旅のなかの旅
なんだろう、自分に罰を与えるような気持ちでいた。楽しんではいけないような気がして、ストイックに過ごしていた。活動量は多いのだけれど、それは単に義務を果たしているだけの日々。ただひたすらに。
時には、自然に心の赴くままにしたいことをしてごらんなさい。ささやかなことでよい、お金をかけなくても。せねばならないことをするのではなくて。したいと思うこと、自分が好きなことを、自分のために。そうしないと、倒れてしまう。あなたの心は、思っている以上に弱っているのだから。
そのように、アドバイスをいただいた。けれども、したいことがわからなくなっていた。
早朝、回復しつつあるウンベラータの様子を見る。新芽が増えているのを見つける。猛る日中の陽射しに備えて水を遣り、霧を満遍なく吹く。しばらく植物のそばで過ごす。まだ涼しい朝の風を感じる。有らん限りの力を振り絞る蝉たちの羽の震え、すなわち蝉時雨のなか街が目を覚まし、少しずつ動き出す音を感じる。
それでもなんとか、夏の予定を組んでみた。なんとなくでもフライトを予約してしまえば、ホテルも予約することになる。あるいは離れた土地にいる、いつか会うつもりだった人たちに会いに行く。気がついてみたら、忙しい夏になってしまいそうだ。
本当にしたいことなのかわからないけれども、いくつかの旅を重ねてみようと思う。
それは人生という旅をさまよう私の、旅のなかの旅。夢のなかの夢。
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