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神戸の森とまちがつながるフォラーム開催①基調講演・話題提供編

森林に関わるみなさんと、都市における森林循環の創出を考えていくためのフォーラムを開催いたしました。
当日は、一般参加者92名、登壇者6名、林野庁関係者1名、神戸市関係者7名、事務局7名の計116名の方にご参加いただきました。
当日の様子をご紹介します。まず、基調講演から話題提供までの様子をご紹介します。


神戸市 久元 喜造市長挨拶

神戸の魅力は海があり森林があることである。六甲山はもともとはげ山だったが、防災、水源確保のために植林をし、緑豊かな山となりました。
一方で、神戸は林業が存在しない。その中で神戸の山をどう守り、恵みをどのように使っていくかが課題です。
SDGsへの関心が高まる中、森林の価値はこれから上がっていくのではないか。山林所有者、製材業者、建築業者、木材加工者、デザイナーに参加し、神戸の山の木材がマーケットに出ていくことを期待します。
また、例えばチップ舗装など大都会のヒートアイランド現象の解決にもまちの木質化が役立つのではないかと考えています。

神戸市 久元 喜造市長

基調講演

SDGsと森林・木材〜持続可能なサプライチェーン〜(林野庁長崎屋森林整備部長)

林野庁長崎屋森林整備部長

我が国の森林と木材の現況として、国土の3分の2を占める森林が成熟し、蓄積量が増加しつづけていること、人工林の半分が50年生を超えて利用期を迎えていること、国産材の供給量・自給率は2002年に最低となったのち現在は増加していること説明いただきました。
また、森林はCO2を吸収し、木材は炭素を長期に貯蔵するということから、森林を育成し木を使うことがカーボンニュートラルに貢献するという意識も高まってきており、「カーボンニュートラル・地域温暖化への貢献」として、「伐って、使って、植えて、育てる」のサイクルを実現するために進められている施策についてご紹介いただきました。

森林吸収源対策の推進によるカーボンニュートラルへの貢献

建築分野では、木材で高層ビルを建築する取り組みが進んできており、建築物の木質化を推進する協定が結ばれた事例などもあります。一方で、木材を利用した後の山林では、再造林が進められていません。再造林が進まない要因として、林業においてコスト負担の大きい再造林期と収入が得られる収穫時期との時間的ギャップの問題が指摘されました。
問題解決に向けた具体の取り組みとして、新技術の活用による低コスト化と併せて、森林の経営管理の集積・集約化、「伐って、使って、植えて、育てる」という流れの中でのサプライチェーンの連携、ICTを活用した効率的な木材流通とトレーサビリティ確保についても説明がありました。この取り組みとしてご紹介いただいた事例は、木材流通の各段階の情報をQRコードで管理し、どこの山からいつ伐られ、どこで製材されたかなどの情報が川下まで届き、安心した部材として知ることができるというものです。
神戸の森林の多くは広葉樹林ですが、広葉樹を地域資源として再認識し利活用する事例として、岐阜県飛騨市の株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)や宮城県登米市森林管理協議会の事例、また、SDGsと森林・木材~様々な取組事例として、Jクレジットの活用、企業が支援する森林整備、森林を活用した健康保養活動など、国内の様々な連携活動を紹介いただきました。

SDGsをキーワードとしたサプライチェーンの連携

話題提供

都市近郊林における森林所有と資源管理について(同志社大学三俣教授)

兵庫県立大学在職時代からの六甲山でのフィールドワークなどの経験を踏まえ、現代日本の森林に関する課題としての①過少利用問題と②放置と無関心のスパイラルについて話題提供していただきました。

  • なぜ森林が利用されないのか?森林の持っている価値が低く見積もられているのか。これには「薪炭などの自給利用の価値、木材などの商品利用的な価値の低下」、「管理費用(維持作業の義務)の増大」から、得られる恵みに対し管理費の方が高くなってしまっており、結果として森林の放置傾向が進んでいる。

  • 過少利用問題については、「自然が多くていいじゃないか!」と言われる事もあるが、森林土壌の弱体化による災害、病虫害発生、不法投棄の恩賞、景観の悪化、種の多様性の減少、獣害などという問題が発生している。

  • 放置と無関心の負のスパイラルについては、多くの若年層での自然体験の低下に表れている。このような事は工業先進国全体で見られる問題として上がっており、自然体験はお金で買う時代になってきている。体験ビジネスが広がればGDPが上がっていい側面はあるが、負担が大きくなってしまう。いいことばかりではない。

  • 森林が持っているサービスとは?自然の生態系サービス については、以下の図のように説明できる。

森林における生態系サービスの例

旧入会林野を含む私有林を多く有する神戸市にあって、森林所有者、地縁共同体とその外部の人や組織とを、どのように結んでいくかが重要 (新しいコモンズ)になる。内部と外部の両者を橋渡しする人「補助人」や組織の果たす役割を考えていきたい。
一般化できることもあるが、各地で異なる山の条件、地域の条件を踏まえ、多様な最適解を探る実践ベースもまた同様に重要であり、協働と知見の地道な積み上げが必要、とご提案いただきました。

同志社大学三俣教授

都市部における広葉樹、木材活用の可能性(神戸芸術工科大学曽和准教授)

六甲山材の加工・活用や教育の現場でのご経験から話題提供いただきました。

神戸芸術工科大学曽和准教授
  • 大学では、神戸市総合児童センターと連携したデザイン初等教育から、近隣の高校とのデザイン教育連携などを行っており、都市に住む人や若者がどのように考えているかといった調査研究や実証研究も行っている。

  • 木工デザインの学科に入った学生でも、製作のための木はホームセンターで購入するものと認識しており、木・自然素材について知っている学生は非常に少ない。

  • 木工教室に参加している子供の20代の親御さんも木に触れたことがない人が多い。

  • 神戸市北区のあいな里山公園の未開園区域では、買収以降に手が入らなくなって里山の環境が崩壊しているが、このような変化は市内の至るところで起こっており、主に住宅に近い個所で調査を行っている。

  • そこで、あいな里山公園、キーナの森、大沢町、櫨谷町などとの共同による地域デザイン(地域で育んでいくもの)を進めており、環境教育の中で形に残るモノとして教育ができないか実証を進めている。

  • また、こべっこランド、キーナの森、西区役所おやこふらっとひろばなどに活用して、自分の住んでいる地域の木材を使用しながらリアリティを伝えようとしている。今までは使われることの少なかった木の活用方法や、新しい製品の製作により、目に見えるかたちで木材の活用の可能性を見せる取り組みとして、「小さい焚き火」の研究や、都市近郊型森林における整備発生木の木材活用など目に見える形で見せていくようにしている。

今後、SNSでの発信や研究活動、ワークショップなどにより裾野を広げていくことの課題も示していただきました。

神戸市の森林の現状と取組(神戸市建設局防災課大西課長)

神戸市からは、パネルディスカッションに向けた前情報も兼ねて話題提供いただきました。

神戸市建設局防災課大西課長
  • 神戸市内の森林は広葉樹林がほとんどで、約6割以上が私有林である。森林組合、木材市場は無く、林業的基盤はない。そのため私有林の管理が不足し、市産材もほとんど使われていない。

  • 森林を整備し発生する木材を利用するためには、森林所有者、森林整備事業者、木材流通事業者などの幅広い関係者が繋がり、それぞれの取組みを連動させていく必要がある。そこで神戸市は、森林整備から木材活用までの総合的なマネジメントを行う組織「こうべ森と木のプラットフォーム」を2023年7月に設立した。

  • 神戸市では、今後プラットフォームが中心となり、関係者間のネットワークの構築や森林所有者の支援、情報発信の強化など、様々な取組みを進めていきたいと考えている。

パネルディスカッション

後半の、パネルディスカッションの様子はこちらをどうぞ

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