が実現するVRゲームを配信していたら幼馴染みに蔑まれたけど実はツンデレで【結婚】したいそうです!!!!〜」第2話「第2回配信 死に方は選びたい」

「異世界に行ってみない?」

 と、榎田エリスは言った。

(あれ?)

 僕はキツネにつままれた思いだった。確かエリスの部屋で、ヘッドギアを被ってベッドに横になっているはずなのに、なぜか高校の教室に戻っている……

「どういうこと、って訊いて」

 エリスが囁き声で言う。そのイタズラっぽい顔を見て、僕はハッと気づいた。

 もうゲームは、始まっているのだ!

 エリスの説明では、この〈異世界転生

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「アオハルVチューバー〜妄想が実現するVRゲームを配信していたら幼馴染みに蔑まれたけど実はツンデレで【結婚】したいそうです!!!!〜」第1話「第1回配信 彼女のために異世界に飛びます 」

「アオハルVチューバー〜妄想が実現するVRゲームを配信していたら幼馴染みに蔑まれたけど実はツンデレで【結婚】したいそうです!!!!〜」第1話「第1回配信 彼女のために異世界に飛びます 」

 始まりは唐突だった。

「異世界に行ってみない?」

 放課後の教室で、彼女は言った。

「どういうこと?」

 僕は尋ねた。

「死んで転生するの。死に方は選べるわ」

「…………」

 まさか、幼稚園のときからずっと想っていた相手から、死に方を選べと勧められるとは思わなかった。

「ちょっと待って。それ、ひどくない?」

 彼女、榎田(えのきだ)エリスは、クスクスと笑った。

「なんだ。また

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