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夢間欧
2023年1月15日 17:24
〈ユメオ、キュン死のことはもういいから、今いる場所についてレポートして〉 エリウサが、足を交互にあげながら、話題を変えるよう急かしてきた。僕は反省した。ゲームの倫理問題を話しているあいだ、ずっと同じ場面を映してしまっていたからだ。これでは視聴者が退屈して、観るのをやめてしまうかもしれない。 僕は、大平原の遙かな地平線を眺め渡して、感じたことをストレートにレポートした。「さて、僕は、異世
2023年1月14日 15:01
ふ、と目を開けた。 眩しい。 太陽の光を遮るため、手をかざす。 僕はゆっくりと身体を起こし、長座の姿勢になった。 ぐるりと四方を見る。 どこまでも緑が広がっていた。僕は大平原のど真ん中に、たった1人でいるのだとわかった。 視界の右上で、エリウサが鼻をひくひくさせて言った。〈突然場面が変わったわね。レポートをどうぞ〉 さて、なにから説明しようかと悩んだが、変に間があ
2023年1月13日 21:04
次の日は土曜日で、学校は休みだった。 僕はお菓子を持参して、昼過ぎにエリスの家に行った。 エリスは、お父さんにやり方を教わって、ライブ配信の宣伝と告知を済ませたということだった。「覚えることがたくさんあって大変。ゲームの実況中に、ハイライト動画をつくったりとかね。パパは、慣れたら楽勝とか言ってたけど」「そりゃああの方は、天才だからなー」 エリスの部屋の壁には、ユメエリちゃんね
2023年1月12日 18:08
つまらない。 と言われれば、心臓が冷えるほど落ち込む。 面白い。 と言われれば、躍りあがるほど喜ぶ。 では、その落ち込みと喜びのどっちが大きいかと言うと、これはもう断然、何倍も、喜びのほうだった。 しかしである。 100回余りの視聴があって、わざわざコメントしてくれたのは、1件だ。 もしかしたら、「ザクロ石」さんは、エリスのお父さんの同僚かもしれない。だとしたら、その
2023年1月11日 05:51
エリスの家に入ると、「いらっしゃい」 エリスのお母さんが、明るい笑顔で迎えてくれた。 榎田家の人は、みんな明るい。そこが僕は昔から好きだ。ひょっとすると、僕が最初に好きになった人は、エリスよりちょっとだけ先に、このお母さんだったかもしれない。 なので、今でも顔を見ると妙に照れくさい。「昨日はパートだったから、ライブでは観れなかったけど、あとで動画を観せてもらったわ。剣士になっ
2023年1月11日 05:43
翌朝、教室に入ると、エリスと目が合った。(今日もよろしくね、ユメオ) という想いが、無言で伝わってきた。 僕は嬉しかった。確実に、エリスとの距離が縮まっている。 もはや昨日までの僕たちではない。そう、今やただの幼馴染みではなく、ともに娯楽を配信するチームメイトだった。 だからと言って、すぐに付き合えるとは思っていない。 僕の恋愛観は少々固い。 恋愛とは、遊びでするもの
2023年1月10日 13:44
「……?」 熱くなかった。 どうやら間一髪で、ゲームを終了できたらしい。 頭に手を当てて、ベッドギアを外した。 LEDのシーリングライトが見える。 エリスの部屋。エリスのベッド。そこに仰向けになったまま、しばらく茫然としていた。「どうだった?」 エリスが顔を覗き込む。僕はすぐには言葉が見つからず、ただその顔をぼうっと見返していた。「ウフフ」 エリスが笑った。
2023年1月9日 17:50
キュン死の経験を、言葉で表現するのは難しい。「あっ」 て思って、「死ぬか?」 てなって、 暗転。 無理に再現するなら、こんな感じ。もちろん文才があれば、もっとわかりやすく伝えられるんだろうけど。 まあ、ありきたりの結論を言うと、どんなことも、経験した人にしか本当のところはわからない。キュン死がどういうものかは、キュン死した人間(僕のほかにいるかな?)にしか理解できない
2023年1月9日 17:45
「異世界に行ってみない?」 と、榎田エリスは言った。(あれ?) 僕はキツネにつままれた思いだった。確かエリスの部屋で、ヘッドギアを被ってベッドに横になっているはずなのに、なぜか高校の教室に戻っている……「どういうこと、って訊いて」 エリスが囁き声で言う。そのイタズラっぽい顔を見て、僕はハッと気づいた。 もうゲームは、始まっているのだ! エリスの説明では、この〈異世界転生
2023年1月9日 17:41
始まりは唐突だった。「異世界に行ってみない?」 放課後の教室で、彼女は言った。「どういうこと?」 僕は尋ねた。「死んで転生するの。死に方は選べるわ」「…………」 まさか、幼稚園のときからずっと想っていた相手から、死に方を選べと勧められるとは思わなかった。「ちょっと待って。それ、ひどくない?」 彼女、榎田(えのきだ)エリスは、クスクスと笑った。「なんだ。また