【創作大賞2024応募作オールカテゴリ部門】ハッピーエンド

【あらすじ】
私はいつも大好きなあなたに思いを伝える事が出来ず、苦しんでいた。
この苦しさから解放されたい。
でも、それで全部を失うのは嫌だ。
どうする？
私は意を決する事にした。

【本編】

私はずっと苦しかった。
ずっと苦しんでいた。

あなたに打ち明けたい。　でも…

悩んでいた。

どうやって自分の気持ちを伝えたらいいのか、言葉が見つからない。
見つかったとしても、それを分かってもらえなかったら、どうしよう？
そんな事ばかりを考えてしまう。

今日こそ！
いや、ダメ。ムリだわ。

勇気がない？そう。
思いが足りない？それは違う。思いは溢れている。
溢れすぎて、泣き出しそうなぐらい。

頑張ってみて！心が言う。
頑張ろう！と、一瞬思う。

でも…
どうしても次の行動に移れない。

スマホがあるのに。
メッセージを入れるだけでいいのに。

ダメ元だよ。
それはダメよ。アウトだったら、私に次はない。
そうなの？そうだよ、絶対にそう。彼じゃなくてはダメなの。

じゃあ気合を入れて、頑張ってみなよ。
頑張る気はあるの。でも、どうしても指が動かない。声が出なくなる。

じゃあこのままでいいの？
そうかなあ？そうかも？いや、違う。それじゃダメよ。

ずっと考えた。
何日も寝ずに考えた。
いや、考えたんじゃない。ずっとあなたの事を思ったんだ。

そして

SNSを開いた。
あなたへのメッセージを打ち始めた。
ムズイ。何を書けばいいのだろう？何を言いたいのかが分からないんだ。

指は何度も止まる。
書いた文章は、何度もデリートする。

どうしよう？

迷う。私の気持ちを伝える一番いい言葉が見つからないんだ。
カッコつけちゃう。いい子ぶる。それは、自分の言葉じゃない。
シンプルに。分かってるよそんな事。でも、ダメ。
私のあなたへの思いはとてもじゃないけど、シンプルには伝えられない。
じゃあどうする？それが分かったら、とっくにメッセージを送ってるわ。
悩む。言葉を絞り出そうと悩む。
苦しい。やっぱり苦しいんだ。もう、やめようか？

メッセージが入った。
あなたから

ずっと、迷ってたんだが、勇気を出して言うよ。
俺と付き合ってくれないか？

何、これ？

スマホを持つ手は震えだした。
涙が止まらない。
過呼吸で、息が苦しい。
顔は、涙と、鼻水と、涎で、ぐちゃぐちゃだ。

落ち着け！そんなのムリよ。落ち着けるわけがない。

どうしよう？

電話が鳴った。あなたからだった。
取った。あなたの声が聞こえた。

メッセージ、見てくれた？

見たよ。ありがとう。嬉しい。

そう言うのが、精一杯だった。

あなたは一言、「よかった」と言った。
そして、明日会う事を約束して電話を切った。

今までの、堰き止めていた思い、重圧、空気が無くなってしまってるような感じから解き放たれた。やっと、息ができる。全身が緩んだ。

ホッとした。

窓から、気持ちのいい風が吹いてきた。
風なんて、今まで感じる事ができなかった。
でも、今は顔に当たるひんやりとした風が、本当に気持ちいい。

ハッピーエンドとは、こういう事だ。

了