マナリ

小説を書いてます。良ければ読んでみてください。

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最近の記事

【10回連載小説】タケルとスミカ最終話(10)

【電車で多摩川を越える】 「こんな午後早い時間に、帰る方の電車に乗るの、あんまないから、ビックリだね、空いてて。」 「でも、これ、各停だぜ。空いててもいいんじゃねえか?」 「別に、急いで帰る必要ないじゃん。」 「まあ、そうだけど。」 「もう、多摩川越えるよ。」 「意外に早えよな。多摩川まで。」 「だよねえ。多摩川越えたら、もううちらの駅だもんね。」 「座って、ゆっくり多摩川越えんの、スゲエ、久し振りな感じがする。」 「そうだねえ。いつもなら、川越える時、大体つり革もって、スマ

    • 【10回連載小説】タケルとスミカ(9)

      「タケル、食べながらでいいんだけど、ちょっと、聞いて欲しい事がある。」 「何だよ?聞くだけ?」 「そう、聞くだけでいい。あのね、私のカテキョーのバイト先で一緒で、この大学の子が二人いるって、前に話したじゃん。」 「ああ、聞いた事あるな。二人とも文系だろう?」 「そう、ユミちゃんとミクちゃんって言うんだけど。二人がね、タケルがカッコいいって言ってんだよ。」 「カッコいいって?ヤバいじゃん。二人とも、可愛いんかなあ?」 「ユミちゃんは、美人だけどケバい。ミクちゃんは、どこにでもい

      • 【10回連載小説】タケルとスミカ(8)

        【タケルとスミカ①】 「遅いよお。どんだけ、人を待たせるのよ!」 「ええ、だって、スミカ、第一って言ってたぜ。だから、第一で待ってたんだよ。」 「第一?私が第一って言ったって?そんな訳ないじゃん。私、第二のスーラータン麵が食べたかったんだもん。それに、私、口頭では言ってないよ。メールで言ったじゃん。」 「だから、そのメールで!第一って、言ってるよお。」 「ええ?見てみる。あっ、ホントだ。でもねえ、その後に、スーラータン麺食べたいって、書いてるじゃん。第一は、中華、やってないよ

        • 【10回連載小説】タケルとスミカ(7)

          【それでもまだ続くスミカの6ターン目。タケルはどうなってしまうのか?】 ええ?それでも、ミクは、どうしても、タケルに告白りたいの? 困ったなあ。ええ、私?やっぱり、私がアンタの気持ちを伝えるの?タケルに? 荷が重いなあ… ホント、止めといた方がいいよ。 まあ、確かに、私だけがいつも、タケルのそばで、一緒だからねえ。 ミクも、ユミも、学部も違うし… まあ、いいわ、分かった。私が訊いてあげるよ、タケルに。 でもさあ、うまくいかなかったら、ごめんだよ。先に謝っとく。 ア

        【10回連載小説】タケルとスミカ最終話(10)

          【10回連載小説】タケルとスミカ(6)

          【大方の期待を裏切るように、スミカの5ターン目:やはり女子トークは盛り上がりがちなのか…】 ええーーー‼ミクも、タケルの事、気になってんのお? 私に間に入れって? それ、困る。絶対にイヤだから。何でって、訊かれても… イヤなもんは、イヤなんだよ。 ホント、タケルは、止めた方がいいよ。絶対に後悔するから。それはマジで私が保証する。 何でって?さっきも言ったけど、ホント、アイツ、いい加減だし、ルーズだし、あっ、それって一緒の事か? カッコよくないって、マジで。近くにいてごら

          【10回連載小説】タケルとスミカ(6)

          【10回連載小説】タケルとスミカ(5)

          【やっとタケルの番だ!タケルの3ターン目】 止めてくれよ、マジで! ホントさ、ホント。ホントに俺とスミカは、何でもないのー! 確かにさあ、学校に来る時も一緒だし、授業も一緒だから、いっつも、一緒にいるイメージになっちゃうんだけどさあ。違うんだよ、違うの。 ホント、俺ら、何もないんだから。 スミカ、幼稚園の時から一緒だぜえ。どうして、俺がアイツ、口説くの? コンパでさあ、酔っ払っちゃってとか? ラブホに行くような雰囲気にするとか? そんなのできねえよ。第一、そんなん、ス

          【10回連載小説】タケルとスミカ(5)

          【10回連載小説】タケルとスミカ(4)

          【スミカの2ターン目】 ええ?羨ましいって? そんなん言われても、私ら、ずっとだからねえ、幼馴染みなの。 だから、スゴイ仲がいいとか、言われても、全然、ピンと来ないんだよねえ。 いいよ、代わってあげるよ。幼馴染みの役。 いや、代わってくれたら、私、楽なんだけどなあ、実際のとこ。 アイツ、スゴイウザいよ。ホントに。バカだし、単純だし、無神経だし。 イケメン? そうかなあ?私は、あんまり、そんな風に思わないけど… 確かに、背は高いよね。182㎝、あるんだ。体重はね

          【10回連載小説】タケルとスミカ(4)

          【10回連載小説】タケルとスミカ(3)

          【タケルの2ターン目】 スミカはさあ、もうちょっとちゃんと化粧とかすれば、いい女だと思うんだけどなあ。 惜しいよ、惜しい。いい線、いってるんだけどなあ。なんか、気にしなさすぎなんだよ。 勉強、ばっかりでさあ。遊ぼうともしないんだぜ。 アオハルの無駄遣いだと思うんだよ。もっと、楽しい事、すればいいのにって、いつも思う。 アイツはね、さっきも言ったように、幼稚園の年少の時から知ってるんだよ。 幼稚園ではさあ、モテモテだったんだぜ。同じ組のユウキってヤツと、チューリップ組のサト

          【10回連載小説】タケルとスミカ(3)

          【10回連載小説】タケルとスミカ(2)

          【スミカのターン①】 私さあ、なんかイヤなんだよねえ。腑に落ちないって言うか、納得できないって言うか… 何で、タケルが一緒の大学なんだよって、思っちゃう。 アイツ、勉強、まるでダメだったんだよ。ホントにバカで。 去年の夏から冬まで、ずっとアイツの勉強に付き合わされたんだよ。ホント、いい迷惑。 でもさあ、不思議と通っちゃったんだよねえ。私と同じ大学。しかも、同じ医学部。 アイツ、チャラ男だからイヤなんだよ。 野球部の時はさあ、1年下のマネージャーと付き合ってたとか、付き合っ

          【10回連載小説】タケルとスミカ(2)

          【10回連載小説】タケルとスミカ(1)

          【タケルのターン①】 俺さあ、我ながらよく頑張ったと思うんだよ。 何しろ、数学が赤点だらけだったのにさあ、受験の時には、読みが当たりまくったんだよなあ。 お陰で、難関の国立大学の医学部に晴れて合格! 今年の春から1年生だ。 いや、奇跡だよねえ。 俺、高校3年の夏前までは、野球一筋だったんだ。 ピッチャーでさあ、一応、エースだったんだよ。打つ方はダメだったから、ずっと9番だったけどね。 俺、左利きなんだ。 背も高いから、上から投げ下ろすと、俺のそんなに速くない球でも、振

          【10回連載小説】タケルとスミカ(1)

          マナリです。いつもありがとうございます。前に上げた「通じる」「プールの水は…」「海に風が吹くから」の三作が、実は自分でお気に入りなので、よろしければそれらも読んでいただけると嬉しいです。宜しくお願い致します。

          マナリです。いつもありがとうございます。前に上げた「通じる」「プールの水は…」「海に風が吹くから」の三作が、実は自分でお気に入りなので、よろしければそれらも読んでいただけると嬉しいです。宜しくお願い致します。

          【短編小説】夕涼み

          ■ 父の葬式の2週間後、僕は実家に帰った。 帰ったと言っても、帰省ではない。 会社を辞め、都会の暮らしを引き払ってきた。 新幹線を降りてからが長かった。 地下鉄や私鉄を乗り継ぎ、1時間近くかけて、やっと実家の最寄り駅に着いた。 そして、駅前で1時間に1本のバスを待った。 バスでまた、30分は走った。 バスを降りると、うちまでは歩いて15分だ。 今日の昼頃、引き払った武蔵小山のマンションを出た。 しかし、今はもう夜だ。 如何に夏至の頃と言っても、8時が近くなると、辺りは

          【短編小説】夕涼み

          【短編小説】寄り添う気持ち(後編)

          有料
          100

          【短編小説】寄り添う気持ち(後編)

          【短編小説】寄り添う気持ち(前編)

          ■ 夏の夕暮れ時。上野・アメ横。 サラリーマンが呑みに来始める時間。 居酒屋・総大将では、もう半分以上の席が埋まってきており、なかなかの盛況ぶりだ。 「お姉さん、こっち、こっち。注文、取ってえ!」 ミーコは、別の席に生のジョッキを運んでる時に、別の客席に声を掛けられた。 そっちを向くと、ちょっとビールを零しそうになる。どうしようと思っていたら、後ろから声がした。 「へい、ご注文は?」 ミーコの背中に、テルシさんがいた。テルシさんはいつも、ドンくさいミーコをフォローして

          【短編小説】寄り添う気持ち(前編)

          マナリです。先日は有料記事をたくさんの方々にお読みいただき、ありがとうございました。また、今回も有料記事にチャレンジしてみます。今回も前編は無料、後編を有料とさせていただきます。宜しくお願い致します。

          マナリです。先日は有料記事をたくさんの方々にお読みいただき、ありがとうございました。また、今回も有料記事にチャレンジしてみます。今回も前編は無料、後編を有料とさせていただきます。宜しくお願い致します。

          【短編小説】帰れない 忘れられない帰り道 その後の10年

          ■ 夏休み。 ホントなら、海に行ったり、プールに行ったりして、夏を満喫するところなんだけど、今年は無理だ。 何故なら、僕は大学受験を控える受験生だからだ。 僕は上田亮介、18歳。ホントのとうちゃんは、僕が小さい頃に、仕事中の事故で死んじゃった。 でも今は、僕が小6の時に通ってた塾の斎藤先生が、僕のかあちゃんと結婚して、お父さんになってる。 お父さんなんだけど、僕は斎藤先生と呼ぶ。先生を、まだとうちゃんとは呼べない。 僕は、斎藤先生と、斎藤先生の師匠である沖島洋輔教授の

          【短編小説】帰れない 忘れられない帰り道 その後の10年