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日本最北の書店で買う「日本最北限」の地を讃える歌集

前回の記事で書いた、稚内での散策中、本屋を見つけた。最北の本屋かもしれない、そう思いつつ入店した。お客さんらしき人は店員の知り合いの方なのだろうか、世間話に花が咲いている。買う雰囲気はない。まったりした感じのお店だ。

店内を巡っていると、思っている以上に多くの本が売られている。地元を題材にした本も多い。しかし、タイトルを見ると、「廃線」のようなノスタルジックな言葉が目に付く。申し訳ないが、稚内の市街地・商店街のわびしさを見てしまった後にこの手の本は読みたくない。その中、ふと目に留まった本があり、それを買ってみた。

日本「最北限」の島、礼文島在住の写真家・エッセイストによる歌集だ。購入し、稚内から旭川へ戻る列車内で読み進めた。短歌と対になる礼文の日常や風景を切り取った美しい写真、それらが1つの物語を奏でる。厳しい冬を乗り越え、新たに芽吹く命があり、それらが作り出す自然の絶景が歌や写真から垣間見える。早速、行ってみたいという気持ちにさえさせられる。

都会での生活は物質的、金銭的には豊かかもしれない。何か必要なものがあれば、近くの店で簡単に手に入る。その反面、都会の環境は精神的に貧相になりがちだ。礼文での営みは明らかに都会のそれとは違う。都会にある「物質的な幸福」とは違う「自然とともに生きる幸福」そんな姿が見えてくる。

今回の旅では礼文・利尻をはじめとする島々に行く時間は取れなかった。いつかはこういった島々に行ってみたい。そして、できることなら、1泊2泊といった短期間ではなく、最低でも数か月間滞在し、その自然に溶け込んでみたい。他の自然豊かな地域も同様だが、その土地の自然を知ろうとするには長い時間が必要なのだろう。自然の一端を知る、仮にそれだけだとしでも。

いずれにしても、また行こう、道北に。そして、今回とは異なった一面を見よう。その思いをさらに強くさせてくれる本であった。


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