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テツガクの小部屋22 プラトン⑥

・デミウルゴス
イデアは永遠であり、生成することも消滅することもない。それゆえ宇宙生成においても、イデアそのものは創造されない。世界は工匠(デミウルゴス)が永遠の範型であるイデアを見ながら、それに似せて造ったものであるという。したがって我々の住むこの世界は範型であるイデアの似像である。プラトンの宇宙形成の神はこのように工匠であるにすぎず、一切を無から創造する創造神ではないのである。(『ティマイオス』参照。)

・後期思想
『パルメニデス』においてプラトンはイデア論を再検討し、その難点を抽出した。まず最初に、イデアを認める領域に関して吟味を加えている。パルメニデスの問いに対し、ソクラテスは類似、一、多、正義、美、善についてはイデアを躊躇なく認めているが、人間、火、水に対しては狐疑を示し、毛髪、泥、汚物に対してはイデアを想定することを拒否しているのである。これは、類関係が認められるところには必ず一つの形相が認められねばならないとされた前期のイデア論思想に対する根本的な疑念を意味する。

またイデアと個物の関係についても難問が指摘される。個物がイデアを分有するとする場合、個物はイデアの全体を分有するのか、部分を分有するのか。また、イデアと個物の間にも類関係が生まれるがゆえに、それらの間にもう一つ別のイデアが想定されねばならないのではないか。仮にイデアを観念的なものとする場合、それを分有する個物もまた観念的なものとなるか。イデアを範型とし、個物がそれを模倣するとしても、両者を似たものとする第三のものが想定されねばならないことになり、かくして無数のイデアが想定されねばならなくなる。しかし最大の難問というべきは、イデア論は不可避的に我々を不可知論に導くということである。

これらの議論はやがてその多くがアリストテレスに取り入れられ「イデア論批判二十三個条」として展開されることになる。アリストテレスはプラトンのイデア論を批判することによって自らの形相論を樹立するのである。

参考文献『西洋哲学史―理性の運命と可能性―』岡崎文明ほか 昭和堂

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↓(不定期)

イデア論の難点が登場。どれもこれも、もっともな指摘であり、かつ、難問である。アリストテレスは、イデア論批判から始まるといってもいいだろう。そしてそのアリストテレス批判が続き、新たな説が樹立する。といった具合で、西洋哲学史は連綿と続いてゆくのである。これ以降、西洋哲学史は、ひとつ前の哲学者の批判と、それを一応克服した形の説の樹立、という流れをひたすら繰り返す。よって、西洋哲学史の流れの源は、まさにここ、プラトンのイデア論にあるといってもよいかもしれない。次回からはアリストテレスとなる。

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