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神戸の森とまちがつながるフォラーム開催②パネルディスカッション編

森林に関わるみなさんと、都市における森林循環の創出を考えていくためのフォーラムを開催いたしました。
当日は、一般参加者92名、登壇者6名、林野庁関係者1名、神戸市関係者7名、事務局7名の計116名の方にご参加いただきました。
ここでは、パネルディスカッションの様子をご紹介いたします。

基調講演・話題提供

前半の基調講演・話題提供編はこちらをどうぞ


パネルディスカッション:森とまちをつなぐ。森林を地域で活かす。

パネルディスカッションでは、ひょうご持続可能地域づくり機構(HsO)代表理事の畑中直樹氏がコーディネーターとなり、基調講演、話題提供いただいた4人に加えて、神戸で木材業を営む服部真俊氏、同じく森とまちをつなぐ活動をしている木材コーディネーターの山崎正夫氏の計6人の方から、それぞれの取組みやご意見などを伺いました。
最初に、コーディネーターから、「サスティナビリティの考え方」「森とまちがつながる」というテーマでディスカッションをしたいと考えている提言があり、パネルディスカッションから参加されたお二人に課題として感じていることについてご発言いただきました。
(パネラー)
曽和具之氏(神戸芸術工科大学芸術工学部准教授)
長﨑屋圭太氏(林野庁森林整備部長)
服部真俊氏((株)三栄取締役)
三俣学氏(同志社大学経済学部教授)
山崎正夫氏(SHAREWOODS代表)
(コーディネーター)
畑中直樹氏(ひょうご持続可能地域づくり機構(HsO)代表理事)

山崎さん
山に人が入らなくなっている。神戸は山と人が近い地域ではあるので、山にとりあえず来てもらうことが第一歩である。いきなり木材利用などはハードルが高いので、レクリエーション、登山などから始めるなど、神戸らしい山の関わり方のアイデアが出るのではないかと思う。

山崎正夫氏(SHAREWOODS代表)

服部さん
一般の方は木、木材、自然に対して関心が低い。山の木のことをイメージしにくい。神戸には身近な六甲山があり、街路樹も多くある。神戸市が熱心に取り組んできて、フォーラムなども開催されているが、それを関心のない方にどのように広げていくか、伝えていくかが課題である。利用だけでなく、意識の普及が進んで行けばいいと感じている。

服部真俊氏((株)三栄取締役)

テーマ1:森林を地域で活かすために、今、現場で課題として感じていることは?
 

曽和さん
木に関する現状は怖いと思う。木という素材の特徴が伝わっていないし、木材が製品になるまでの過程はまったく見えていない。一般家庭に地域産材を普及させていくにはハードルが非常に高い。
三俣さん
課題だらけと感じている。森について。教育的に関わるだけで一苦労。例えば、ゼミ生を森に連れていくことが危険と言われてしまう事がある。森との関わりとして、学校林に着目してはどうか。全国で約3000校が学校林を保有している。(公益社団法人国土緑化推進機構による2016(平成28年度)年度学校林調査によると、学校林は、全国に2492校) 神戸市では5校(うち1校は中学校)に学校林がある。地元の森を地元の児童が使えないかと考えている。
長﨑屋さん
民間企業で関わろうとしている方が増えていると感じる。何かできることはないかという問い合わせが多い。一方で、困った財産3種として「空き家、お墓、山林」と言われることがあり、山林が負の財産という意識がある。これらのギャップがなければ、もっとプレイヤーの方が動きやすくなるのではないかと考える。
畑中コーディネーター
神戸にはたくさんの企業があるので、森に関わる企業が増えてくるといいのではないか。顔の見える関係性をつくり、小さなコミュニティで情報を交換していくとよいのではないか。
神戸市
神戸市の森の特徴を踏まえた取り組みが必要。人工林を守ってこられた方にもいい形のことができないか。いろいろなシチュエーションにフィットした内容をしていけるかが重要で、人工林、広葉樹の活用について一律の取り組みはできない。ある時は行政にこうしてほしいと要望をあげたり、民間同志の情報を共有したり、児童への木育であったり幅広いやりとりができる場となることをプラットフォームに期待する。そしてお金の回る仕組みを考えていかなければならない。森にもっといろいろな人に入ってきてもらえるようにしたい。
畑中コーディネーター
プラットフォームにはいろいろな期待がされている。日本は、いいものをより安くという考え方で成長してきたが、それが本当にいいのか?ヨーロッパの事例のように標準的な取引価格の設定が必要なのではということも考えていく必要がある。

パネルディスカッションの様子①

テーマ2:森林を地域で活かすために、描く未来。プラットフォームへの期待など

長﨑屋さん
森林と木材を考える上で大切なことが3つある。ひとつは、森林は地域資源であること、木材は重いため流通距離が近い。次に、育成に50年、100年かかり、一人の所有者が管理することは難しく、多くの人が関わる必要がある。そして、3点目は農産物と違って収穫時期が明確ではないことである。
神戸には身近に森があり、都市がある。関心がある企業もある。そういう意味でも地域の森林を活かすモデルになるのではないかと期待している。
三俣さん
日本の土地の私有権は厳しいが、北欧諸国やイギリスなどでは自然環境を享受するために誰でも他人の土地に入ってよいという自然アクセス権がある。市民が自然の中で楽しむことには大きな意味があると考える。また、行政には、補助金によるサポートだけではなく、外部からの支援、いわば補助人によるサポートへの転換が求められる。
畑中コーディネーター
私有権を解きほぐすというのは大事なことかもしれない。子供であれば漁業権の規制が緩和されている地域があるように、森林でも、同じように子供だけでも自由に触れることができるとよいのではないかと思う。
山崎さん
森林が地域資源であるという認識が大切だと考える。自分が所有している森ではないが、自分の地域の森であるという認識をするといい。地域の資源が搾取されてはいけないので、地域の資源を地域が価値をつけてマーケットに出していくのが大切だと思う。収穫時期の話に関係するが、六甲山の森を整備する側と建築側と時間軸のギャップの問題がある。この時間軸などのギャップを調整するのがプラットフォームの業務として大事であり、求められることである。
服部さん
神戸の森をどう活用すれば幸せになれるのか。みんなで幸せになりたいということにつきる。お金は大切だが、お金以上の価値も重要になっている。木育という言葉は最近使われなくなりSDGsにとって変わっているが、敢えて木育という言葉を伝えたい。木育とは、木を通じて人と自然の関わりを考えていくことと思っている。製材所の活動はすべて木育活動である。子供だけが対象ではなく、生涯教育としてきっかけを作っていくことが大切である。山に対する関心を深めていく。できるだけ身近な木を使っていくような社会になるとよいと思う。
曽和さん
地域資源として、木だけでなく畑、竹林、茅場などもある。木を守る前に、竹をなんとかしないといけないということもある。かつては生活の中に山の使い方が伝承されていた。それが途切れてしまった今は、知らない人に教える段階である。木育とは育むという考え方であり、みんなで作ってくためにどうすればいいかということ。学ぶということは自分で考えることである。憧れからくる感情である。次のステップとして、憧れを持てる人たちがいて、真似をしたくなるような人になればいいと思う。憧れと学ぶ力をプラットフォーム発信でできればいい。

パネルディスカッションの様子②

パネルディスカッションまとめ(畑中コーディネーター)

地域資源を文化としていく例として、例えばオランダでは茅葺のニュータウンができていたりもしている。多様な関わりを創造していくことが重要である。
神戸は森が近く、人も多いので、ポテンシャルが高いが、川上と川下が分断されてしまっている。地域資源の流通、子供に限らない木育、補助金ではなく補助人としての人員の確保などが大切である。
このような内容をプラットフォームが調整役として進めていければよいのではないか。多様、多層、重層的な取り組みが活性化すればよいと思う。

畑中直樹氏(ひょうご持続可能地域づくり機構(HsO)代表理事)
当日はたくさんの方にお越しいただきました。
会場では、神戸市内の各種取り組みをパネルでご紹介。

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