マナリ

小説を書いてます。良ければ読んでみてください。

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最近の記事

【創作大賞2024応募作ファンタジー小説部門】カザン #1

【あらすじ】 僕はサカキ。2020年に大学に入ったばかりの1年生だ。 2020年はコロナ禍の真っ最中で、東京には非常事態宣言が出ており、憧れを抱いていたキャンパスライフとはおよそかけ離れた寂しい生活を続けていた。そんなある日、僕にある出来事が起きた。 【本編】 2020年5月■■■ 2020年5月 僕は、どうしようもなく暇だった。 新型コロナウィルスで、東京は緊急事態宣言を受け、事実上の都市封鎖状況だったからだ。 入ったばかりの大学も入学式すら行われず、一度も建物の中に入

    • 【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】見えない月に願いを放つ

      【あらすじ】 僕は一人ぼっちだった。ビローと出会うまでは。 ビローはこげ茶色のうさぎだ。 ビローが僕の元に来てから、僕は何をするのもどこに行く時もいつもビローと一緒だった。 ある日、ビローの姿が見えなくなった。 僕はビローを探した。 【本編】 ビローがいなくなった。僕は絶望した。 生まれた時から、僕はずっと一人だった。 母さんは、お姉ちゃんが大好きで、僕が大嫌いだった。 父さんは、家の事を何も気にしなかった。 僕は、家の中で、透明人間のようだった。 授業参観の時、僕

      • 【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ハッピーエンド

        【あらすじ】 私はいつも大好きなあなたに思いを伝える事が出来ず、苦しんでいた。 この苦しさから解放されたい。 でも、それで全部を失うのは嫌だ。 どうする? 私は意を決する事にした。 【本編】 私はずっと苦しかった。 ずっと苦しんでいた。 あなたに打ち明けたい。 でも… 悩んでいた。 どうやって自分の気持ちを伝えたらいいのか、言葉が見つからない。 見つかったとしても、それを分かってもらえなかったら、どうしよう? そんな事ばかりを考えてしまう。 今日こそ! いや、ダメ

        • 【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】イマカラハジマル

          【あらすじ】 カナコは茨城から上京し、モデルになるべく活動中で、タカシはカナコと地元の高校の同級生で、同じく卒業後上京し、ボクサーを目指している。 【本編】 タカシ、今から渋谷に出て来れない? 今、気がついた。LINE。 夜のトレーニングを済ませて、シャワーを浴びて出てきた。 0:11 遅いだろ。 どうしたカナコ? 電話する。 「タカシィ、今、どこ?」 「家だよ。バイト終えて、トレーニングした後」 「LINE見たでしょう。今、渋谷にいるの。来てくれない?」 「渋谷

        【創作大賞2024応募作ファンタジー小説部門】カザン #1

        • 【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】見えない月に願いを放つ

        • 【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ハッピーエンド

        • 【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】イマカラハジマル

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#6 最終話

          ■■■ 春を感じたのは短かった。 ゴールデンウィークを過ぎると、もう夏の様相で、通勤に上着を着てられない季節がやってきていた。 しかも、今日は朝から気温が高いままで雨が降り続いており、湿気が身体全体に纏わりつくような不快さだった。 もう、帰ろう… 俺は定時より前に、会社を出た。 歯医者の予約があったからだ。 会社から家の最寄り駅まで地下鉄で20分。歯科医は駅ビルの中にあり、これから電車に乗ると、予約時間までには着く計算だ。 土佐堀通りをちょっとだけ歩き、北浜か

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#6 最終話

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#5

          ■■■ また、何て事無く、五年が過ぎた。 僕は、子会社の取締役になっていた。 この会社は、親会社のTV局社員の出張旅行用に立ち上げた旅行代理業や、社員向けの生命保険の取次などを行う会社で、僕は移籍してからずっと、営業畑を歩んだ。 歩んだと言っても、業務の中身はよく分からないので、部下に言われるがままに、取引先へ行き、挨拶したり、夜会食したり、週末にゴルフしたりするのが、僕の仕事だった。 取締役になっても、そこはあまり変わらないのだが、経営陣に加わった事で、親会社の経営会議

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#5

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#4

          それから数年後の冬、神戸を大地震が襲った。 幸い俺の家は無事だった。 アメリカのリュージからメールがあった。 すまんが、俺の実家を見に行ってくれんか? リュージの家は、もうリタイヤした親父さんとお袋さんの二人だった。 下の妹は、二人とも結婚して家を出てたし、末っ子の流四郎は東京の大学に通っていたからだ。 親父さんもお袋さんも携帯電話を持っておらず、固定電話はかからなくなっていたのだ。 俺は、道が割れたりしてガタガタになっているので、車では行けないと思い、家に置きっ

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#4

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#3

          ■■■ なんとなくフワーっとした感じで、三年が過ぎた。 僕は、TV局で営業の仕事をしており、毎日忙しかった。 梅雨明け間近の晴れた暑い日の夕方、僕の携帯が鳴った。リュージからだった。 「おう、久し振りやな。」 「お前、今どこおる?」 「会社や。」 「大阪の?」 「そら、そうや。」 「俺、出張で大阪来てんねん。今晩、空いてるか?」 「忙しいねんけどな。空けるわ。」 「また、また、恩売ろうと思てるやろ?」 「アホか、そんなんちゃうわ。」 俺らは待ち合わせの場所と時間を

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#3

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#2

          ■■■ それから二年が経った春、俺は無事に大阪の大学に合格していて二回生になり、リュージは学校を卒業して、会社に入る事になっていた。 リュージは、本当に理数系のヤツで、頭が良かった。 だから、専門学校卒なのに、大手電機メーカーのSEとして就職が決まり、四月からは鎌倉に住む事になっていた。 「おう、そしたらな、俺も夏休みには東京へ行くからな。」 「東京行って、何すんねん?」 「アホ、お前ん家行って、泊るに決まっとるやろう。」 「俺んとこ?俺、東京ちゃうで。神奈川や。会社も寮も鎌

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#2

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#1

          【あらすじ】 俺とリュージは、高校の野球部で知り合った親友だ。 高校を卒業した後、俺は浪人、リュージは専門学校と別れてしまったのだが、いつも夜は一緒に三宮の街で遊んだ。 そのような付き合い方は、俺が大阪のTV局、リュージは東京のコンピュータ関連の会社に就職してからは全くできなくなってしまったのだが、俺たちの絆は固く、長い年月の中で何回も交錯していった。 交錯と言っても、いい関係だけじゃなかった。悪くなった時もあった。 でも、おれらはずっと親友(ともだち)だった。 【本編】

          【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ずっと親友(ともだち)#1

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #10 最終章

          また三年が過ぎた。僕にユニオンから電話がかかってきた。出ると仕事のオファーだった。 来年は、あの震災から五年になる。それを現地で取材して、本にまとめるプロジェクトがあり、進行しているのだが、一人のライターに病気が見つかり、治療に専念しなければならなくなったため、代わりに行けないか?という内容だった。 取材期間は、一か月で長期出張になる。 僕は悩んだ。いつもなら、そんなに長くは家を空けられないと、即決で断るところだ。 しかし… 僕は、あの女子中学生の事が心に

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #10 最終章

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #9

          ■ あの大地震から2週間が過ぎた。 ユニオンの片岡さんから連絡をもらい、「ある通信社の記者の交代要員として、岩手に行ってくれないか?」と言われた。僕は、悩んだ。そんな過酷な現場で取材活動をした事がないし、そもそも僕は生粋のジャーナリストではなく、ライターだからだ。 どうしよう… 行きたくないの? いや、行ってみたい気はあるんだ。現地で何か役に立ちたい… じゃあ、行ってみれば… あなたは、大丈夫。きっと何とかなるから… 僕は行く事にした。 僕は、大船

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #9

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #8

          事務所開き当日は、嬉しくて朝7時に事務所に着いた。 PCを立ち上げると、お祝いのメールがどっさり届いていた。 午前中は、たくさん花が届き、それの受け取りで大変だった。 みんな手狭なオフィスと知ってるからだろう。大きな胡蝶蘭の鉢や花輪などはなく、家に持って帰れるような鉢花や花束だった。それにしても少し多すぎるので、週末は車で来て、全部運ばないといけないかもしれない。 お祝いのメールや、花のお礼のために返信をしていると、とうに昼時を過ぎてしまった。。 もうじき3時になる。腹が

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #8

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #7

          片岡さんは「子供向け」と言ったが、子供ではなかった。 死にたくなる中学生や高校生を救うためのサイトだった。 このサイトは、ある慈善団体が寄付をもとに細々と運営しているものだった。 当然、ギャラは安い。しかし、やる価値のある仕事だと思った。 しかし、どうすれば良いのか、何を書けば良いのか、皆目見当がつかなかった。 そこで僕は、宗教家、学校の先生、大学教授、塾やスイミングスクールの経営者たち、心理学者、占師など、会える人に片っ端から取材してまわった。 サイトのページは、月1回更新

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #7

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #6

          ■ 結婚式の後、涼子は僕に「会社を辞めたい」と言ってきた。 「息子が生まれてきたら、赤ん坊のうちは、一日中側にいて愛情を尽くし、少なくとも中学を卒業するまでは、息子の帰りをいつも家で待っている母親でいたい。」そう言った。 僕は「分かった。」と、答えた。 9月に息子は生まれてきた。 涼子は、決めていた「舜」と名付けたいと、僕に言った。 「舜」いい名前だ。僕は同意した。 それから間もなくして、昔いた広告制作会社で一緒だった武藤に電話した。 彼は今、自分のプロダクションを立

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #6

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #5

          ■ 僕らが一緒に住んで、二年が経った。 涼子の悩みは、深くなっていた。 涼子は「子供が欲しい」と、僕に言った。 僕も子供は大好きだから、「彼女の思いに応える」と言った。 二人でできる努力は全部やっているのだが、残念ながら兆しは見えなかった。 彼女は、子供の頃に両親が離婚し、とても悲しい幼少期を過ごしたそうだ。 だから、自分はできるだけ早く、愛する人に巡り合い、その人の子を授かりたい。そして、その子を大切に、幸せに、育てたいと、思っていたそうだ。 だが、上手くは

          【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】 最愛 #5